べんりや日記

住まいのこと、情報発信!

地震直後の様子(小千谷市) ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 22:53:39 | 新潟県中越地震
平成16年10月23日夕方6時数分前、新潟県小千谷市を震源とする中越地震が発生しました。
小千谷市では震度6強の地震が15秒間続き、相次ぐ大きな余震により被害が拡大しました。


起伏のできた道路
道路内の下水管のまわりの砂が地震により液状化し、道路が陥没しています。
この様な光景は何処でも見られました。



飛び出したマンホール
はじめは歩道にボラードか何かが置いてあると思ったのが、 路面から120センチ程飛び出したマンホールでした。
23日の本震の突き上げにより、マンホールが上に突き上げられたと考えています。
その後の相次ぐ本震や余震の横揺れにより横管のまわりの砂が液状化を起こし、マンホールのあった場所に移動し、 路面の陥没に至ったようです。






傾いた電柱
電柱も、本震の突き上げによって上方向に一気に突き上げられ、 相次ぐ余震により、横に揺らされて傾いたようです。
電柱の根元の色が違うので、ここまで液状化によって上昇したというのも考えにくい現象です。


本屋がずれた高床住宅
一回目の本震の突き上げにより、瓦を葺いた本屋ごと上に突き上げられ、 2階の柱と縁が切れ、相次ぐ横揺れにより屋根が1m程右に振られたと考えています。
軒桁の継ぎ手は伝統的な継ぎ方ではなく、「カマ継ぎ」となっていたので、 桁が外れやすく、 柱も「短ほぞ」で桁を化粧とする為、V金物で接合していなかったのが命取りとなったようです。
長ほぞ差し+込み栓打ちとすればよかったのかも知れません。

「中引き」も用いていないようで、中引きと梁を交互に上下に交差させる事で、縦揺れにそなえることができます。
伝統構法では、難しい梁と中引きの交差を、根曲がり材を使用することで実現していました。








無事だった建物

同じ高床式の住宅で本屋が瓦屋根でも、異常のない建物もあります。
「中引き」が設けられていた建物で、おそらく梁は丸梁で、中引きと直行しているようです。
このように施工(木組み)をちゃんとしてやれば、崩壊せずに済んでいます。
表面だけを真似するのではなく、伝統構法をよく理解した上で建てなければ意味がありません。



無事だったM邸
多くの建物が崩壊している中、新築中だったM邸は無事に姿を保っていました。



ガレージ
ガレージの木組みはしっかりとしていました。
独立基礎に固定された柱と土台もほとんどズレていません。



通し貫(ぬき)
通し貫の栓も緩んでいませんでした。


上の下屋が狂っていなかったので、壁として十分な役割を果たしていたようです。
この通し貫にこまいを組んで、土塗り壁を施工すれば、耐火性能もでてきます。
築40年くらいで、土塗り壁に瓦屋根の建物が倒壊していましたが、伝統工法に精通していない設計士やシロウトが見ると、

   「土塗り壁+瓦は地震に弱い

と、直ぐに誤解してしまいますが、40年位前の建物は、通し貫で施工していなかったようで、
(通し貫といっても18ミリくらいの普通の貫では役には立たないです。30ミリ以上は必要。)

   伝統工法でなかったから倒れるのは当たり前

というのが、私の考えです。
実際、小千谷周辺の80年以上経った伝統的な家は崩壊に至っていません。


和室
1階和室では、積んであったグラスウールが転がっていました。
確かに地震があったようです。
それ以外は異常は見当たりません。



居間
1階居間の床に、立ててあった脚立が転倒していました。
材料も崩れています。



大黒柱
居間の大黒柱に刺さる横架材の仕口は全く無傷で、くさびや栓も寸分も動いていないようです。
樹齢300年の大黒柱がこの家を守ってくれたのでしょうか?


