以前記したが、世田谷区の千歳烏山にある図書館で、母校野球部の貴重な資料集を借りた。
借りた本は当然返すが、返却時にまた別の書籍を借りてしまい、数日後にまた返して借りて…と、
気付けば千歳烏山との往復を繰り返していた。京王線の特急(旧:準特急)が停車するので、アクセスは良好。
とはいえ、世田谷区の税金で購入した図書を、立川市民がタダで読むのは申しわけないので、
帰りは必ず、千歳烏山で飲食や買い物をし、微々たる額ではあるが、世田谷区にお金を落とすことにしている。
私がもっとも気に入ったのが、『中華そば 榮じ(えいじ)』。お店の場所は、最初に利用した『世田谷餃子』のすぐ隣であった。
※栄の字は旧字の「榮」
こちらは、店内や外壁に貼ってある、現在のメニュー一覧と、商品についての解説。
国内産の小麦粉だけの 自家製めんと 無化調 天然素材だけのスープです
化学調味料を使わず、天然の素材で麺とスープを作っている、お店の心意気は素晴らしい。
しかも驚くことに、基本の「中華そば」600円など、どの商品も安価なのである。
厳選食材を強調するラーメン店はいくつか知っているが、その大半が、
たいしてウマくなく(味が薄く)、そのくせ値段は高く、さらに店主のプライドも妙に高い、
イヤな店が多い気がするのだが、榮じさんは、それらとは一線を画す良店なのである。
そもそも今の時代、日高屋などの廉価チェーンを除けば、600円で食べられるラーメン自体が少ないよね。
ましてや東京23区内、しかも駅前という好立地で、この低価格は驚きだよ。
立川市には『鏡花』という、やはり厳選素材を謳う店があるが、一番安いラーメンが1100円である。
鏡花(きょうか)という屋号には、強気な価格の「強価」、あるいは「狂価」という意味を含んでいるのか。
※追記 22年6月には、1200円~とさらに値上げ
※追記その2 さらに23年2月くらいに、1250円~に上げた模様
さて、狂った店(←言い過ぎ)のことは忘れて、榮じさんのラーメンを紹介していこう。
店内はカウンター席のみ。小料理屋さんのような、落ち着きのある内装である。
私の訪問時は、夕方の時間帯ばかりで、厨房にいるのは、頑固職人風の店主だけ。
ただし、店主は見た目に反し、口調は常に穏やかで、エラそうな振る舞いなどは微塵も見せない、好人物であった。
こちらは、ワンタンメンが有名な浜田山の名店『たんたん亭』の孫弟子にあたるそうなので、
私も初訪問時は、「わんたんめん」700円を注文。数分後、麗しいビジュアルの商品が登場。
まずはスープ…と丼に顔を近づけると、魚出汁の生臭さは一切なく、芳香だけが鼻腔をくすぐる。
「これは熊本県天草市牛深産の節と煮干しだな…」と心の中でつぶやく。味オンチの私が、産地に気付いた理由は、
“牛深産 節・煮干し”と記され、くまモンも描かれた段ボールが、店内に積んであったから(笑)。
産地はさておき、スープは無化調ながら、香りだけでなく味もよかったのは間違いない。
自家製の麺は、細いけれどしっかり腰があり、のど越しなめらか。魚介系醤油スープとの相性も抜群。
ワンタンは、やや小さめが3個。中にはもちろん、ひき肉がちゃんと入っている。
本家たんたん亭とは、風味も大きさも異なるが、通常の「中華そば」+100円という価格は嬉しい(たんたん亭は+300円)。
ワンタン以外の具材は、大きめチャーシュー、ノリ、刻んだネギに赤玉ネギと少数精鋭。
チャーシューは甘味がなく、肉と醤油の旨味をダイレクトに感じるタイプ。
スープは熱々で最後まで冷めず、私の食欲も最後まで持続したままで、スープも残さず食べ切った。
角煮などたっぷりの肉や、背脂、ニンニクなどは入らず、大盛でも太麺でもなく、こってり濃厚豚骨スープでもない、
私好みのジャンクなタイプとは対照的なラーメンなのだが、満足度は相当高かった。
商品自体の素晴らしさもさることながら、こういう正統派のラーメンを美味しいと感じる自分にも驚いた(笑)。
もう一杯、別のラーメンも試したかったが、なんだか恥ずかしくて、結局断念。
ラーメンの替玉を何度も頼んだり(人生最高は6玉)、ラーメンを食べたあとにカツ丼を注文したりするのは平気なのに、
ラーメン自体のお替わりは、異様に恥ずかしいのはなぜだろう。
