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東京オリンピックで頑張った東南アジアの国々

2021-08-08 15:18:31 | オリンピック
東京オリンピックは、日本のメダル獲得が話題になりましたが、世界のいろんな国も頑張りました。サンマリノ、ブルキナファソ、トルクメニスタンなどが史上初のオリンピックでのメダルを獲得しています。今回のオリンピックでは史上最多の205の国と地域が参加していますが、今まであまり聞いたことがなかった国も数多くありました。

アジア圏では、中国や日本はメダルが多くて当たり前の感じですが、東南アジアの国も活躍しました。インドネシア、タイ、フィリピンなどでは、それぞれ金メダルを含む複数のメダルを獲得しましたが、それぞれ国を挙げての大ニュースとして盛り上がりました。

今年になってから、日本では、新型コロナの感染拡大と、オリンピック組織委員会の様々な問題で、オリンピックの開催そのものが不安視されていました。オリンピックを本当にやるのかどうかという不安もあり、東南アジア各国も6月くらいから感染が急拡大していて、海外渡航そのものも心配だし、練習も思うようにできなかったのではないかと思います。

そんな状況の中で、選手たちは日本にやってきて、戦いの舞台で実力を発揮し、メダルを獲得しました。それは賞賛に値することだと思います。2020年東京オリンピックにおける東南アジア各国の活躍についてまとめておきたいと思います。

インドネシア

インドネシアは、金1、銀1、銅3というメダル数になりました。



金メダルを獲得したのは、バドミントン女子ダブルス。8月2日に行われた中国との決勝で、グレーシア・ポリー選手(Greysia Polii, 1987年8月11日生まれ)とアプリヤニ・ラハユ選手(Apriyani Rahayu, 1998年4月29日生まれ)のペアは、中国ペアをストレートで打ち破り、金メダルを獲得。報奨金の金額は50億ルピア(約3806万円)とも言われています。



グレーシア・ポリー選手は、ジャカルタ出身のキリスト教徒、アプリヤニ・ラハユ選手はスラウェシ島出身のイスラム教徒。イスラム教徒が大半のインドネシアなのですが、スポーツは宗教を超えるんですね。



インドネシアで銀メダルを獲得したのは、7月25日に、重量挙げ男子61キロ級に出場したエコユリ・イラワン選手(Eko Yuli Irawan, 1989年7月24日生まれ)。イラワン選手はスマトラ島南部のランプン州メトロ市の出身。

インドネシアの銅メダルは、重量挙げ女子49キロ級のウィンディー・アイサー選手、重量挙げ男子78キロ級のアフマト・アブドラー選手、バドミントン男子シングルスのアンソニー・シニスカ・ギンティン選手でした。

タイ

タイは金1、銀0、銅1という結果でした。



金を獲ったのは、女子テコンドー49キロ級のパニパック・ウォンパッタナキット選手(Panipak Wongpattanakit, 1997年8月8日生まれ)。「テニス」という愛称のパニパック選手は、準決勝で日本の山田美諭(やまだみゆ)選手を破った選手です。



リオでも銅を獲っていますが、今回の報奨金は1000万バーツ(3340万)とも、それ以上とも言われています。一躍国民的スターとなったテニス選手は、すでに地元に帰っていますが、こちらの写真はプーケットの空港で父親に挨拶をしているパニパック選手です。



タイの銅メダルは、ボクシング女子ライト級のスダーポーン・シーソーンディー選手、愛称テウでした。

フィリピン

フィリピンは金1、銀2、銅1という結果でした。



7月26日に行われた重量挙げ55キロ級で、ヒディリン・ディアス選手(Hidilyn Diaz, 1991年2月20日生まれ、ミンダナオ島西端のザンボアンガ出身)が、中国を破り金メダルを獲得。五輪出場は4回目ということで、前回のリオでは銀を獲っています。地元メディアによれば、報奨金は一億ペソ(2億円以上)になるという噂も。(金額に関しては裏が取れていませんので、正確でない可能性はあります)

ディアス選手は、空軍に所属しているようですが、西フィリピン海での中国との領海問題に関して「中国に雪辱を」ということを今回のモチベーションとしていたようです。



フィリピンで銀メダルを獲得したのは、ボクシングフェザー級のネスティ・ペテシオ選手(Nesthy Petecio, 1992年4月11日生まれ)、ミンダナオ島出身の選手です。日本の入江聖奈選手との決勝戦で敗退した選手ですね。また、ネスティ選手は、LGBTQを公表している選手です。



もう一つの銀メダルは、ボクシング男子フライ級のカルロ・パアラム選手(Carlo Paalam, 1998年7月16日生まれ)です。準決勝で田中亮明選手を破った選手です。



フィリピンの銅メダルはボクシング男子ミドル級のユミル・マルシアル選手です。

マレーシア

マレーシアは銀1、銅1という結果でした。



8月8日に開催された男子ケイリンで、モハメド・アジズルハスニ・アワン選手(Mohammed Azizul Hasni Awang, 1988年1月5日生まれ)が銀メダルを獲得。前回のリオで銅を獲得している選手ですが、銀メダル獲得でマレーシアが湧いています。