台所
脚立が倒れています。
それ以外は地震の前と同じです。


台所の天井
天井の木組みはまったく狂っていません。
合わせ目もスキがありません。
和室を取り囲むサシ構造から四方に伸びる梁組みがガッチリと家を守っています。





割れたガラス
階段室の出窓のガラスが足場に当り、割れています。
建物は丈夫でしたが、足場は踊っていたようです。




下屋
下屋の上に設置した足場も何度か揺れて、屋根のカラーステンレス鋼板を傷めてしまいました。
外壁を収める前に貼りなおす必要があります。



小屋組み
小屋の木組みは全く異常がありません。







ズレたボード
横積みされていたボードが30センチほど横にズレています。
相次ぐ横揺れによってかなりの重量があるボードが動かされたのです。


小千谷市総合体育館
窓から見た総合体育館です。


全国的に有名になってしまいましたが、この中で避難されている方々が生活しています。
地震の前はほとんど車が止まっていなかった駐車場が満杯です。
早く地震が沈静化し、普通の生活に戻りたいところですが・・





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10月23日夕方6時数分前、新潟県小千谷市を震源とする中越地震が発生しました。長岡市では震度6弱の地震が15秒間続き、相次ぐ大きな余震により被害が拡大しました。...

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地震直後の様子(乙吉町) ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 22:37:48 | 新潟県中越地震
平成16年10月23日夕方6時数分前、新潟県小千谷市を震源とする中越地震が発生しました。
長岡市では震度6弱の地震が15秒間続き、相次ぐ大きな余震により被害が拡大しました。
乙吉町は山沿いで被害が大きく、崖が崩れ道路が寸断されていました。



崩壊した道路
現場へ上るふもとの道路が山崩れによって寸断されています。
舗装のアスファルトが割れてめくれ上がっています。








横ズレした道路
坂の途中で道路が1m以上横にスライドしています。
道路の側溝は直線だったので、側溝の差の分だけ移動したことがわかります。
この地盤に亀裂が入り、山全体が動いたようです。





倒れかかった建物
地面の亀裂の上に建っていた家が、傾いています。
地震で傾いたというよりも、地山自体が崩落したため、傾いているようです。
今年は長雨が続いた為、地盤が崩れやすくなっていたのも原因のひとつのようです。



寸断された仮設道路
7・13水害で現場へ通じる道路が寸断されたときの仮設の道路が、このたびの地震で再度寸断されてしまいました。




崩壊した道路
地崩れによって道路や周辺の土地が崩落していました。
もう、道路がどこにあったのかということすら分りません。




亀裂の入った道路

道路に亀裂が入り、いまにもずり落ちそうになっています。
余震や土砂崩れが懸念されます。
側溝には地下水がいきよいよく流れ始めていました。
危険な状態です。



崖沿いの建物

基礎の直下の地山が崩れ、危険な状態の建物です。
すでにこのあたりには避難勧告が出されています。



傾いた建物
この建物も地崩れの部分にあり、家全体が左に傾いています。



建築中のS邸
亀裂がわずか数十メートルのところで止まり、地山崩壊から難を逃れていました。
ほとんど無傷の状態です。
ポーチ柱の根がアンカーで止めていなかった為、揺れて衝撃を緩和したようです。
アンカーで固定していたら柱の途中で亀裂が入っていたかも知れません。




ポーチ
ポーチ部分は全く損傷がありません。
左官屋さんがタイルを貼る予定でしたが、 貼らないうちに地震があったので良かったというところです。
おそらく、タイルに損傷があったことでしょう。



玄関
玄関の壁にヒビが入っていました。
石膏ボードの継ぎ手の部分の表具にヒビが入っています。
他の被災した建物でも同じようにヒビが入っていましたが、ここは被害が少ないようです


居間
脚立が倒れています。
居間の壁の仕上は石膏ボードで、お客さんが珪藻土入りの壁材を塗る予定でしたが、 ボードを止めるビスはしっかりと止まっていて、ボードの継ぎ目は浮いていませんでした。