BGMがない静かな店内環境と、一緒に食事している、地元世田谷区民と思われる上品そうな客層のせいか。
腹具合はともかく、心はじゅうぶん満たされたので、この日はおとなしく退散。
2度目の訪問では、中華そばと同額ながら、煮干しや油の量を増した「コク旨中華そば」600円に「たまご」100円を追加。
数分後、コク旨中華そばがやってきた。前回のわんたんめんより油膜が多い。
初回に撮影を忘れた、横アングルがこちら。底が深い丼で、一見少なそうに見えるが、実際はそうでもない。
まずはスープをひと口飲んでみたところ、油分が多いのか、前回よりさらに熱々。お陰で舌をヤケドした。
なので、中華そばとの違いはさほどわからず。ちょっと煮干し感が強く、好みが分かれそうかな。
そういえば味玉は…と思い店主にたずねたところ、どうやら忘れていた模様(笑)。あとから別皿でやってきた。
味玉はくっきりとした味付けで美味しかった。黄身ちゃんの柔らかさもちょうどよかったし。
もはや図書館よりも、榮じ訪問がメインになってきた3度目は、「貝出汁そば」800円をオーダー。
出汁だけでなく、貝そのものも具材としてラーメンに入っている。あと今回も、これまでと異なる器でやってきた。
いつもの和風魚介スープに、貝の旨味も加わっており、今まで食べた3種の中では一番ウマく感じた。
すぐに麺を食べ切ってしまったため、「かえ玉」100円を初注文。この手のラーメンで、替玉があるのは珍しい。
数分後、替玉が追加用のタレと同時に提供された。麺が意外と多いのに驚く。
一般的な九州ラーメンの替玉は、茹でる前で100グラム程度だが、ここは130グラム以上はありそう。丼のせいか、多く感じなかった。
しかも、すでにスープを結構飲んでしまい、麺自体もスープを吸うため、途中で汁っ気がなくなった。
最後の方は油そば状態の麺に、追加用ダレをかけながら食べた。
替玉よりは、最初から麺が多くてスープともなじむ、「大もり」100円の方がオススメかも。
無論、健啖家かつ大胆不敵な方には、ラーメン自体のお替わりを推奨する。
今月22日、東京でもようやく「まん防」が解除され、飲食店の営業時間も延長。
ネット情報によると、以前の榮じさんは、15時から18時まで中休みだった模様。
HPはなく、SNSもやってなさそうなので、やむを得ず電話で直接営業時間をたずねたところ、
まん防期間と同様、「11時半から中休みなしで19時くらいまで」とのこと。
ならば、と昨日の夕方、返却図書とともに、4度目の訪問を果たした。
注文したのは未食の「つけめん」800円に、メニューに記載はないが「わんたん」100円をプラス。
相変わらず店内は静かで、聞こえてくるのは麺茹で釜の中で、湯が煮える音のみ。
しばらくすると、これまた豪勢な器で、ワンタン入りのつけダレと、冷水で締めた麺がやってきた。
通常よりやや太い、つけめん専用の麺だけを食べてみたら、これぞ国産小麦の風味(←わからねえくせに)。
具材は、ノリがない以外は、初回のわんたんめんと同じ。つけダレは、魚介の風味より酸味を強く感じた。
酸味のあるタレは、ワンタンとは好相性。途中で卓上のミル胡椒を振りかけた。
冷たい麺で温かいタレが冷めないよう、ほぼハシを止めることなく一気に食べ切った。
※麺の下には水切り用の金具ザルがあった
この日は珍しく、私以外に客がいなかったので、店主榮じさんと「昨夜は電話してすみません…」などと、少しだけ会話。
昔は酒類や焼餃子も提供していたこと、21時までの営業だったが、時間内に入店すれば対応していたこと、
さらに安すぎる価格について、「他店のことは知らないけれど…」と前置きしつつ、
「小麦粉だけでなく、いろいろ値上がりして苦しいけど、もう少し(現状の価格で)頑張ってみる」と語ってくれた。
誠実そのものといった印象の榮じ店主。その姿勢が調理作業や商品価格、そして味にも込められている。
彼のためにも、小麦粉など各種食材の高騰が早く収まることを、願ってやまない。
こういうラーメン店が駅のすぐそばにある、千歳烏山はいい街だよ。
中華そば 榮じ
東京都世田谷区南烏山5-17-11
京王線千歳烏山駅西口改札より徒歩約30秒
営業時間 現在は11時半~20時だが、19時頃には閉店
定休日 日、月
