五十の山と風を豊に和む

EKIDEN、TRIATHLON、TRAIL-RUN、SNOW-SHOES、春夏秋冬、海や山のレースに挑戦中!

志を高く

2005-07-18 10:28:55 | 成人の主張
昨日、バイク50キロ、ラン16キロの練習をした。
ハードだったけれど程よい疲労感、達成感を味わった幸せな一日だった。
けれど、今日の僕は、半端じゃなくハードな一日を過ごすことになった。

朝から仕事だった僕は、川の河口でイベントの準備に取り掛かり、本番をむかえた。
スケジュールは順調に進み、11時半を回ったその時だった。
一台の救急車が我々のイベント会場に舞い込んでくる。
会場の誰もが呼んだ覚えはないと言う。
初めは、誰かのいたずらかとそう思った。

その瞬間、猛スピードで一台のヘリコプターが河口の対岸まで飛んでいく。
海上保安庁のへリだ。
100人いた関係者全員が凍りつく。
イベント会場は、川の河口。すぐ先は、海だ。
イベントの内容は、海の日にカヌーやヨット、クルーザーを解放し、近隣住民に楽しんでもらおうというもの。
もしや、「海難事故」
ヨットの転覆か?戦慄が走った。
ヘリコプターが現場に到着した後、ホバリングしている辺りに、消防車、救急車が次々と向かっていく。
関係車両は、7,8台になっただろう。

情報が入ってくる。
(その時点では)地元の中学生が海水浴に来ていて、誤ってテトラポットに挟まり行方不明になったらしい。
捜索が始まる。
我々のクルーザー、スティンガーも応援に行き、捜索を手伝う。
僕は、会場に残り、上司に状況を連絡していた。
午後の部の事業続行を断念し、事態の沈静化を見守る。

時刻は12時半を回った。
同僚が、事故現場まで車を出して欲しいと言う。
現場まで2、3分で到着。
ヘリの巡回するけたたましい音、30人ほど集まった警察官、消防署員、海上保安官、ウエットスーツを身に纏ったレスキュー。
現場は騒然としていた。

僕は、海水浴中に溺れ、行方不明になった彼を、一刻も早く見つけるべく、地元の漁船に乗り込んで捜索の協力をする。
海水は濁り、視界80センチ、1メートル下が見えない。
風があり、波がある。
波しぶきを浴びながら、ほんのわずかな手がかりも見逃すまいと目を凝らして波間を見回す。
岸には、中学校の関係者が集まってくる。
時刻が2時半を回った時、状況は一変した。

レスキューが遺体を発見した。彼を、消防署のボートが引き上げる。
中学生だ。
心肺蘇生が行なわれた後、彼は担架に乗せられて、消防署員に囲まれて救急車まで運ばれていく。
泣き崩れる人がいる。
中学校の教頭が、関係者を集め、事態の状況説明を行なう。

そんな中で、知っている顔が。
職場の後輩だ。
彼が、中学生たちを連れてきたらしい。
彼は、現実を受け入れまいと必死でこらえていた。
僕は、彼に、「あまり落ち込むなよ」と声を掛け、元のイベント会場までもどった。
彼は、泣き崩れうずくまっていた。

亡くなった彼は、部活の後輩であり、僕はOBだった。
僕も中学のころ海でよく遊んだものだった。
僕にとっても、決して他人事はなかった。

志半ばで不本意な死を遂げた彼のこと、
後輩を海に連れ出し、後悔の念にさいなまれている職場の後輩のこと、
大切な息子を失ったご両親、家族の事を察すると、僕は頭が痛くなり、しばらく、めまいを感じていた。

帰宅した僕は、気を落ち着けるために、いつも夕日を眺めている浜まで、自転車を走らせた。
15分で到着。夕日と夕日に照らされる海を眺めながら、親子のキャッチボールやボディーボードを楽しむ若者の声に聞き耳を立てる。
僕は心を整理していた。

明日、僕だって命を落とすことはあり得る。可能性はゼロじゃない。
甘えや妥協や言い訳は、決して自慢できるもんじゃない。
この日、人の生き死にを目の当たりにした僕は、彼の分まで、もっと強く、志を高く生きなきゃならないと思った。

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