住みこみ*著書:『住みこみ』(2007年/ラトルズ刊) 戸田家の一年を写真とエッセイで綴った本のタイトルです。

人の暮らしは時間と共に変化します。それを調整しつつ自在に手を入れられる、ゆるやかな設計を心がけています。

流れ

2015-10-12 02:29:57 | 建築設計

京都南禅寺界隈(眼下に見える煉瓦造りの建物は発電所)

現在進めております住宅は京都府にあります。

通常の打ち合わせであれば朝事務所を出ればその日のうちに事務所に戻れますが、打ち合わせの時間帯や、打ち合わせが長丁場になりそうな時、また体力がきつい時などは宿泊をします。今回は久しぶりの宿泊でした。と言っても観光の予定があるわけでなく、何度となく訪れている「無鄰菴」のある東山近辺の散策に向かう。

 

右手は京都佳水園のある都ホテル

目黒美術館で9月まで開催していた「村野藤吾の建築」展でも模型が展示されていた、ウェスティン都ホテル京都佳水園のある蹴上付近にあるレール。【蹴上(けあげ)は階段の垂直部分の呼称でもある】インクライン(傾斜)とよばれ、船ごと台車に乗せ、人や荷物を載せたまま京都・大阪まで運ぶというプロジェクトの名残のレールでもあり、現在は遊歩道になっている。また並行して開発した水路は「琵琶湖疏水」とよばれ、舟運、発電、灌漑、飲料水、防火などに使われた。

この水はまた南禅寺の水路閣、哲学の道へと分水する。

 

船溜まりとよばれる場所。運んできた船を降ろす場所である

琵琶湖より流れる水は琵琶湖疏水より平安神宮、円山公園、洛翠荘や一部個人邸に取水される。

この琵琶湖疏水の完成に関わった山県有朋の「無鄰庵」にも取水され、現在の流れのある池泉回遊式庭園が生まれる。個人邸としての取水は初めてのケースだそう…

取水口の付近、この飛び石の手前に三段式の滝組があり、豊かな水量は池へとそそぐ。この「無鄰菴」は7代目小川治平衛(植治)作庭で、豊かな流れと躍動感のある自然な景観はあたかも大自然の中に身を置いているような錯覚にとらわれる。植治が作り出す流れと植栽と地形と建物のリズムが心地よく、いつしか時を忘れてしまう 

お抹茶を頂きながら、ひとり豊かな時を過ごさせていただきました。

このあともスケジュール追われることなく、心の趣くままにただ一人歩いてました。いつしか気持ちはバックパッカーをした20代の頃に戻っていたのかもしれません。