※残念ながら、22年8月頃? に閉店なさったようです
借りた本は当然返すが、返却時にまた別の書籍を借りてしまい、数日後にまた返して借りて…と、
気付けば千歳烏山との往復を繰り返していた。京王線の特急(旧:準特急)が停車するので、アクセスは良好。
とはいえ、世田谷区の税金で購入した図書を、立川市民がタダで読むのは申しわけないので、
帰りは必ず、千歳烏山で飲食や買い物をし、微々たる額ではあるが、世田谷区にお金を落とすことにしている。
私がもっとも気に入ったのが、『中華そば 榮じ(えいじ)』。お店の場所は、最初に利用した『世田谷餃子』のすぐ隣であった。
※栄の字は旧字の「榮」
こちらは、店内や外壁に貼ってある、現在のメニュー一覧と、商品についての解説。
国内産の小麦粉だけの 自家製めんと 無化調 天然素材だけのスープです
化学調味料を使わず、天然の素材で麺とスープを作っている、お店の心意気は素晴らしい。
しかも驚くことに、基本の「中華そば」600円など、どの商品も安価なのである。
厳選食材を強調するラーメン店はいくつか知っているが、その大半が、
たいしてウマくなく(味が薄く)、そのくせ値段は高く、さらに店主のプライドも妙に高い、
イヤな店が多い気がするのだが、榮じさんは、それらとは一線を画す良店なのである。
そもそも今の時代、日高屋などの廉価チェーンを除けば、600円で食べられるラーメン自体が少ないよね。
ましてや東京23区内、しかも駅前という好立地で、この低価格は驚きだよ。
立川市には『鏡花』という、やはり厳選素材を謳う店があるが、一番安いラーメンが1100円である。
鏡花(きょうか)という屋号には、強気な価格の「強価」、あるいは「狂価」という意味を含んでいるのか。
※追記 22年6月には、1200円~とさらに値上げ
※追記その2 さらに23年2月くらいに、1250円~に上げた模様
さて、狂った店(←言い過ぎ)のことは忘れて、榮じさんのラーメンを紹介していこう。
店内はカウンター席のみ。小料理屋さんのような、落ち着きのある内装である。
私の訪問時は、夕方の時間帯ばかりで、厨房にいるのは、頑固職人風の店主だけ。
ただし、店主は見た目に反し、口調は常に穏やかで、エラそうな振る舞いなどは微塵も見せない、好人物であった。
こちらは、ワンタンメンが有名な浜田山の名店『たんたん亭』の孫弟子にあたるそうなので、
私も初訪問時は、「わんたんめん」700円を注文。数分後、麗しいビジュアルの商品が登場。
まずはスープ…と丼に顔を近づけると、魚出汁の生臭さは一切なく、芳香だけが鼻腔をくすぐる。
「これは熊本県天草市牛深産の節と煮干しだな…」と心の中でつぶやく。味オンチの私が、産地に気付いた理由は、
“牛深産 節・煮干し”と記され、くまモンも描かれた段ボールが、店内に積んであったから(笑)。
産地はさておき、スープは無化調ながら、香りだけでなく味もよかったのは間違いない。
自家製の麺は、細いけれどしっかり腰があり、のど越しなめらか。魚介系醤油スープとの相性も抜群。
ワンタンは、やや小さめが3個。中にはもちろん、ひき肉がちゃんと入っている。
本家たんたん亭とは、風味も大きさも異なるが、通常の「中華そば」+100円という価格は嬉しい(たんたん亭は+300円)。
ワンタン以外の具材は、大きめチャーシュー、ノリ、刻んだネギに赤玉ネギと少数精鋭。
チャーシューは甘味がなく、肉と醤油の旨味をダイレクトに感じるタイプ。
スープは熱々で最後まで冷めず、私の食欲も最後まで持続したままで、スープも残さず食べ切った。
角煮などたっぷりの肉や、背脂、ニンニクなどは入らず、大盛でも太麺でもなく、こってり濃厚豚骨スープでもない、
私好みのジャンクなタイプとは対照的なラーメンなのだが、満足度は相当高かった。
商品自体の素晴らしさもさることながら、こういう正統派のラーメンを美味しいと感じる自分にも驚いた(笑)。
もう一杯、別のラーメンも試したかったが、なんだか恥ずかしくて、結局断念。
ラーメンの替玉を何度も頼んだり(人生最高は6玉)、ラーメンを食べたあとにカツ丼を注文したりするのは平気なのに、
ラーメン自体のお替わりは、異様に恥ずかしいのはなぜだろう。