居間の天井
居間の天井は構造材が露出していて、損傷しているかどうかが直接確認できるのがいいところです。
木組みがしっかりしていて一分のスキも無く、込み栓やくさびが一つもゆるんでいない状態で、割れも入っていませんでした。



和室
和室に運んであったお客さんの荷物や道具が散乱しています。
確かに、大きな地震があったのが分ります。



台所
台所も殆ど無傷です。
システムキッチンの引出しが飛び出していた程度で、壁や天井の表具に異常はありませんでした。
街中の被災現場よりもいい状態です。


子供部屋
2階の子供部屋です。
全く異常はありません。


物入れ
立て掛けてあったベランダ手摺の材料が倒れています。
押し入れボードが傷ついているので貼り替える必要があります。


ホール
2階のホールです。
木組みが露出していますが、やはり異常はありません。




仕口部分
梁の仕口部分と込栓は損傷は無く、ゆるみもありません。


外部の様子
外壁にも全く異常は見当たりません。
通し柱に土台を差すことで、ガッチリと基礎に固定されていたようです。





通常、隅柱にホールダウン金物を付けますが、小国町ではホールダウン金物の所で基礎が割れてしまった所もあったそうです。
引き抜きにコンクリートが耐え切れなくなってしまえば、ホールダウン金物の意味がありません。
金物に頼ることで、かえって基礎を弱くしてしまっているのではないでしょうか?
現在の建築基準法では一箇所の壁がどれだけの荷重に耐えられるかという考えなのに対して、 伝統構法は建物全体の木組みで地震や大風等の横揺れに耐える「総持ち(そうもち)」の考えで、 個々の接続部分は込み栓やアンカーボルトで十分なのです。

日本の伝統文化と西洋の科学万能文化の差が出てきているような気がします。

地震により自信がつきました。




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地震直後の様子 ~新潟県中越地震

2024-01-26 22:13:54 | 新潟県中越地震
平成16年10月23日夕方6時数分前、新潟県小千谷市を震源とする中越地震が発生しました。
長岡市では震度6弱の地震が15秒間続き、相次ぐ大きな余震により被害が拡大しました。



  朝のスーパー
地震の次の朝、食糧を調達しに24時間営業のスーパーへ行ってみると、
多くの人たちが殺到し、すでにおにぎりやパン、水が売り切れていました。
レジは大人数をさばききれない状態です。







  ずれた棟瓦
長岡の中心部は比較的被害が少なかったようで、
屋根の棟瓦がずれた程度です。



  電気の復旧作業
電力の復旧が比較的はやくすすみました。 一晩中、停電により真っ暗な状態でした。
震度5を越す余震が何度も襲い、
建物の中は揺れて危険なので、車の中で一晩を過ごしました。




  崩壊した鳥居の撤去
町内の神社の石の鳥居が崩落し、危険な状態でした。
落ちた瓦礫に当たって、車の窓ガラスが割れたそうです。
人身事故にならなくてよかったというところ・・




 斜めに傾いた店舗
中心街の建物です。
1階部分が広い空間で、2階が重く、更に瓦屋根だと、
1階の壁が少なく、このように傾いてしまっています。
この建物は更に地盤が沈下し、右に傾いて危険な状態です。







  段差のついた道路
山側の道路は殆どこのように陥没したり隆起したりして、
路面が割れたり起伏をしています。
特にマンホールが突き出している場所が多く見られます。
ひどい所は1mくらい路面より突き出している所もあります。







  亀裂の入った土間
被害が大きかった中沢町のお客さんの家です。
ポーチ柱が束石から外れていたので、ジャッキアップし、元に戻した直後です。
ポーチより土間が離れてしまっています。
建物自体は、ベタ基礎だったので無事でしたが、
基礎から縁が切れているところは、モルタルが割れたりしています。







