米国の時計会社「SETH THOMAS」においては明治期に日本へ時計を輸出してました。
一般的な掛け時計や船時計が今でもたまに見掛けますが現存率は低いですね。
そして、今では振り子式とはちがい時計自体が傾こうが少しの振動でも止まらない
船時計は人気があります。
そんな、SETH THOMAS製船時計がいつものように不動状態で入荷。
本来の真鍮製の輝くボディは黒く汚れ、文字盤も相当な状態(多分、後年張り替え)。
運よく、欠品はスモルセコンドの真鍮リングと時打ち調整バーぐらいで後は揃っているように観えます。
早速、不動のムーブメントを取出し観察です。
「Thomaston」の刻印が有るということは1866年~1930年の間の製造。
そして、旧タイプの商標の刻印が有るということは1879年~1891年の間に絞ることが出来ます。
依って、この時計は116~136年前のものとなります。
何やら乱暴なことも施してありますが、テンプのヒゲが切れていることが致命傷です。
それに時計側ゼンマイの外周取り付け部でゼンマイが破断していることと軸の変形。
ただ、これについては外周取り付け部の方法上、ゼンマイに大きな穴が明けられているため
仕方がないようで、片方は破断していませんので何とかゼンマイは生きています。
早速、テンプを外してみるも切れ落ちたヒゲの切断面が残りのヒゲと合わないという不思議な状態。
残ったヒゲをヒゲ玉から取り除き、外れた方のヒゲを取り付け試験的に可動させてみます。
当然、ムーブメントはクリーニングの上、注油後に初動を行います。
何とか初動確保。
残されたヒゲは巻き数も足りませんので当然、時計は合いません。
6時間ほど動かして、-60分遅れです。
今後はこのムーブメントに合うヒゲをストックの中から捜し出し(多分、期待薄)、調整をしながら平行して
ムーブメント以外の外装のレストア作業となります。