BGMがない静かな店内環境と、一緒に食事している、地元世田谷区民と思われる上品そうな客層のせいか。
腹具合はともかく、心はじゅうぶん満たされたので、この日はおとなしく退散。
2度目の訪問では、中華そばと同額ながら、煮干しや油の量を増した「コク旨中華そば」600円に「たまご」100円を追加。
数分後、コク旨中華そばがやってきた。前回のわんたんめんより油膜が多い。
初回に撮影を忘れた、横アングルがこちら。底が深い丼で、一見少なそうに見えるが、実際はそうでもない。
まずはスープをひと口飲んでみたところ、油分が多いのか、前回よりさらに熱々。お陰で舌をヤケドした。
なので、中華そばとの違いはさほどわからず。ちょっと煮干し感が強く、好みが分かれそうかな。
そういえば味玉は…と思い店主にたずねたところ、どうやら忘れていた模様(笑)。あとから別皿でやってきた。
味玉はくっきりとした味付けで美味しかった。黄身ちゃんの柔らかさもちょうどよかったし。
もはや図書館よりも、榮じ訪問がメインになってきた3度目は、「貝出汁そば」800円をオーダー。
出汁だけでなく、貝そのものも具材としてラーメンに入っている。あと今回も、これまでと異なる器でやってきた。
いつもの和風魚介スープに、貝の旨味も加わっており、今まで食べた3種の中では一番ウマく感じた。
すぐに麺を食べ切ってしまったため、「かえ玉」100円を初注文。この手のラーメンで、替玉があるのは珍しい。
数分後、替玉が追加用のタレと同時に提供された。麺が意外と多いのに驚く。
一般的な九州ラーメンの替玉は、茹でる前で100グラム程度だが、ここは130グラム以上はありそう。丼のせいか、多く感じなかった。
しかも、すでにスープを結構飲んでしまい、麺自体もスープを吸うため、途中で汁っ気がなくなった。
最後の方は油そば状態の麺に、追加用ダレをかけながら食べた。
替玉よりは、最初から麺が多くてスープともなじむ、「大もり」100円の方がオススメかも。
無論、健啖家かつ大胆不敵な方には、ラーメン自体のお替わりを推奨する。
今月22日、東京でもようやく「まん防」が解除され、飲食店の営業時間も延長。
ネット情報によると、以前の榮じさんは、15時から18時まで中休みだった模様。
HPはなく、SNSもやってなさそうなので、やむを得ず電話で直接営業時間をたずねたところ、
まん防期間と同様、「11時半から中休みなしで19時くらいまで」とのこと。
ならば、と昨日の夕方、返却図書とともに、4度目の訪問を果たした。
注文したのは未食の「つけめん」800円に、メニューに記載はないが「わんたん」100円をプラス。
相変わらず店内は静かで、聞こえてくるのは麺茹で釜の中で、湯が煮える音のみ。
しばらくすると、これまた豪勢な器で、ワンタン入りのつけダレと、冷水で締めた麺がやってきた。
通常よりやや太い、つけめん専用の麺だけを食べてみたら、これぞ国産小麦の風味(←わからねえくせに)。
具材は、ノリがない以外は、初回のわんたんめんと同じ。つけダレは、魚介の風味より酸味を強く感じた。
酸味のあるタレは、ワンタンとは好相性。途中で卓上のミル胡椒を振りかけた。
冷たい麺で温かいタレが冷めないよう、ほぼハシを止めることなく一気に食べ切った。
※麺の下には水切り用の金具ザルがあった
この日は珍しく、私以外に客がいなかったので、店主榮じさんと「昨夜は電話してすみません…」などと、少しだけ会話。
昔は酒類や焼餃子も提供していたこと、21時までの営業だったが、時間内に入店すれば対応していたこと、
さらに安すぎる価格について、「他店のことは知らないけれど…」と前置きしつつ、
「小麦粉だけでなく、いろいろ値上がりして苦しいけど、もう少し(現状の価格で)頑張ってみる」と語ってくれた。
誠実そのものといった印象の榮じ店主。その姿勢が調理作業や商品価格、そして味にも込められている。
彼のためにも、小麦粉など各種食材の高騰が早く収まることを、願ってやまない。
こういうラーメン店が駅のすぐそばにある、千歳烏山はいい街だよ。
中華そば 榮じ
東京都世田谷区南烏山5-17-11
京王線千歳烏山駅西口改札より徒歩約30秒
営業時間 現在は11時半~20時だが、19時頃には閉店
定休日 日、月
※残念ながら、22年8月頃? に閉店なさったようです