  倒壊した建物
同じく中沢町で、倒壊した建物です。
土塗り壁で瓦屋根の場合、屋根の重さの揺れを支えきれず、
倒壊に至る建物も少なくありません。







  崩壊した道路
山の中腹の住宅地へ行く道路が分断されていました。







  横にずれた道路
この道路はもともとまっすぐだったのですが、左からの山崩れによって寸断され、
下の道路が右にスライドした状態です。
側溝は一直線でした・・




  倒れかけている家




  寸断された道路
7・13水害によって流された道路の仮設道路はすでに亀裂が入り、分断され、
更にその奥に行く道路も崖崩れにより形がありませんでした。







  亀裂の入った道路
このように亀裂の入った道路がめずらしくありません。
特に山側の道路はほとんどといっていいほど亀裂が入っています。







  崩壊寸前の建物
崖崩れにより、基礎から傾いている建物です。
このあたりは避難勧告が発令され、住民は避難場所へ避難しています。








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床が盛り上がる~木造の傾向 ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 22:00:46 | 新潟県中越地震
新潟県中越地震では、木造の床が盛り上がるという現象が多く見られました。




度重なる余震
余震による横揺れにより、木造の家屋が何度も横にゆすられます。
横にゆすれると、外側の基礎に力がかかり、沈下を起こします。

家の真中の基礎はほとんど揺れないので、沈下がほとんど起りません。
 

不等沈下による支障が起る

外側の基礎が極端に沈下する為、外周の土台が下がり、柱も下がります。
家の真中の基礎はそのままの高さなので、真中と外周に高低差が生じます。
その結果、家の真中の床が盛り上がる(外側が下がる)ことになります。

建具の敷居や鴨居も外側が下がる為、建て付けが悪くなってしまいます。

床下をのぞくと、外周部の地盤が下がるため、真中と外周部の中間や基礎の周辺で地割れが見受けられます。


 

極端な不等沈下が起るために、家のあちこちで建具が動かなくなったり、床が傾いたりといった支障が出てきます。
特に、田んぼを埋め立てたような軟弱地盤で被害が著しくなります。

これを直すには、外周部の土台を上げてやるか、真中の土台を下げてやるかの対応をする必要があります。


 

布基礎の場合、外壁を外して土台のアンカーを緩めてジャッキアップする必要があります。

1階が畳部屋の場合、畳をはいで、荒床を取れば土台の調整が容易に出来るので便利でした。
外壁を解体する必要もなくなります。
フロアー貼りの場合、床板をはぐと、再利用できない為、新たな床板を貼る必要があります。


水害の場合も、フロアー貼りの床は解体、復旧が困難でしたが、畳の場合、解体も復旧も容易に出来ました。
合板床は濡れるとふやけてしまいますが、荒床も乾かせればもとに戻ります。

地震、水害復旧の点で、古来の畳床は優れた構造だといえます。



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鉄骨造の場合 ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 21:44:10 | 新潟県中越地震
新潟県中越地震では、鉄骨造も影響を受けていました。





    鉄骨造の傾向
鉄骨造の場合、基礎と斜材に影響がありました。

  1.基礎が破断した
        鉄骨の脚を固定しているコンクリート基礎が破断していた。

  2.斜材が破断した
        2次部材である斜材(ブレース)が破断していた。

    また、建物全体の揺れがひどく、長岡市内の体育館等は被害があったようです。
避難場所となっていることが多く、避難した人たちも揺れにより不安がっていたようです。

水銀灯等の上部に吊るしてある物の落下の危険性があります。


〇軽量鉄骨の天井が落ちた
中越沖地震のケースですが、公共建築物の天井が落ちたという事例があります。

「軽天材」と呼ばれる薄肉のC型チャンネルを組み合わせた天井下地の場合、ビスや金物で固定していない吊り部材が外れて、石膏ボードを張った天井下地がバッサリと落下してきました。
東日本大震災でも同様の事例が確認されているので、こういった場所で地震に遭った場合は天井に気を配る必要が出てきます。





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鉄筋コンクリート造への影響 ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 15:45:16 | 新潟県中越地震
本震による下からの突き上げが
鉄筋コンクリート造の建物にどういう影響を及ぼすのか?