銅メダルは、バドミントン男子ダブルスのアーロン・チア選手とウーイック・ソー選手のペアでした。

その他の国

シンガポールは、卓球や、水泳などメダルが期待されていましたが、今年はメダルの獲得は残念ながらゼロでした。ベトナム、カンボジア、ラオス、ブルネイも、メダル獲得はできませんでした。

ミャンマーも2名の選手が参加しましたが、本国がスポーツどころの状況ではありませんでした。オリンピックに参加したかったアスリートも数多くいたに違いありません。

5月にサッカー・ワールドカップ・アジア2次予選のために来日し、日本と対戦したミャンマー代表チームでしたが、ピエリアンアウン選手が、クーデターを起こした国軍への抵抗を示す「3本指」を掲げるということがありました。「帰国すると迫害を受ける可能性が高い」として、空港で帰国を拒否、日本政府に保護を求め、入管難民法に基づく緊急避難措置として6か月の在留と就労が認められました。ミャンマーにいるピエリアンアウン選手の家族が無事であることを祈ります。

さらに強くなる東南アジア選手

新型コロナの感染拡大で、東京オリンピックの準備も、練習も大変だったかと思います。フィリピンのヒディリン・ディアス選手などは、一年以上マレーシアで練習をしていたということです。また、これらの国からオリンピックに参加した選手たちは、国に帰る際に検疫隔離なども受けなければならず、スポーツだけに集中していられない状況だったかと思います。

それでも、ひとたびメダルを獲得すれば、一躍その国のヒーローとなり、さらに莫大な報奨金をもらえることになります。そのようなサクセスストーリーに影響されて、多くの少年少女が、一攫千金の夢を追って、スポーツを志すようになるのでしょう。東南アジアの国々は、人口規模も大きく、スポーツをバックアップする経済力も拡大していくので、今後ますます強い選手たちが登場してくると思います。東南アジアのスポーツ選手、今後も注目していきたいですね。日本もうかうかしてはいられないと思います。
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オリンピックでの快挙を素直に喜べない香港と台湾の複雑な事情

2021-08-04 18:23:59 | オリンピック
東京オリンピックは連日いろんなドラマがあって、カバーしきれないのですが、香港と台湾に関して書いてみたいと思います。

7月26日、フェンシング男子フルーレ個人で金メダルを獲得したのは、香港のエドガー・チュン選手(Edgar Cheung, 張家朗, Cheung Ka Kong)でした。香港としてオリンピックで金メダルを獲得したのは25年ぶりで、1997年の香港の中国返還以降では初めてのことでした。



2019年から激しさを増していた香港の民主化運動に対して、中国政府の圧力が強まり、2020年7月に香港国家安全維持法が施行、8月には民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんなどが逮捕されるという事態に。2021年になって、民主派は選挙から実質的に排除されることとなり、2021年6月24日、反中国的な姿勢を取り続けたアップルデイリー(りんご日報)が廃刊となっていました。

私は香港に2007年から2011年まで住んでいたので、香港の自由が徐々に失われていくのを目撃してきたのですが、今回のオリンピックでの香港選手の活躍は、そんな重苦しい空気を吹き払うものでした。しかしながら、同時に、通貨やパスポートなどは中国本土とは別でありながら、香港はあくまでも中華人民共和国の一地域にしかすぎないという事実が、複雑な状況をもたらしました。

東京オリンピックは、「168の国と地域」が参加していると言われています。地域とは、香港や、台湾、マカオ、パレスチナなどです。北朝鮮はコロナを理由に東京オリンピック参加を辞退していますが、この国も「地域」に該当します。日本は北朝鮮を国家として認めていないからです。

香港のフェンシング男子フルーレ個人でのエドガー・チュン選手の勝利で、香港各地のパブリックビューイング会場は歓喜の渦に包まれました。



しかし、表彰式で流れたのは中華人民共和国の国歌。その国歌を打ち消すために、人々は“We Are Hong Kong!”と声を合わせて叫んだのです。香港には、2020年6月に「香港国歌条例」というものができていました。国歌を侮辱してはならないという法律です。そのため、7月30日には、この条例に抵触したとして、40才の男性が逮捕されたとのことでした。



今年の香港は、競泳でも活躍しました。7月28日、「リトルマーメイド」と呼ばれる、女子200m自由形の何詩蓓選手(Siobhan Haughey、23才)がトップとはわずか0.42秒差で銀メダル。また7月30日の100m自由形でもトップとは僅差で銀メダルを獲得しました。アイルランド人の父親と香港人の母親の間に生まれた何詩蓓選手ですが、競泳でのメダルも香港初ですし、一つのオリンピックで二つのメダルを獲ったのも香港初でした。

この何詩蓓選手の時は銀メダルだったので、国歌はなかったのですが、今後、香港選手が金メダルを獲得した時は、いろいろ心配になります。香港選手が獲得したメダルが、中国として集計されたりすると、香港の人々は悲しい気持ちになるのでしょうが、今のところはそういうことはなさそうです。

