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よく踏み込んだが『友罪』by薬丸岳

2019年03月15日 | 小説レビュー
『友罪』by薬丸岳

~「凶悪犯罪を起こした過去を知ってもなお、友達でいられますか?」
―ミステリ界の若手旗手である薬丸岳が、満を持して「少年犯罪のその後」に挑む、魂のエンタテイメント長編。(内容紹介より)

読み始めてしばらくしてから「これは、神戸の少年Aをモチーフにしているんやな」と思いましたが、解説を読んで「そうではない」と断言されていたので、そうではないのかと思い直しました。

中盤までは「これは久々の星4つクラスかも!」と期待しながら最後まで読みましたが、クライマックスが近づくにつれて、何となく気持ちが萎んでいきました。

悪くないんですよ、本当に悪くない小説です。

テーマとしては、「過去を背負って生きていくということとは?」ということですね。

当たり前のことですが、人は生きているだけで、今日の出来事が明日には過去になります。

その過去の失敗や罪(大小を問わず)を背負って、人は生きていかなければなりません。

今作では、
①少年時代に日本中を震撼させる重大な殺人事件を犯した
②AV女優として多くの作品に出演した
③息子が車で小学生を轢き殺してしまった
④親友が苛められているのを見て見ぬ振りをして自殺に追い込んでしまった
⑤仕事に熱中するあまり、我が子をなおざりにしてきた

という5つのケースをそれぞれに背負って生きている人物が交錯していきます。

主題というか、物語の中心は、①と④の人物が同じ町工場に勤め始めるところから始まります。

とても重たいテーマですが、薬丸岳氏の丁寧な筆致で、ページを捲る手が止まりません。

それぞれの人物が過去に向き合い逃げることなく、前向きに生き抜いていこうとする感じでエンディングを迎えます。

しかしながら、締め方がイマイチで、爽やかも終わっているように感じますが、逆に言えば、適当に濁したという感も否めません。

絡んできた脇役達が放っておかれたまま「このままで終わってええんか?終わるんか?」と、問いたくなりました。

難しいテーマに、深く切り込んでいった筆者の努力には敬意を表しますが、締めくくり方に少々物足りなさを感じたのが残念です。

★★★☆3.5でした。

本作は、生田斗真と瑛太のダブル主演で、昨年の5月に映画化されています。

『映画版 友罪』

夏帆や山本美月、富田靖子なんかも出演してますし、佐藤浩市や坂井真紀も良いスパイスを提供してくれているようです。 映画も観てみたいですね。