新潟県中越地震では、山古志村や川口町で起きた直下型の本震の際に下から突き上げられる現象が起きました。
能登半島地震でもそうでしたが、地震の直後に海岸線が後退し陸地が隆起したのを見ると、大地震を繰り返して山が形成され、日本列島を形作ってきたのだと実感します。
「横揺れ」も激しいものでしたが、「縦方向の突き上げ」も大きなエネルギーを持っていると思われます。

エネルギーは質量に比例するので、重量のあるものほど突き上げのエネルギーも大きくなります。
木造もコンクリート造も例外はありません。


    鉄筋コンクリート造の構造




長岡市街の鉄筋コンクリート建築物は、建物の重量を支える為に、安定した硬い地盤まで杭を打ち込んでいます。
昔は、鋼管杭を打ち重ねているだけで、杭と杭同士は固定されず、上からの重量を押さえるだけの構造となっています。

長岡市街地の地盤は4~10mで、比較的浅い場所まで杭を打てばよいことになります。
3mの鋼管杭ならば2~4本で到達できます。

ただし、硬い地盤は地震の振動を直接伝える為、コンクリートの弱い部分に被害が集中することとなります。




1.本震による突き上げ効果(予想)

一回目の突き上げにより、重い物ほど上へ向かうエネルギーがかかります。
コンクリートの建物自体が空中に飛び上がる可能性が出てきます。(数センチから数十センチか?)

鋼管杭の場合、土中の杭同士は固定されていないので、コンクリート部分と鋼管杭の間に隙間ができます。




2.余震による横揺れ

度重なる余震により、まわりの土や砂が液状化を起こし、基礎や杭の隙間に入り込んでいきます。
また、建物の周囲の土間などの隙間から液状化した砂が噴き出してきます。

最終的には建物の周りの土間の下に空洞が出来て、陥没していきます。
ここにガスや水道の配管があった場合、破損してライフラインが止まってしまいます。




〇建物周辺の陥没
一般にコンクリートの基礎はしっかりしていると言われています。
建物周辺の地盤が液状化を起こし、地盤が下がったと言われていますが、砂地でない場所では液状化は起こりにくいと考えられます。
基礎自体が浮き上がり、空洞化した部分に土砂が入り込んで、周辺の土間が陥没したと見ています。




 

 

    ベタ基礎の場合

小千谷市内のベタ基礎コンクリート建築物で、その重量を支えきれずに不等沈下を起こし、斜めに傾いているものが見られました。
田んぼを埋め立てた場所なので、砂質土の土壌が液状化を起こして傾いたと考えています。




外観

震源地に比較的近い小千谷市の集合住宅です。
外見は何もないように見えます。




〇基礎の周辺
建物の近くに来ると、基礎の周りが極端に沈下していることがわかります。
この建物は一方向に倒れていて、住民も生活に支障があるとのことでした。




ベタ基礎は重量のある建物で背が高くなると重心が上になる為、傾きだすと支えきれなくなります。2階建てくらいだったらよかったかもしれません。

高床木造住宅の場合、上部の構造が軽い為、背が高くても重心が下になります。




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瓦への影響 ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 14:45:19 | 新潟県中越地震
新潟県中越地震では、ほとんどの瓦屋根が影響を受けていました。その傾向をまとめてみます。


   瓦屋根の構造



瓦屋根は平瓦(ひらがわら)が瓦桟(かわらさん:木製)に針金で固定され、降った雨が屋根にもれていかないように、 下から上へ重ねられていきます。
平瓦の波のへこんだ部分を雨水が流れるような構造になっています。
瓦と瓦は単に重ねてあるだけで、固定は瓦桟に針金で固定しているだけです。

棟瓦(むねがわら)は、瓦を何重にも交互に重ねて、雨水の浸入防止に備えています。
雨漏りのほとんどは、この棟瓦の雨仕舞の不備で起ります。
上部は針金を交差させて固定していますが、針金の取り付け部は、モルタルで押さえつけてある場合が多いようです。



