国宝仏像随一の美作、模刻しふるさとに展示 京都・向日

2017-03-06 19:31:59 | 創 creation
 京都府向日市寺戸町にあった寺院に55年前まで安置され、国宝の木彫仏像の中で随一の美作として知られる「宝菩提院菩薩半跏像(ほうぼだいいんぼさつはんかぞう)」の模刻像を横浜市の彫刻家が彫り上げた。精緻な造形と自然な人体表現が融合した実物を忠実に再現した。4日、向日市文化資料館で展示を始め、制作で得た知見を講演する。

 宝菩提院は、奈良時代以前の白鳳時代に建立され、菩薩半跏像を本尊としていたが、1964年に廃絶。寺宝は62年に京都市西京区の勝持寺へ移り、後に堂舎も同寺の隣接地で再建された。

 同館によると、菩薩半跏像(座高約90センチ)は東京国立博物館の国宝展で紹介されるなど高い評価を受ける一方、制作の年代や場所、宝菩提院への来歴などは謎に包まれているという。

 模刻像を作ったのは中村恒克さん(30)。東京芸術大の大学院博士課程に在籍していた2015年冬、卒業制作として完成させた。

 大学1年で実物を見て生々しい造形表現に感動したという。現地調査でレーザー光線を使って3次元計測し、図面を作成。特注の彫刻刀を用いて細密な模様を彫り込んだ。準備から完成まで2年余りを要し、「自分の原点となる作品。この頑張りを今後も思い返していきたい」と語る。

 向日市文化資料館では30年前、市史刊行記念で実物を展示。玉城玲子館長は「向日市の宝が、地元を離れたことを残念がる来館者がいた」と振り返る。仏像の足跡をたどって市内を訪ねたこともある中村さんから模刻像完成の知らせを受け、同館が展示を依頼した。

 4日は中村さんが菩薩半跏像への考察を記念講演する。用いられた様式などから唐の技術者が深く関わったと考えられるといい、「国際色豊かだった時代の息吹を感じてもらえたら」と話す。

 展示は同館特別展の一環で26日まで。市文化資料館TEL(931)1182。

【 2017年03月02日 10時17分 】



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