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間延び感は否めません『ノースライト』by横山秀夫

2019年05月29日 | 小説レビュー
『ノースライト』by横山秀夫

~一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。
そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。
このY邸でいったい何が起きたのか? (「BOOK」データベースより)


横山秀夫氏は、僕の大好きな作家さんの1人です。しかし今作はイマイチでした。

主人公の建築士、青瀬は、妻と離婚し、一人娘・日向子の親権も前妻のもとにあります。バブル期に新進気鋭の建築士として、バリバリに働きながら、浮世の栄華を満喫し、その果てに家庭を失ってしまいました。

その青瀬を拾ってくれたのが、小さな建築事務所の所長を営んでいる大学の同期・岡嶋でした。

岡嶋の下で仕事をしていく内に、突然、青瀬を指名して「あなたが住みたい家を建ててください」と、吉野夫妻が事務所を訪れます。

離婚してからというもの、心の中にポッカリと穴が空いたようになっていた青瀬の闘志に火が付いて、自分が建てたかった家、住みたかった家、終の棲家となるような家という万感の思いを込めて、「ノースライト(北向きの窓から差し込む柔らかな光)」の家を設計します。

完成した家を見た吉野夫妻は「素晴らしいっ!」と涙を流して喜んでいたはずなのに、それっきり音信不通になってしまいます。「あんなに気に入っていたはずなのに・・・、」と青瀬は途方に暮れながらも、吉野氏の足取りを追いかけて、探偵のようなことを始めます。

後半のコンペ再参入のあたりは、横山秀夫氏らしさの迸りを感じますが、全体として間延び感は否めず、ミステリーの謎解きも、結局吉野氏の独白によって晒されるという、何とも締まらない感じでした。

エンディングは爽やかで、明日への希望の光が見えますが、何となく予定調和的でしたね。

余談になりますが、作中のキーマンとして、ドイツ生まれの建築家『ブルーノ・タウト』が登場します。名前だけは知っていましたが、日向別邸をネットで調べたりしながら、タウトの足跡を追ってみました。タウトが京都市西京区の桂離宮を訪れた際に「泣きたくなるほど美しい」と言ったらしく、京都に住まいしながら訪れたことのない『桂離宮』を死ぬまでに一度観てみたいものだと感じました。

ギリギリ、★★★3つです。
コメント
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