瓦がくずれるメカニズム

中越地区のあちこちで、瓦屋根への影響が出ています。
その状況を調べていくと、共通点のあることに気が付きます。




1.突き上げ

一回目の突き上げにより、重い物ほど上へと飛ばされます。
平瓦は上部の部分を瓦桟(木製)に針金で固定しているため、下の大部分が空中に飛び上がります。

棟瓦は、瓦桟に針金で結んであれば、固定されますが、モルタルのみで固定されているセメント瓦は セメント部分で縁が切れ、全体が上部に飛ばされます。



 

2.余震による横揺れ

度重なる余震により、不安定な部分が崩れていきます。
平瓦同士がこすれ合って、破損します。

棟瓦もモルタル部分で縁が切れ、横ズレしていきます。




長岡地域では山に沿って直角に揺れた為、山に対して平行の屋根は棟瓦がずれ、
山と直角な屋根は鬼瓦が落ちていたケースが多かったです。

棟瓦にすかしを入れて多重に串瓦を上げて葺いてあるものは、見た目は良かったのですが、崩れやすくなっていました。
 

一般に瓦屋根は地震に弱いという傾向がありますが、よくみてみると、葺き替え時のセメント瓦が影響を受けていました。
葺き替えたばかりの焼き瓦は、棟瓦が桟にしっかりと固定していた為、ほとんど影響を受けていませんでした。

しっかりとした施工をしていれば、被害は最小限に食い止められます。



〇風の強い地域での「土葺き」は屋根を重くして地震時には脆弱になる。
阪神淡路大震災の時は、屋根瓦の下に土を葺き、全体の重さで台風に耐えるような施工をしていたようです。
また、風の強い海岸沿いでは強風に耐えるように「土葺き」を採用していたようです。軽い鉄板を施工した場合は吹き飛ばされたり、塩害を起こすため、材料としては瓦を選択する必要があります。
耐風性を重視した瓦屋根で、更に土葺きをした場合は屋根の重量が増すため、地震時には不利に働きます。
屋根を支える下階の耐震性を高めておく必要があります。


耐震瓦
新潟県産の安田瓦の施工組合は、中越地震の教訓を活かして「耐震瓦施工」に切り替えています。
瓦を針金で固定するのではなく、瓦桟に瓦を直に釘で打ったり、棟串瓦の施工前に鉄の心棒を設置してから棟瓦を積んでいく方法が採用されています。

中越地震以降に施工した物件は、その後「中越沖地震」「東日本大震災」「能登半島地震」を受けていますが目立った被害はありませんでした。

瓦は耐久性が高い
地震に弱い印象のある瓦屋根の家ですが、能登半島地震の映像を見えていると屋根自体は損傷していない家が多かったように思えます。
2階建ての瓦屋根の家屋の1階が崩壊した家が多くみられたのは、「新潟県中越沖地震」の店舗型の建物が崩壊したケースに似ています。

1階の耐震性能を高める事で、地震に強い建物を実現できるはずです。
映像には映らなかった被害の少なかった建物を調査する必要もあると思います。

焼き瓦の屋根は一度葺いてしまえば、耐久性はほぼ永久的です。
破損した場合は、その部分を交換するだけで済むので経済的でもあります。
何と言っても日本の景観にマッチして美しい街並みを形成できるのが一番の魅力だと思います。



耐震瓦施工をしている中越地域の復興型建物




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盛土の崩壊 ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 14:00:19 | 新潟県中越地震
山沿いの道路や住宅で地割れが発生し、盛土部分の崩壊といった現象が多く見受けられました。




1.斜面の形成

 地面は普通、硬い地山部分に粘土質のやわらかい層が堆積し、 その上に植物により形成された表土が覆っています。
 斜面のままだと利用するのが困難なため、平らな部分を作ってから基礎や舗装をする必要があります。




2.斜面の開発(切土、盛土)

