蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロース神話学第3巻「食事作法の起源」を読む5

2018年11月04日 | 小説
(11月4日)
前回投稿(11月2日)の図1を説明します。
前回は本書(l’origine des manieres de table)の掲載図を写真に撮った原文です。項目を訳し投稿子の解釈も付加し、掲載しました。原図を参照されたい方は前回投稿を開けてください。

図1 モンマネキの世界、大中小の3角が意味する自然と文化の相克。人間界はその中央のわずかな空間(赤丸)にやっと生き延びられた。

読み難いのですが小写真で原図を添付します、図2。

図2は前回投稿と同じ。参考にしてください

図の表題はstructure des mythes a la pirogue celeste(天をかけるカヌー神話の構造)となります。これまで天かけるカヌーを紹介していないが、太陽神(魚の創造者)は天を周回するが同伴者(舳先に座ってオールを漕ぎバランスを取る者)を求め、とある男が拾われ「神が魚を造る作業を目撃した」神話からこの表題をとった。(なお太陽神のこの漁を図でpeche angelique天の漁としている)
図1は3重の三角形で構成される。外側三角の左には近すぎる結婚、右端に遠すぎる結婚の特異点がある。モンマネキが人としてはじめて娶った嫁(上下分離、経血を常時垂れ流す型)は近すぎる結婚の典型である。この嫁は規則遵守の公徳心で人として至らない、魚を毎日大量にとるのは特技だけれど、毒(経血はそのanalogie類似)流しの漁労とは乾期のある時期、年に一回だけとの決まり事がある。その上「女だてらに」漁労にいそしむ(南米千住民では漁は男の仕事)。それを無視してか知らずにか、毎日大漁を続け(これが内三角の悪の漁peche diabolique)、モンマネキ母に禁忌違反に気付かれて、追いだされた。

この嫁取りのまえに彼は4例の異種婚(カエル、地虫、鳥の2種類)を経験している。地に這う2種は近すぎた婚姻、空を飛ぶ鳥は遠すぎる。故にモンマネキは失敗したと神話は語っている(なお、レヴィストロースの解釈は4種とも「異種」で遠すぎるとしている)「麗しのアサワコ神話」で遠すぎて結婚できなかった例をあげている。
遠すぎもなく、近すぎる間でもない婚姻とはなにか。これがmariage bien mesure(三角形の頂点)で、直訳すると上手く(距離が)計測された結婚。本書は神話を通して計測された結婚は何かと語っていない。そうした神話を採取できなかったからであろう。ゆえに頂点につながる辺は波線となる。頂点を投稿子は「規則のある婚姻」と訳した。では結婚の規則事とはなにか。

本神話学シリーズ一巻の「生と料理le cru et le cuit」48頁を参照すると(図3);
Bororo族の村落概念図である。南北にcera部、tugare部と2分割され、真ん中が男小屋でこれも2の部を反映して分割されている。4の支族が円周上に居住する。婚姻規則とはcera部bokodori支族の男は円心を挟んだ対心に位置するarore族の女としか結婚できない。男女を逆にしても婚姻の規制は「対心」、他の支族にしても対心の支族としか通婚しない。
ここでの婚姻は一支族としては族外婚exogameであり(同じ支族の婚姻は規則破り、交合は近親姦で禁忌)対心の部族とあわせては族内婚endogameとなる。2の部を集体とした族としてBororoは族内婚である。

図3 ボロロ族の村落。8の支族が円周で配置される。婚姻制度と関連を持つ。生と料理の48ページ。

また世界、多くの民族で実行される交差イトコ婚についてレヴィストロースは「親族の基本構造」の中でこれは「女を仲介にした富のやりとり」との説を述べている。これも風習ではあるが、制度(富の交換)に絡めれば社会規則と言える。
Bororo族の婚姻にしても交差イトコ婚にしても、婚姻に周期性periodiciteを取り込む機能は明瞭である。Bororoでは同一の村落内での嫁選び、距離としては近いけれど社会の制度(村落の構成)を婚姻と重ねた規則とすれば、周期性を確保できる。

ここで周期性periodiciteを考えてみよう。
再生産性である。期待する事態が再発生しなければ周期は消える。結婚の再生産とは子息子女が必ず婚姻の相手を相手側に見つけられ、女(男)の交換で得られることで、これによって同盟を維持できる。
それは分断である。先住民の神話は太陽と月の周期が欠ける日夜を描くが、それは昼の連続で人は熱さに苦しむか、夜だけの世界で寒冷と怠惰、己が垂れた糞を踏みつける暗黒のつながりと描写されている。日夜の交代で熱気(あるいは寒冷)が周期的に分断される。天文が周期を確保する世界が文化を安堵した。

図1に戻る。規制の無い自然な世界では近すぎる(近親姦)あるいは遠すぎる(行きずり)の両特異点と、それらを連綿としてつなぐ連続した(これが自然界)婚姻なので、周期性すなわち再生産性を確保しない婚姻である。自然婚姻の連続性に割り込んで(預言者であるモンマネキの母)婚姻、生活、漁労に周期を確保して人間社会(humanite)を創造する努力、その叙事をモンマネキ神話と、派生する太陽神話などが描き、レヴィストロースが図1に集約している。

レヴィストロース神話学第3巻「食事作法の起源」を読む5の了
(次回投稿は11月6日予定)

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