大きな試練から立ち上がろうとする人々を応援する音楽の力—それを感じたのが今週のNHK朝の連続ドラマの『エール』でした。打ちひしがれた人々の心に、生きるための希望を与える。音楽がそれを可能にすることができる。そんなことが見事に表現されていたと思います。
人々を戦争に駆り立てる手助けをしてしまったという罪の意識から、作曲できなくなっていた古関裕而さんが、苦しみを乗り越えて、戦後間も無く作った『鐘のなる丘』そして、『長崎の鐘』。一週間の間にこの二つの名作が完成するのですが、このドラマは、ストーリーだけでなく、そのストーリーに音楽が絡み合っているところが、これまでと異なります。
主人公の古山裕一を支える妻の音が豊橋出身で、私の出身地の近くなので、故郷を応援するという目的もあり、今回の朝ドラを欠かさず見ているのですが、このドラマの中で登場する音楽、そして実際に音楽に関わっている出演者の皆さんが、このドラマを特別のものにしています。
森山直太朗さん、野田洋次郎さん、山崎育三郎さんなど歌を本業とする方が見事な演技を見せているし、薬師丸ひろ子さん、菊池桃子さん、松井怜奈さんなども歌手としても有名だった皆さんです。スター御手洗役の古川雄大さんも、夏目千鶴子役の小南満佑子さんも、『長崎の鐘』を歌った山藤太郎役の柿澤勇人さんも、藤丸役の井上希美さんも、藤堂昌子役の堀内敬子さんも、もともとはミュージカルの出身。柿澤さん、井上さん、堀内さんも劇団四季でミュージカルに出ていたんですね。柴崎コウさんは歌手としても有名です。あと、岩城役の吉原光夫さんも劇団四季出身のミュージカル俳優で、帝劇の『レミゼラブル』でジャンバルジャンを演じられていた方だったんですね。
「ラジオドラマ『鐘の鳴る丘』は、昭和22年(1947年)7月5日から始まり、1950年(昭25)12月まで続いたそうです。今に続く連続テレビ小説の基となったドラマでした。私が生まれたのは、1955年だったのですが、主題歌「とんがり帽子」の歌は、母がよく歌っていたのを覚えています。YouTubeにあった『とんがり帽子」の曲の動画をシェアさせていただきます。
『長崎の鐘』は、もともとは藤山一郎さんが歌って大ヒットした曲ですが、ドラマでは山藤太郎として、柿澤勇人さんが歌っていました。柿澤隼人さんは、彩の国の『アテネのタイモン』で演じた将軍アルシバイアディーズの赤いマントの颯爽とした姿を鮮明に覚えています。そんな彼が歌う『長崎の鐘』、感動的でした。
YouTubeに映画『長崎の鐘』の動画があったのでシェアさせていただきます。
あと、忘れられないのは、薬師丸ひろ子さん演じる充子が焼け跡で歌う『うるわしの白百合』という賛美歌。この演出は、薬師丸ひろ子さんの提案だったそうですが、とても感動的でした。
平和だった日々のたくさんの思い出。
— 連続テレビ小説「エール」 (@asadora_nhk) October 15, 2020
光子の歌う賛美歌が焼け跡に響きます。#朝ドラエール#薬師丸ひろ子 pic.twitter.com/yCsN4dWn1j
このドラマには、『船頭可愛や』とか、『紺碧の空』、『六甲おろし』とか、『暁に祈る』、『若鷲の歌』など、古関裕而さんが作曲された名曲も散りばめられていますが、子供の音が歌う童謡「朧月夜」、教会の賛美歌、双浦環が教会で歌うプッチーニ、椿姫など、数々の音楽が登場しています。ミュージカルではないのですが、これはひょっとして音楽劇と呼んでもよいのかもしれないなどと思ったりします。
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