〜大学院生の珠は、大学時代のゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性、石坂の後をつける。
そこで石坂の不倫現場を目撃し、他人の秘密に魅了された珠は、対象者の観察を繰り返す。
しかし尾行は徐々に、珠自身の実存と恋人との関係をも脅かしてゆき―。
渦巻く男女の感情を、スリリングな展開で濃密に描き出す蠱惑のサスペンス。「BOOK」データベースより
『恋』に続く、小池真理子氏の二作目です。
巷では、
緑の小池さんが連日メディアに出てますし、林真理子さんもいますから、ややこしいですが、僕は小池真理子さんの作品が好きです。
全てに「ほどよい」んですね。ハラハラ感もありますし、深いセリフや、「うーん・・・」と考えさせられることもあります。エロは抑え気味で、文章も優しく、万人から受け入れられると思いますよ。
さて、ストーリーの方ですが、主人公の大学院生:珠は、近所に住んでいる中年男性を街で見掛け、何故か「ハッ
」となって思わず尾行してしまいます。
そこで、その男性の不倫現場を目撃してしまったことによって、『文学的・哲学的尾行』の世界にはまりこんでしまうんですね。
この尾行が何とも面白くて、僕も「いっぺんぐらい、時間があれば、人の尾行をしてみたいなぁ〜」と思いました
他人の人生の、生活の一端を覗き見ることによって、何とも言えない快感に目覚めるんでしょうね(^_^;)))
逆に、「もしかして、誰かに尾行されてたりして
」とも思ったり
中盤あたりから、「さぁ〜!どうやって落としてくれるやろ?」と、期待を込めて読み進めましたが、エンディングとしては、まずまずでしたね。
もっと「ガツーンッ!」と来るかと期待しましたが・・・、まぁそれはそれで良かったのかも知れませんね。
読後感も爽やかというか、「フフッ
」と笑みがこぼれるような終わりかたでした。
ある意味ではサスペンス・ミステリーと言えるでしょう。
最後まで一気に読ませる筆力は拍手もんですし、『二重生活』というタイトルも絶妙でした。
★★★☆3.5です。