美術の学芸ノート

中村彝などの美術を中心に近代日本美術、印象派などの西洋美術の他、つぶやきやメモなど。

読めない崩し字を読む方法(続き3)

2019-04-08 11:43:00 | 日本美術
「読めない崩し字を読む方法」などと大げさなタイトルを付けたが、要するに文字以外のヒントを自分なりに見つけて解を得るということでしかない。
 
いつもここでやった手法が通じるとは限らない。たまたま答えが見つかることもあるということだ。
 
今回、試しに図像を検索してみたら、ヤフーオークションに同じような人形が出品されているのを確認した。
 
そして、そこでも「山」の次の文字は読めないと書いてあった。「庭の」に相当する最初の2文字については何も触れていないし、写真からどんなふうに書いてあるのかぼやけていて読み取れなかった。
 
とにかく大事なことは、その崩し字が、どのように崩されてしまった文字なのかどうかを探ることである。つまり、解を得た後に、その崩し方の痕跡を探ることである。
 
その崩し方が、標準的なものか、あまりに我流過ぎるものなのかどうかを見極めることである。
 
これなら読めなくて当然だと自分を納得させられれば、それでいいだろう。
 
ひえつき人形は、今も地元に行けば売られているのかどうか、それはわからないが、昭和30年代から40年代にかけては盛んに売られていたのではなかろうか。私の家に見捨てられてあった、このブログに掲げた写真の人形も昭和40年代くらいのものではなかろうかと思う。
 
今回、崩し字の勉強に使って、これが宮崎県のひえつき節に基づいて作られた図像を持つお土産人形だということが改めて分かった。
 
私が幼い耳で聞いた「庭のさんしゅうの〜」は、三橋美智也や美空ひばりの声なのかどうかどうかまでは覚えいない。ただ、その最初のフレーズとメロディは耳に残っている。
 
彼らが新鮮な勢いで活躍したのもそのころだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

4月7日(日)のつぶやき

2019-04-08 03:32:49 | 日々の呟き
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読めない崩し字を読む方法(続き2)

2019-04-08 02:19:00 | 日本美術
着物姿の女性、杵を持つ、鈴に関連するをキーワードにこの女性を探っていくと、彼女は、宮崎県椎葉村の民謡ひえつき節に唄われている鶴富姫であることが次第に分かってくる。
 
鶴富姫と那須大八の逢引のサインに使われたのが正にこの鈴なのである。
 
庭のさんしゅうの木 鳴る鈴かけてヨーホイ
鈴の鳴る時ゃ出ておじゃれヨー
鈴の鳴る時ゃ何と言うて出ましょヨーホイ
駒に水くりょと言うて出ましょヨー
那須の大八鶴富おいてヨーホイ
椎葉たつ時ゃ目に涙ヨー
 
 
元はひえつきの労働歌であり、男女の営みを示す際どい唄でもあったものが、平家の落人伝説を取り入れたものに変化してよく知られた民謡となったものらしい。
 
そんなに古い民謡ではない。三橋美智也や美空ひばりも唄っている。そう言えば、私が子供のころの耳にも、「庭のさんしゅうの木〜」というメロディが聞こえていた。
 
そして、正にこの最初のフレーズがこの鶴富姫の足元の臼に書かれている崩し字だったのだ。
 
上手く画像検索できた人なら、このひえつき人形と同類のものを見出すことができたかもしれない。その中には、こんなに崩されてしまった文字でなく、もっと楷書体に近い文字が臼の上に書いてあるものを見つけることができたかも知れない。
 
私が写真提示した臼の上の崩し字は、人形職人によってかなり我流に崩されてしまったものと思う。従ってこの人形に書かれている崩し字が読めなくともそれほど悲観する必要はない。
 
ただ、答えがわかったあとなら、なるほどこんな風に崩れてしまったのかということの合理的な痕跡は認められよう。例えば、最初の一文字のしめすへんのように見えるのは、庭の广であり、えんにょうの痕跡もほんの僅かに見えている。ただし山椒の椒(桝)は、極端過ぎるほどの我流と言ってよいものだろう。その部分、州という字を当てたようにも思われるかも知れないが、それでもやはり我流に過ぎるものだろう。
 
しかし、いずれにせよ、これで人形職人が書いた文字、書こうとしていた文字は、読めたことになる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする