住みこみ*著書:『住みこみ』(2007年/ラトルズ刊) 戸田家の一年を写真とエッセイで綴った本のタイトルです。

人の暮らしは時間と共に変化します。それを調整しつつ自在に手を入れられる、ゆるやかな設計を心がけています。

装飾とプロポーション

2009-10-19 02:21:07 | 建築

(正面の壁紙は、ペイントをシルクスクリーンの様に塗布して色づけされているモノ。一枚一枚に表情がある。プリントではない)

建築設計の仕事をしていて毎回思うのであるが、工事に入った当初は慌しさのまま、数週間が過ぎ、工事中盤に差し掛かり、現場が急に水を打ったように、落ち着く事があるが、それは工事が中断しているわけではなく、”動と静”で言えば”静”、「嵐の前の静けさ」なのである。ただし現場では”静”でも、水面下(各工場)では着実に進められている。優雅に泳いでいる鴨の、その水の中の足は思いっきり”動”なのといっしょ!(違うか・・・)

サーファーの家(仮称)は今まさに”動”の時!完成に向かってまっしぐらなのである!


(左/工事中の現場に扉を運び込みました 右/枠廻りと家具を一体的に造作中) 

10月9日ブログの続き 今日は リフォームについて -プロポーションとバランス編-をお話します。

新築・リフォームの如何に関わらず、古いもの・・使い込まれたモノを、空間に取り入れたいと私のところに設計の依頼に来てくれる人が少なくない。今回のお宅も、新築だけどリフォームとちょっと複雑ではあるが、その中にイギリスから海を越えてやってきたアンティークの扉があった。

多くの年月を越え、世界の三大銘木 のひとつといわれるマホガニーの無垢材を惜しげも無く使い、さらに何層にもペイントを施されたその扉は、一種異様とも言える存在感を放っていた。それを空間に納めるにはどうしたらよいのか?工事の早い段階で現場にその扉を運び込んでもらい、その場所にあわせては眺め、時にスケッチの繰り返し、その扉を感じる事からはじめた。


(枠と家具の造作中。形といっしょに陰影もデザインしているつもり・・・)

この扉を一般的な厚みが25mmぐらいの枠にはめ込んだらどうでしょう?この場合、枠が扉に負けてしまうと言ったらよいのか、扉だけ浮いちゃって見えてしまいます。枠からも空間からも、確実に・・・
そこで扉にあわせ枠廻りと、その横の家具を一体的にデザインしました。一般的には”モールディング”にあたるのかも知れませんが、いわゆる”飾る”発想ではない。それは”装飾”じゃあなく”プロポーション”だと思うのである。今回のこの枠廻りは、扉を納める事には必要不可欠であるとさえ思うのである。(ただしこの発想、解釈を換えて扉を使用するときは除きます!わたしの中でも・・・)

(廊下から見たリビングの扉と枠)

空間に合わせ、廊下側とリビング側で枠廻りのデザインを変えました。そしてもうひとつ、忘れてはいけないのが質感。扉のペイントを意識しながら、枠にペイントを塗りこみました。実は枠廻りのペイントだけですごい手間が掛かっているんです・・・それでも扉の年月の重みに負けそうでギリギリの感じでした。塗ってる本人が言ってるから間違いありません。


(ドック入り)

今回、ガスリーズハウスの協力でこの扉を探しあてました。古いモノはメンテナンスが不可欠。丁寧に修復してくれました。極力時代をあわせ、同材で修復してくれるのも塩見さんのすごいところ!

そして余談ですが、仕事仲間でもある塩見さんのガスリーズハウスで、一日だけのマーケットがあります。こちらは予約は必要ありませんので、行ってみてください。

第二回 ガスリーズ・マーケット(2009)
http://blog.livedoor.jp/guthrie/archives/51558816.html

=戸田晃建築設計事務所=

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