歌人・辰巳泰子の公式ブログ

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赤まんまの覚え歌(43~82)

2012-11-24 21:30:24 | 日常
長歌レシピの短歌(反歌)だけ、残りさらに、40首。

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酒粕を焼いて食べたと母のいうその声はずむ下戸なり母は

冷蔵庫ない時代のひとが鍋を置くひんやりとした冬の足元

くしゃくしゃの新聞紙を乾かして濡らした菜をば包んで仕分け

蒟蒻はたとえばざらざらまとめ役 因果関係いわない父は

一人勝ちにしてはよくないと誰か言えり食べてもらえぬこともあります

せんせいの手はあたたかい小二生叱りすぎたる次に来ていう

電光の下に買い来し芹なれど挿しおく水になお繁りゆく

子供のころ眉の産毛を剃り落とし笑われたっけ独活って綺麗

椀のなかつかず離れずただようはわかめと独活と僕らのこころ

間に合わぬことなくてうれし少しずつ煮返してゆく朝のぬくもり

たのしきは春山菜の七変化 街は水仙咲きそろう頃

返信のバイブレーションそののちをレモンの雨が降り注ぐよう

空手空拳つくづく技もなきわれへ素直にひらかるる貝のくち

円盤や櫛の歯形やロケットがはつ夏のうえ たけのこ不思議

働いて無性に蛸を食べたがる母と暮らしている独りもの

おんかぼちゃべろべろまっかマントラの古家守れ遠い丹波の

いつのまに吾子にあなたと呼ばれいて変わらないものじゅんさいの味

あるじはうまいがひねくれ者ですと器の 底の冬瓜がささやいた

食べさせるための工夫をするまえに忙しそうな様子やめよう

水団そっくりわたしの手こねうどんよりここは機械に勝たせてやろう

牛しゃぶのスープを濾してブイヨンにマトリカリアが笑って見てた

飛行機のブーンのときの歓びをひさびさにその場しのぎのお菓子

ごんという淋しいきつねの忘れ物おいしいねって聴こえるようにね

文句タラタラ醤油たらたらさしあたり矛先の消えて忘れのご飯

まだ何か欲しい自分を片付けて具なし焼きそば一人たのしむ

熱帯夜やはりの硬さと言わせない冷たいおかずのためのひと手間

誰だってしていることを取り立てて特別ぶるから素敵なんだよ

おかあさん 地震怖いね 洪水も ご飯食べたら お布団にいこ

舶来金魚次々咲かせ朝顔の市が浮かんできょう空心菜

おさかなの骨がいやだという子にはこれが氷下魚とおだし飲ませる

天ぷらに中濃ソースが合うらしい韓流ドラマのなかにいたひと

ひとしきり夜なべのことは終うなり椿落ちゆくごとき眠りへ

還れないわかき兵士を水葬のくらげそのとき踊りしという

うしろめたい人らには疎まれるでしょわるいことなにもしない君ほど

自分にてんで要らないオプションとは何か買えばサラダに教わるごとし

果物ナイフの背がよしねっとりするどく明太子絞るその薄皮を

ああこれぞ白いご飯を甘くする教えたくない漬物レシピ

淋しいカレーぐっと華やかにしてくれた炙っていれたいか一夜干し

おかあさんはねぎらうことがうまくなくホイップクリーム泡立て始む

大事なことしゃべっちゃいけないひと日終え戻りてほっと三温糖

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ここまでで、82首。
ラスト18首は、未明のアップとなるでしょう。

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