8月の半ばから、3カ月近く日本に滞在して2週間前に英国に戻りました。
日本にいる間に、英国の夏から秋の季節の移り変わりを見逃しただけではありません。
(写真は帰国後の近所で撮った、英国の晩秋風景です)
私が英国に移り住んでからずうっと...どころではなく私が生まれるずうっと前から、実に70年と214日この国の女王だったエリザベス二世が亡くなっていました。
女王と同じぐらい見慣れた顔の、私が日本に行く前は皇太子だった高齢男性が 国王チャールズ三世として国家君主の座を引き継いでいました。
もちろん、日本で女王が亡くなったニュースはていねいに追っていましたし、お葬式の生中継もケーブルテレビで最初から最後まで見ました。
BBC(英国国営放送)が撮影して世界中に配信したらしいその映像には、アメリカの CNN 局のアナウンサーと有識者(アメリカ人)が対話する形式のアメリカ英語のコメンタリーとそれにかぶさる日本語の同時通訳がついていました。聞きずらいことこの上なし。しかも「英国の伝統や権威」に憧れるアメリカ人視聴者を満足させる主旨の俗っぽい内容でした。もしかしたら一般の日本人の好みにも合う内容だったかもしれません。
英国外では全くなじみのない参列者(たとえば首相経験者など)の紹介など完全にすっ飛ばしてテレビに映っている映像と全く関係のないトークで盛り上がったりしていました。
どうせBBCのオリジナルのコメンタリーを使わないのなら、「日本人の有識者(英王室に関するエキスパート)」に日本語で語らせればよかったのに... と思いました。
君主がものものしい軍礼装で勲章をじゃらじゃらつけて王冠をかぶって出席する物々しい儀式はまだないようなので、君主の交代の実感はほとんどありません。
戴冠式は年が明けて5月です。
訪れた場所からの中継で、おなじみのダブルのスーツ姿のチャールズが「国王陛下 His Majesty the King」と紹介されているのを聞いて「あっ、そうだった」と思い出しました。でもなぜか違和感はありません。
そういえば、今年5月の国会の開会式 State Opening of parliament にはチャールズがものものしい軍礼装で(王冠はなし)女王の代行で出席したのでしたし、その前の数年は、100歳近い高齢でお疲れ気味の父君のエディンバラ公フィリップ殿下の代りに母君、エリザベス女王をエスコートして出席していたのでした。
そう遠くない先の予行演習みたいなものだったのですね。
国民もなんとなく慣れました。
「チャールズ、老けたなぁ」としんみりさせられる、70代のそれでもまだ、皇太子だったのでした。
母と息子が仲良く臨む荘厳な国会開会式をテレビで見て「チャールズ、年より老けて見えない?っていうか、女王が若く見えすぎ...姉弟か、ヘタすれば夫婦にも見えるよね」なんて勝手な感想を言っている国民がけっこういたはずですよ。
カタールでのサッカーのワールドカップの試合前に、国歌 God Bless the King の有名な冒頭部分の歌詞、God save our gracious king の king を歌いなれたqueen とまちがえて歌ってしまったイングランド選手がいたのが話題になっています。無理もない話ですが、試合前に各選手はまちがえないようにクギをさされていたそうです。
女王が亡くなった3日ほど後に娘が送ってくれた写真です(私が少しトリミングしました)
近所の無人駅のプラットフォームにある乗車券の販売機です。
通常は、コンピュータースクリーン式の販売機の最初のページには鉄道会社からのお知らせなどが表示されていますが、服喪のイメージに切り替えたようです。
それにしても素早い対応ですよね。ずいぶん前から用意していたとしか思えません。
国外にいて国を挙げての追悼行事を見逃したのは返す返すも残念です。
エディンバラ公の死の直後は通常のテレビ番組が全て、これまたずいぶん前から用意していたであろうと思われる故人の伝記ドキュメンタリーを中心にした追悼番組に切り替わったことが思い出されます。
国家君主を失った今回は、それよりももっと気の入った追悼だったようです。
チャールズ三世の肖像が印刷された5ポンド、10ポンド、20ポンド、50ポンド紙幣(と言っても紙製ではなく、プラスチック製、正しくはポリマー樹脂製)のデザインが年末に造幣局から発表されるそうです。
流通がはじまるのは2024年...ってずいぶん先ですね!
紙幣のデザインはかわらず、君主の肖像の部分が女王から国王にさし換えられるだけだそうです。
代替わり貨幣の発行の見通しはまだ立っていません。
貨幣に刻まれた女王の肖像は全て右向きのプロフィール(横顔)ですが、チャールズ国王のデザインは全て左向きになる予定なのだそうです!
英国の数百年来の伝統で、新旧の君主のプロフィールは代替わりの際、必ず反対向きにする「縁起かつぎ」のような習慣があるそうです。
女王の肖像入りの紙幣、貨幣は無効になることはないものの新国王のデザインがでまわるにつれ、ボロッちくなったものから回収廃棄されていくそうです。完全に新陳代謝が完了するまで、数十年かかるそうですよ。
プラスチックのお札はぜんぜんヘタりませんしね。ポケットに入れたまま洗濯してもピンピンのまっさら状態できれいになって洗濯機から出てきます。
ちなみに...英国では君主の誕生日は祝日ではありません。
Elizabeth Alexandra Mary, April 21 1926-September 8 2022