大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

英保守党、最低賃金を5年で1420円に引き上げると発表

2019年10月08日 | 経済

 2019年9月30日、イギリスのジャビド財務大臣は保守党大会で、現在25歳以上で8.21ポンド(1110円:1ポンド=135円)となっている最低賃金を5年以内に10.5ポンド(1420円)引き上げると発表した

 また、イギリスでは現在、21歳から24歳までの最低賃金は7.7ポンド(1040円)となっているが、ジャビド財務大臣は21歳から24歳の最低賃金も5年以内に10.5ポンド(1420円)に引き上げるとしている。

 ちなみに労働党は2019年初めに、2020年に最低賃金を10ポンド(1350円)に引き上げることを公約している。


米失業率、50年ぶりの低水準

2019年10月06日 | 経済

 2019年10月4日(金)、9月の米雇用統計が発表された。

 日本のメディアでは、雇用者数の増加(13.6万人)が市場予想(14.5万人)を下回ったことが強調されているが、アメリカのメディアでは失業率(3.5%)が50年ぶりの低水準になったことを見出しにするものが多い。

 平均時給は前年比2.89%と昨年8月以降はじめて3%を下回った。

 ただ前に書いた論文で明らかにしているように、過去3回の景気拡大期における平均時給の伸び率は平均でそれぞれ3.3%、3.2%、3.1%。

 インフレ率が2%を下回っていることを考えれば、2.89%はそんなに悪い数字ではない。

 絶対的な水準としてみれば、9月の雇用状況は利下げが必要となるようなものにはみえない。

 ただ少し気になることもある。

 前回の景気後退(2008年1月~)では、その半年ほど前に失業率、平均時給、長期失業者数など多くの指標がピークアウトし(悪化に転じ)ている。

 いまアメリカでは失業率は改善が続いているが、長期失業者数、平均時給などは数か月前につけた最高値から悪化が続いておりピークアウトが疑われる状態になっている。

 問題はこの先、失業率などほかの指標もピークアウトしていくのか、あるいは平均時給や長期失業者数がふたたび改善に向かうのかである。

 米雇用動向に注意していきたい。

 


ISM製造業指数が50を下回った

2019年10月04日 | 経済

 アメリカの景気動向をうらなう先行指数としてISM製造業指数ISM非製造業指数がある。

 これはISM社がアメリカ主要企業の購買担当者などを対象に、販売(出荷)、雇用、新規受注などが先月からどの程度変化したかをアンケート調査して算出するもの。

 この数値が50だと企業の経済活動がこれまでと同じ水準にあることをしめし、50をこえると拡大、50未満だと縮小しているという意味になる。

 ところで今週、この数値に警告サインがともった。

 ISM社は2019年10月1日(火)、9月のISM製造業指数47.8%となり、2か月連続で50を下回ったと発表した。

 ちなみにISM製造業指数GDP成長率には相関関係があり、ISM社は9月の指数から想定されるGDP成長率を1.5%としている(この指数が42.9%以下になるとマイナス成長になるとされる)。

 ただしアメリカではGDPに占める製造業の割合が11%程度まで低下しており、サービス業などの重要性が高まっている。

 その動向をはかるのがISM非製造業指数である。

 ISM社は2019年10月3日(木)、9月のISM非製造業指数が先月より3.8%も減少して52.6%になったと発表した。

 まだ50は上回っているが、市場予測(55%)を大きく下回る結果となった。

 ちなみにこの数値もGDP成長率と相関関係があり、ISM社はここから想定されるGDP成長率を1.4%としている(この指数が48.6%以下になるとマイナス成長になるとされる)。

 こうした発表をうけアメリカでは利下げ期待が一気に高まっている。

 今日の夜に発表がある米雇用統計の結果に対する市場の反応が注目される。


シカゴ連銀総裁、年内利下げを否定

2019年10月01日 | 経済

  2019年9月25日(水)、シカゴ連銀のエバンス総裁は今年はもう利上げはないとの見通しを明らかにした

   米連銀(Fed)の金融政策を決定する公開市場委員会(FOMC)の定員は12名。現在は二人の欠員があり10人体制となっているが、そのうちの一人がエバンス氏。

   9月のFOMCではボストン連銀のローゼングレン総裁とカンザスシティー連銀のジョージ総裁が金利据え置きを主張して利下げに反対票を投じており、エバンス氏をくわえるとFOMCの10人中3人が利下げに反対の立場ということになる。

   なおFOMCには投票権を持たない地区連銀総裁も出席し議論に参加している。このメンバーをくわえるとFOMC参加者は現在17人

   9月のFOMCではこのうち 5人が年内1回の利上げを、5人が年内金利据え置きを予想しており、年内利下げを予想するのは7人にとどまっている

   投票権のある10人中5人はトランプ大統領が任命した者で利下げ志向が強い者が多いと思われるが(とくに最近任命された者)、雇用や株価が好調を維持するなか年内に再び利下げがあるのかどうか注目される。

 

2019/10/5追記

 上記の発言のあと、ISM製造業景況感指数などに景気悪化を示唆する結果があいついだ。しかし、エバンス・シカゴ連銀総裁は2019年10月3日、ブルームバーグとのインタビューで、まだ利下げが必要か確信に至っていないと述べた。

 なお同じインタビューでエバンス氏はインフレ率の低迷に懸念を示し、一時的にインフレ率が2%を超えても問題ない(インフレ目標の一時的なオーバーシュートの容認)との発言も行っている。