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名作といえるのでは?「旅のラゴス」by筒井康隆

2017年02月15日 | 小説レビュー
〜北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。「BOOK」データベースより


図書館で予約申込をして、3ヶ月待って、やっと借りられた人気作品です。

筒井康隆さんといえば、十代の頃に読んだ「家族八景」、「七瀬ふたたび」を思い出します。とても奇妙な世界観でしたねぇ~。
人間の深層心理を透視するように読み取る力を持った女性「七瀬」が主人公で、人間がいかに邪な心を持って人と接しているかということをまざまざと知らされる、とても恐ろしくも面白い小説だったと記憶しています。

その筒井氏の作品に25年ぶりに触れました。やはり素晴らしい作家さんだと思います。

その筒井氏の作品の中でも、「旅のラゴス」は異色であるらしいのですが、とても不思議な物語です。

主人公のラゴスが、青年期から老年期に至るまでの旅の様子を描いただけの物語なんですが、この世界観が奇妙奇天烈でオモシロい!ジブリやディズニー・ピクサーで映画化して欲しい作品です。

ラゴスが旅する先々の都市は、それぞれ個性的な街や村で、人物や動物、情景も異なり、読んでいて飽きさせず、どんどん物語に引き込まれていきます。

最後に「いよいよ!これで、あの人と!」と、思わせてくれてクライマックスを迎えますが、出来れば何らかの形を作って欲しかったような寂しさもあります。

しかし、ある意味では、世の為、人の為に献身的に尽くしてきた(結果的に)ラゴスが、最後の最期では、自分自身の意志を貫く為に、旅立っていくという終わり方というか始まりといってもいい、このエンディングには深い意味があると思います。

始めっから終わりまで「ラゴスの旅」なんですが、「旅のラゴス」という題名をつけたところに、センスを感じますね。

老若男女、誰が読んでも楽しめる作品だと思います。


★★★★4つです。