台湾も同じく、「地域」参加として複雑な状況にあります。日本は、中国を国家として認めているので、台湾を中国の一部とする中国を尊重して、台湾には「地域」という格付けしか与えていません。中国から見たら、台湾は、別の国ではなく、中国の省の一つなのです。

東京オリンピック開会式の中継で、アメリカのNBCテレビが台湾を含まない中国の地図を画面上に映したとして、中国政府は同局に抗議したというニュースがありました。「不完全な地図」により「中国人民の尊厳と感情を傷つけた」と中国は主張していたそうです。

オリンピックの開会式では台湾という名前は使わず、“Chinese Taipei”という名前を使うことになっています。台北は都市の名前だし、変な名称なのですが、オリンピックに出る場合はこの名前になっています。



今回の東京オリンピック開会式の選手入場は、アルファベット順ではなく、日本語にした場合のアイウエオ順だったのですが、「チャイニーズ・タイペイ」は、「チ」ではなく、「タ」の順番だったそうです。中華人民共和国と近すぎないようにとの配慮だったのかもしれません。

入場の際の会場アナウンスでは、英語でも日本語でも「チャイニーズ・タイペイ」が使われましたが、NHKのアナウンサーが「台湾です!」と言った時には、台湾人からは拍手喝采だったそうです。



台湾のアスリートも活躍が続いています。8月4日時点で、台湾のメダル数は11個。過去最多です。ウェイトリフティングとバドミントンで金メダルを獲得しています。



7月27日、59キロ級で郭婞淳選手(27)が金メダル。「挙量女神」(重量挙げの女神)と呼ばれる27才の郭選手は、2012年のロンドンでデビュー、2016年のリオで銅を獲っています。今回の記録は、スナッチ、ジャーク、トータルのいずれも五輪記録だったそうです。



7月31日、バドミントン男子ダブルスでも李洋、王斉麟組が宿敵の中国ペアを下して金メダルを獲得。



しかし、国旗掲揚の際は、台湾の旗「青天白日満地紅旗」ではなく、台湾五輪委員会の旗でした。また、演奏されたのも一般の台湾人がなじめない「国旗歌」という曲でした。

こちらがその曲です。



中国が台湾に負けたというのは中国にとっては屈辱的なニュースだったようですが、表彰式のシーンは中国のCCTVでは放送されなかったそうです。

オリンピックは政治とは関係ないとはいうものの、香港や台湾など「地域」の活躍を見ていると、複雑な気持ちにならざるをえません。こういう問題は、なくなることはないでしょうが、みんなが選手たちの活躍を素直に喜べるようになりたいものです。
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卓球女子シングルス金メダルの陳夢は黄暁明の親戚だった

2021-08-01 12:38:04 | オリンピック
7月29日、東京オリンピックの卓球女子シングルスで、中国の陳夢(チンム、チェンムン、Chen Meng)選手が金メダルを獲得。



日本は、伊藤美誠(いとうみま)選手の銅メダルで沸いていたので、陳夢選手の金メダルはそれほど話題にはなりませんでした。

たまたま7月30日のシンガポールの新聞(The Straits Times)を見ていたら、こんな記事が出ていました。



卓球選手を英語では“Paddler”というのですね。「卓球選手の陳夢は俳優のホァン・シャオミン(黄暁明)のいとこ」という見出し。え、そうだったの?と思って記事をよく見ると、お互いの祖母が姉妹で、陳夢選手とホァン・シャオミンは、“second cousin”であると書いてあります。日本では「またいとこ」あるいは「はとこ」という関係になるんですね。



ホァン・シャオミンは1977年11月13日山東省青島(ちんたお)市で生まれた中国の俳優です。「ラスト上海(大上海)」や「新上海グランド」など数々の映画やドラマに出演している俳優ですが、2015年10月8日にアンジェラ・ベイビーと結婚して話題となりました。



上海で行われたその結婚式は総額38億円とも言われ、その豪華さは数々のメディアで話題になりました。



アンジェラ・ベイビーは、上海生まれですが、子供の頃、香港に移住。モデルとして一躍世界的に有名になり、「アジア一の美しさ」、「なりたい顔No.1」として話題になっています。

卓球の陳夢選手は、1994年1月15日生まれで、同じ青島市の出身なので、17才くらいの差があるのですが、「ホァン・シャオミンの妹」と呼ばれていたそうです。

またこの新聞記事によれば、俳優のAllen Renも以前、山東省の卓球チームで陳夢選手のチームメートだったようだとも書かれています。Allen Renは怪我をした後、卓球を辞め、芸能の道に進んだのだそうです。

陳夢選手は、中国卓球界のトップに君臨してきたのですが、中国は卓球では強い選手がひしめいているので、順風満帆ではなかったようです。金メダル獲得選手もいろんなドラマがあるんですね。しかし、こんな親戚関係というのもすごいですね。
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