ご無沙汰致しておりますうちに季節はもう秋ですね。9月は長月、その由来は長夜月、長雨月のようですね。
さて、何度か書いていますが、啄木について今一度記して終章とします。
この夏また、蔵書の一冊「文藝」(臨時増刊・石川啄木読本、昭和三十年三月)を取り出して下記の文を発見しました。
(発見と申しましても何分古い本ですので、昔読んでいながら忘れていたのだと思います。)
「啄木の短歌には二つの世界がある。その一つは明星のロマンチシズムである。名高い『東海の小島の磯の』の歌はそのいい見本である。
この歌は全くの作り物である。東海も、小島もカニも、すべて彼の頭の中にだけあるものである。これは晶子の家の歌の会で、蟹とゆう字を題に出されて、その字を歌の中に読みこむために作ったものである。
それはその会に居合わせた平野萬里さんの話である。それにしてもこの歌は美しくて、おもしろい。」
これは「啄木私見」と題した兼常清佐の文中の一節です。私はこの人を知らなかったので、早速ネットで検索すると、山口県出身の音楽学者で、とてもユニークな人であったようです。
その後しばらくして、湘南啄木文庫の佐藤氏よりEメールを頂きました。
啄木研究家の井上信興氏の新著「野口雨情、そして啄木」のご紹介も頂きました。早速、佐藤氏を通じて購入しました。
井上氏は広島在住の医師で、啄木研究家であり啄木関係の著書も8冊に及びます。私は氏の著書に接するのは本書が初めてです。氏は啄木の「東海歌」に関しては、その原風景を「大森浜」とされています。入念なる考証をもとに、とても説得力のある文章です。啄木がこの歌を何処で詠んだのかは別にして、その原風景は?ということになると、やはり氏の仰る通り函館「大森浜」だろうと私も納得するに十分でした。
井上氏は86歳のご高齢ですが、啄木への情熱止み難く研究、執筆活動を続けておられるということです。機会を得て是非お目にかかりたいと思っています。また大森浜も大間海岸にも訪れてみたいと思うこの頃です。
お陰さまで生活のリズムが戻り、記したいことは山ほどあるのですが、秋は講演、研修等の日程が詰まっており少しせわしく過ごしています。
また早い機会にお目にかかりましょう。ごきげんよろしゅう。