蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 上

2024年03月15日 | 小説
(2024年3月15日)レヴィストロース « Mythologique » 神話学第三巻
食事作法の起源L’origine des manières de tableの紹介をYoutubeに投稿しています。最新は3月4日投稿の「La femme de Lune月の嫁」。ここでは食事作法が語られますが、同時に周期性を意識した物語となっています。第6部Balance Égale「数あわせ」(267~310頁)に移り、「数え方と周期性」の神話群が紹介されます。神話学紹介ではYoutubeにまず動画投稿の順番でしたが、今回から部族民通信の原点とも言えるGooBlogに投稿してのち、動画を作成すると換えました。
「数あわせ」神話群の共通主題は:序列と数量の特異点 « Plénitude » (意味は充満、達成だが特異点と訳す)を人々が目指す。10進法であれば10番目と10の数量(兄弟であり姉妹、族民の集合体など)。この10とは « la notion décade suggère la plénitude » 10の概念は特異点を示唆する288頁。これを達成し世界を変える先住民の意欲を神話に託しています。そして10に到達すると何らかの行動に入る。必ず「破滅」を伴いその族民は消えゆく。そして別の民が再び10を目指す。この繰り返しが周期性を生む。
代表的神話を引用:
M476 10の兄弟10の花嫁Fox族の伝承;
Le Benjamin de 10 frères part à la recherche d'une flèche perdue. Il reste 10 jours en chemin et reçoit chaque nuit l'hospitalité d'une famille qui lui offre une fille en mariage. « D'accord, répond-il, mais je n'ai pas le temps. Je passerais la prendre au retour » