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全て読み終えてからのお楽しみ『後宮小説』by酒見賢一

2020年10月08日 | 小説レビュー

『後宮小説』by酒見 賢一

 

~時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに…。

さて、銀河の運命やいかに。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。「BOOK」データベースより

 

酒見賢一という作家さんの名前を見て何とも思わなかったのは不覚でした。僕の大好きなコミックスの一つに『墨攻』という作品があります。

革離という墨家集団(中国の秦始皇帝時代の戦術家・戦略家)出身の主人公が活躍する物語なんですが、とてもリアルで面白いんです。おすすめです。

墨攻=森秀樹さんというイメージで捉えていたので、小説の『墨攻』が原作であり、酒見賢一さんが記されたものだと全く失念しておりました。

その酒見賢一氏のデビュー作であり、「第1回日本ファンタジーノベル大賞」を受賞した作品が、この『後宮小説』なんですね。

さて、この物語は、王朝も人物もすべて架空の中国史小説風ファンタジーという異色作なんですが、選考会では井上ひさし氏によって「シンデレラと三国志と金瓶梅とラストエンペラーの魅力を併せ有す、奇想天外な小説」と高く評価された作品です。しかしながら、まるで中国の歴史書の一部を読んでいるかのような錯覚を覚える作品でした。

キャラクターづくりが秀逸で、好感が持てる人たちが多く登場します。また物語の展開スピードが速く、読んでいて気持ちいいです。

そしてクライマックスで盛り上がり、穏やかにエンディングを迎えますが、その後の歴史と後日談が語られて、Finとなるのですが、そのあとに筆者自身が語る「蛇足」の解説というか、あとがきのような部分が面白く、最後の最後まで読ませてくれました。

是非、色んな人に読んで欲しい小説なんですが、小説を読む前にレビューとか、『後宮小説』についての解説文などは絶対に読まないでくださいね。

★★★★4つの快作です!


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