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ジュリアス・シーザーが暗殺されたのは3月15日だった

2021-03-14 22:53:56 | シェイクスピア
3月15日と聞いて、”Ides of March”という言葉を想起する人は、シェイクスピアに深く関わってきた人に違いありません。シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」の戯曲の中で、ポンペイを破ってローマに凱旋したジュリアス・シーザーに対して、群衆の中から占い師が語りかける言葉が、”Beware the Ides of March” (3月15日に気をつけろ)。そして、この予言通り、3月15日にジュリアス・シーザーがブルータスらに暗殺されてしまうのです。

「ブルータスよ、おまえもか?!」という台詞はあまりにも有名ですが、この3月15日というのは、戯曲の中の話だけでなく、史実でもあります。紀元前44年の3月15日に、シーザーは実際に暗殺されてしまいます。

“Ides”は「アイズ」と発音しますが、これは昔の暦で15日を意味していました。月により、13日を”Ides”としていた月もあります。月のほぼ中旬に設定されていました。古代ローマは「ローマ暦」を採用していましたが、ジュリアス・シーザーにより紀元前45年から「ユリウス暦」を採用することになります。「ジュリアス」をラテン語読みにすると「ユリウス」になります。ちなみに、7月は英語で”July”と言いますが、これはジュリアス・シーザーの誕生月で、自分の名前の「ユリウス」を月の名前にしたことから来ています。

それまで355日くらいであった一年が、ユリウス暦では現在とほぼ同じ365.25日になりました。ユリウス暦は16世紀後半ごろから、さらに調整を加えたグレゴリオ暦に変わっていきますが、イギリスがグレゴリオ暦を採用するのは、1752年のことで、シェイクスピアの時代の英国はユリウス暦が行われていました。

ローマの時代、3月15日は借金の最終返済期限だったらしいのですが、現代の日本でも確定申告の期限がこの日になっているのは何とも奇遇ですね。2021年はコロナ禍で申告期限が4月15日と一ヶ月延長になっていますが。3月の中旬は何かと節目になる時期なのですね。

グラミー賞の発表も3月中旬で、今年は14日になっています。日本では、ほとんど知らないこの言葉も、シェイクスピアが教養の一部となっている英語圏では、かなり多くの人が知っています。

「スーパー・チューズデー」という2011年公開のアメリカ映画があります。「正義を売った日」という副題が付いていますが、ジョージ・クルーニーが共同脚本、監督、主演をした映画で、アメリカ民主党大統領予備選挙を題材にしたものです。これの原題がじつは “The Ides of March”なのです。この言葉を聞くと、裏切りと反逆の政治劇ということがわかる人が多いということですね。

アメリカには60年代にこの名前のバンドも存在していたことがネットに出ていました。

私は大学時代、英文学科で、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」の購読の授業を受けていたことがありました。シェイクスピア学者で、当時劇団「円」(えん)で演出もされていた安西徹雄教授が先生でした。”The Ides of March”という台詞を先生が朗々と読み上げられたのを今でも覚えています。

また、大学時代、シェイクスピア研究会という劇団に所属していて、舞台にも何度か立っていました。私が出演したのは、「夏の夜の夢」、「十二夜」、「ロミオとジュリエット」、「ヴェロナの二紳士」の4作で、「ジュリアス・シーザー」は授業で受けただけでした。

何年か経って、蜷川幸雄演出の「ジュリアス・シーザー」を埼玉の彩の国の劇場に見に行ったことがあるのですが、そこに出演していたのは、大学時代、シェイクスピア研究会で一緒に芝居をしていた吉田鋼太郎君でした。その後、彼は蜷川さんの後を継ぐことになるのです。



以前、働いていた会社の社内のゴタゴタがあったことがありました。その時の支えになったのが実はシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」でした。混乱の状況の中、会社再建を目指して活路を開く時、手に持っていたのが文庫本のこの本だったのです。

ところで、「シーザーサラダ」や「シーザードレッシング」の「シーザー」は、「ジュリアス・シーザー」に関連があるのかなと思っていて、調べたら、全く関連はないということがわかりました。メキシコのティファナという町のレストランのオーナーのシーザー・カーディーニという人の名前から来ているようです。あり合わせの材料で急場凌ぎに作ったさらだが、人気となったのだとか。

またアメリカのピザチェーンで、「リトルシーザーズ」というのがあります。20年前に日本にもあったのですが、すでに撤退していました。アメリカでは有名チェーンとなっています。ミシガン州の夫婦が始めたお店のようですが、こちらがその創業者の夫婦、Mike and Marian Ilitch。マイク氏のニックネームが、”Little Caesar”ということだったようです。




“The Ides of March”という言葉からあれこれさまよいましたが、この言葉を知っておくと何かの時に役立つこともあるかもしれません。

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