~太公望と並ぶ周王朝建国の功労者にして、孔子が夢にまで見たという至高の聖人に、著者独特の大胆な解釈で迫る。
殷を滅ぼし、周を全盛に導いた周公旦の「礼」の力とは何か?果たして彼は政治家なのか、それともシャーマン?そして亡命先の蛮夷の国・楚での冒険行の謎とは。無類の面白さの中国古代小説。新田次郎文学賞受賞作。「BOOK」データベースより
『墨攻』、『後宮小説』に次ぐ、酒見賢一氏の三作品目です。とても評価が高い作品なんですが、極めて地味な内容です。
周公旦という人物が、言葉少なく淡々とした政務をこなすタイプの忠臣なので、武王が健在な頃には、それほど目立つ雰囲気はなく、他の武将、官吏の方が面白いキャラクター設定であり、前半は読んでいて、引き込まれる感じはありません。
しかし、次代の成王に疎まれて、国外逃亡し、命からがら未開の僻地『楚』に入り、地方の蛮族たちとの命がけの交渉をし、呪術的な能力を駆使して、楚の蛮族たちの懐に入り込み、そして楚を一つの国として立ち上げる礎を築いたのですね。
物語としても中々の展開でしたし、周公旦の胆力というか、生き抜く力には感嘆しました。
酒見氏の文章は相変わらず読みやすいですし、中国の三国志以前の歴史の一端を知る意味でも読んで損はない作品です。
★★★3つです。