五明得一郎／ものづくり中部の革新者たちⅢ

2022-10-19 06:40:36 | ものづくり・まちづくり

ものづくり中部の革新者たちⅢ　より　五明得一郎を紹介します。

去る2022（令和４）年９月10日（土）に名古屋都市センター（金山南ビル内）　11階「まちづくり広場・企画展示コーナー」で行われた、第17回パネル展での学びを振り返ります。

ここから　http://csih.sakura.ne.jp/panerutenn.html

今回は、五明得一郎　技術勘の良さは抜群　航空機産業の花形技術者一 　

ものづくり中部の革新者たち Ⅲ

2.技術の革新者 (6)

■その生涯
五明得一郎は、 1899年に名古屋市中区で、五明良平 (愛知時計電機の創立者)の次男として誕生した。愛知第一中学から第八高等学校を経て、京都帝大の工学部機械科を1924年に卒業し、同年、愛知時計電機に入社した. 五明は同社の航空機部門を終戦まで担当した。 1943年の愛知航空機設立時には、取役技術部長に就任した。
終戦を挟んで、軍用機の生産に特化していた愛知航空機の民需転換という大きな仕事を任される。紆余曲折を経て、 1949年に、愛知機械工業が創立されると、代表取締役に就任し、ジャイアント号の生産で自動車産業への参入を果たし、 1965年2月まで社長として難しいかじ取りを行った。
社長退任後は、相談役として勤め、名古屋商工会議所の機械器具部会長として、中部の産業全体の底上げを図ることに心を砕いた。 1983年暮れに逝去
した.

■設計から生産管理まで熟した実利重視の技術者
名古屋人らしく、良い意味の非常に確実で、模範的な仕事の進め方をした人であった。航空技術者には珍しく、機体の設計、技術部長として現場の監督、機体製作の管理まで行った稀有な技術者
であった。
設計した多くの飛行機は、海軍の爆撃機が大半を占めていた。
五明氏の名声を高めたのは、急降下爆撃機の設計で、日本で初の実用的な機体を設計した。理論的な感性と、天性の感とでも云うべき見識を持って設計に臨んでいた。解体強度を理論的に考え
て、海軍の提示していた弱い強度基準値を無視して、数倍の強度をもって計算を行って設計し、急降下という過酷な条件下での爆弾の投下を成し遂げる機体を作り上げた。著名な機体は、「九九式「艦上爆撃機」である。非常に優秀な九九艦爆と、高い技量を持つパイロットのコンビネーションで命中率80%を超え、太平洋戦争の諸戦では、思う存分に活躍した.
九九艦爆の後継機は、資源が少ないという点から雷撃、急降下爆撃を一つの機体の設計に要請された。雷撃は、水平爆撃であり、急降下爆撃とは機体の強度計算上大きな相違があるが、この非常に厳しい要求を満たして実用化し、「流星改」として採用された。愛知航空機は、終戦前に、大規模な爆撃を受けて壊滅的な打撃を受けた。受託生産も行っていたが、空技廠で、設計した「彗星」は、理論で設計した機体で、構造が複雑すぎて、生産することに困難な点が多かったので、実用的に生産をするという観点で、全面的に設計見直しを指示した。常に、非常に実利的な面を重視していたので、設計の時点で、航空機の生産を念頭に置いた設計を行っていた。

海軍の内部不調整の結果ともいえる無理な仕様に対しては「できないものはできないと」意見を言う程の確固たる意志を持った人であった。
杉山一郎

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