~あひるを飼い始めてから子供がうちによく遊びにくるようになった。あひるの名前はのりたまといって、前に飼っていた人が付けたので、名前の由来をわたしは知らない―。わたしの生活に入り込んできたあひると子供たち。だがあひるが病気になり病院へ運ばれると、子供は姿を見せなくなる。2週間後、帰ってきたあひるは以前よりも小さくなっていて…。日常に潜む不安と恐怖をユーモアで切り取った、河合隼雄物語賞受賞作。「BOOK」データベースより
何かの小説ランキングで「おもしろい!」とあったので、図書館で借りてきました。
一言で感想を言うと「ぞわぞわする小説」です。「ゾクゾク」ではなく「ゾワゾワ」です。カタカナ表記すると似ていますが、似て非なるものです。
『死都日本』を読んで、緊張感と緊迫感、そして長編小説を読み終えた疲れから、次に読む作品を『あひる』か、原田マハさんの『美しき愚かものたちのタブロー』か迷いましたが、「『あひる』なら、何となくほのぼのしたエッセイ的な家族の風景が描かれているんやろうし、ちょっと一息つけるんちゃう?」と安易な気持ちで開きました。
ところがどっこい!この小説は怖いですよ!恐怖という怖さではないんですが、セリフの端々や情景描写、登場人物なんかが、少しずつ不気味なんですよ。
イメージとしては、道尾秀介氏の『向日葵の咲かない夏』をソフトにした怖さですかね?ちょっと言葉では説明できないような、まさに『ゾワゾワ』する雰囲気の物語です。
今村夏子という作家さんは・・・、
2010年「あたらしい娘」で太宰治賞を受賞。同作を改題した「こちらあみ子」と新作中篇「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』(筑摩書房)で、2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。2016年に本作「あひる」が第155回芥川龍之介賞候補に挙がった。同作を収録した短篇集『あひる』で、第5回河合隼雄物語賞受賞。2017年、「星の子」で第157回芥川賞候補、第39回野間文芸新人賞受賞。2019年、『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞。2019年度咲くやこの花賞受賞。
とのことで、デビュー以来、華々しい受賞歴をお持ちの女流作家さんです。
今村さんの作品は、この『あひる』が初読だったんですが、この世界観は好きです!次回は『こちらあみ子』と、『むらさきのスカートの女』を読んでみたいです。
話はそれましたが、この『あひる』は、読み手の好みが分かれる作品ですが、176頁で行間も広く読みやすい文章なので、1時間ほどで読めるかも知れません。
まず、手に取って一読していただき、気になる部分や読み返したい衝動にかられたらとしたら、あなたも「今村夏子ワールド」に引きずり込まれることでしょう。
いずれにしても、私の評価は低くないです!
★★★☆3.5です。