 山の斜面を切り開く場合、硬い地山を掘削するのは困難なので、 なるべく柔らかい粘土部分を掘削(切土)し、 出た土を下の斜面側へ盛り上げる(盛土)作業をして、 平らな面をつくります。
 この平らな面を利用して、道路や宅地、農地を作ります。




3.本震による突き上げ

 10月23日(土)午後5時58分の本震は川口町を震源とした造山運動による突き上げで、 小千谷方面(北側)で23センチ上がり、小出方面(南側)で9センチ下がりました(国土地理院発表)。
 この突き上げの効果により、硬い部分と柔らかい部分の縁が切れて、不安定な状態となったと考えています。

 盛土部分と地山との間の縁が切れて、滑りやすい状態となります。





4.余震(横揺れ)

 本震も含め、震度5を越す余震が何度も襲い、その横揺れで不安定な部分は崩壊し、 表面には地割れが発生します。
 盛土部分全体が斜面を滑って崩落に至ったところもあります。






〇地崩れの復旧

大規模な地崩れを起こした場所は、通常の造成レベルの小規模な地盤補強工事では、再び大地震が襲った場合に安全かどうかは、不安な要素があります。
崖地と同様の「アンカー工事」を行った例もあります。擁壁と土中にアンカーを横に打ち込むため、コストがかかるのが難点です。

場合によっては、被災した土地の放棄も視野に入れる必要があると思います。

高台で見晴らしの良い場所は、地山を削って盛り土をした外周の場所である可能性が高いため、土地を購入する際に昔はどんな場所だったのかを把握しておく必要があると思われます。




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マンホールが飛び出る ~新潟県中越地震のまとめ

2024-01-26 10:37:42 | 新潟県中越地震
新潟県中越地震では、道路のマンホールが飛び出る現象が多く見られました。



マンホールの構造
マンホールは下水管の中間地点にある点検口で、コンクリート製の円柱が、何重にも積み上げられ、 最後に鋳鉄製の蓋が載せてあります。
一番下部に排水の流れる水路があり、ここに横から塩ビ製の管を差し込んでいます。

配水管とマンホールの周りは砂で埋められ、道路の表面付近で、砂利が敷かれ、アスファルトで舗装してあります。




1.突き上げ(予想)

新潟県中越地震では、本震の際に上方向への強い突き上げがありました。
突き上げにより、重い物ほど上へと飛ばされる傾向にあるので、マンホールの場合は、コンクリート製の重い円柱が、上に突き上げられたと考えられます。
突き上げられた部分と、下部の部分が分離され、ここが空洞となり、周囲の土砂が入りやすくなります。





2.本震と余震による横揺れ

新潟県中越地震では、山古志村と川口町を震源とする本震が3回あり、更に余震が一晩中続きました。
度重なる横揺れにより、まわりの砂が液状化を起こしたと考えられます。
配管の隙間やコンクリートの中空部分に砂が流れ込んで行きます。

流れ込んだ分だけ、上の道路が下がります。
マンホールの周辺の道路が下がっているのはこのためと考えています。







〇排水設備がマヒする

マンホールが破損すると、各家庭や公共施設で排出される汚水が末端の処理施設へスムーズに流すことが出来ず、排水設備の使用が困難となります。
インフラ整備で最後に復旧されるのが下水道配管ですから、それまでは仮設の設備を併用する必要も出てきます。

液状化を起こして下がっている道路面は、掘削して配管を直さないと、道路内で逆勾配になって排水に支障を及ぼします。
特に、山沿いの道路や田んぼ道の下水部分が沈下しているのを見受けました。

市街地から離れた部落の場合は、配管距離的に長くなってしまい、市街地よりも復旧費用が割高になるので、農村部や山間部の下水施設は考え直す余地があると思います。
各村落で独立した処理施設を設けるか、各家庭に合併処理槽を設置した方が良いのかも知れません。

ただし、合併処理層の埋め立てには周囲に砂を使うので、地震時の液状化の問題が残ります。
施工をしっかりとするか、合併処理槽の再敷設を考慮しておくかです。






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