彝没後の翌年に開かれた遺作展に出品された洲崎義郎蔵の作品は、当時の目録によれば、66点中17点もあった。
今村繁三蔵は、同じく11点、伊藤隆三郎蔵は9点であったから、3人のコレクターの中で最も多く出品したのは洲崎の作品だった。
しかし、洲崎の彝所蔵品は、今村と伊藤の所蔵品に比べるとその質がやや低いと評価されることがあるが、本当にそうだろうか。
今村の所蔵品は前回のこのブログ記事で示したが、伊藤の所蔵品はまだだったので、先ず出品された伊藤隆三郎のそれを一覧で列挙しておく。
11 ステーションの雪
12 友の像
15 少女裸像、大正3年
19 少女
22 裸体習作、デッサン
26 大島風景、パステル
33 庭の一隅、パステル
51 水浴の女
53 椅子によれる女
上記のうち、特に注目されるのは12,15,19,53だろう。(51は、プラド美術館にあるルーベンスの有名な「三美神」の向かって左側の女性裸体像を自由に模写した小品である。作品に書かれているR.はルノワールを意味するものではない。)
これらは、いずれも人物画であり、15と19は俊子を描いた作品と考えられる。
伊藤隆三郎は、彝の人物画の秀作を比較的多く所蔵していたのではなかろうか。
もし、高島菊次郎の彝コレクションが伊藤隆三郎から多くを買い取ったものとするなら、さらに、伊藤は、回顧展図録3の「読書」、11の「少女習作」(現在、横須賀市美術館蔵)などの人物画も持っていたわけで、伊藤隆三郎の彝コレクションの特徴は人物画の秀作にあったと言ってもよいかもしれない。
さて、洲崎義郎所蔵品の出品された17点は以下の通りである。
10 ダリヤ
27 大島風景
28 大島の椿
29 静物
30 自画像
35 苺
37 ダリヤ
38 鳥
40 平磯海岸
41 平磯
42 目白の冬
45 庭の雪
46 洲崎氏の像
47 自画像
54 庭園
55 庭の一隅
57 静物、パステル
ここから見ると、洲崎のコレクションには彝の自画像と、自身の肖像画を除いて、人物画は比較的少なく、静物画と風景画が多い。(続く)