~西暦二〇XX年、有史以来初めての、しかし地球誕生以降、幾たびも繰り返されてきた“破局噴火”が日本に襲いかかる。
噴火は霧島火山帯で始まり、南九州は壊滅、さらに噴煙は国境を越え北半球を覆う。
日本は死の都となってしまうのか?火山学者をも震撼、熱狂させたメフィスト賞、宮沢賢治賞奨励賞受賞作。「BOOK」データベース
644頁の大作で、読むのに大変時間がかかりました。と言っても、決して読みづらい内容ではなく、大変興味深く読ませてもらいました。
日本は「地震大国」と言われておりますし、地震に対しての防災意識・減災意識は高いほうだと思います。もちろん記憶に新しい、「東日本大震災」や「阪神淡路大震災」などがあり、「東海地震」、「東南海地震」、「南海地震」などは、いつ起こっても不思議でなく、150年周期といわれておりますから、突然巨大地震が襲ってきてもおかしくはありません。
しかし、地震に比べて、日本国民の危機意識、防災意識が低いのが「火山被害」だと思います。
あまり知られていませんが、日本では全国に活火山が111個もあります。←これで見ると、「近畿地方や四国には活火山が無いんだよね」なんて、安心してはいられません! 地球上の陸地の0.25%しかない日本の国土の中に世界の活火山の7.1%が存在しているんですよ!まさに「火山列島」ですよ
時折目にするニュース等でも、鹿児島県の桜島は噴煙を上げ続けていますし、1991年に雲仙普賢岳が噴火し、人々に「火砕流」の凄まじさを知らしめました。
2000年(平成12年)には三宅島が噴火し、相次いで北海道の洞爺湖付近にある有珠山が噴火しました。2014年には御嶽山が噴火し、噴石によって登山客の方々の命が奪われました。
少し思い起こすだけで、これだけの火山噴火が思い出されます。しかしながら、いずれも局地的な噴火で、周辺こそ大きな被害が出ましたが、全国的な被害はなく、「大変なことが起こったんやな」とニュース映像を眺めていた程度でした。
さて、この『死都日本』に対する評価は以下の通りです。
「著者の石黒が、現在も未来もこの大火山列島に住む日本人のすべてに届けと鳴らした警鐘である。まちがいなく本書『死都日本』は、小松左京『日本沈没』(1973年)以来の国民的大災害小説(ディザスター・ノベル)として永く記憶されることになるだろう。」――<佳多山大地(文芸評論家) 解説より>
各紙誌絶賛の超弩級クライシスノベル!
・「精密予測 うなる専門家」――朝日新聞
・「学者たちが舌を巻くリアルな描写」――毎日新聞
・「破局を超えて、日本再生の道を示しているところがいい」――AERA、
とのことです。
これ以上あらすじについて転用するのも野暮ですので終わりますが、ひとたび、日本列島の地下に眠る火山マグマが膨張し出すと、連鎖的、破局的な噴火が起こり、日本列島を地獄に叩き落し、世界的な恐慌を引き起こす恐ろしさを秘めていることに改めて気付かされました。日本で暮らす人々には、是非とも読んでいただきたい作品であり、防災意識の高揚には、必ず役立つ本だといえます。
ストーリー的には、全体を通して緊迫感のある場面が続きますが、何となく「主人公は大丈夫やろ」という安心感がありますし、破局的噴火を乗り越えて、日本が再生の道を目指して大きな賭けに出る(作中では『神の手作戦」と言われている』あたりから、なんとなく「そんなうまいこといくか?」と、やや懐疑的になり若干興ざめしましたが、エンターテインメントとして考えれば、こういうエンディングもいいかも知れません。
いずれにしても、これだけの作品を書き上げた石黒耀氏に拍手を送りたいと思います。
★★★☆3.5です。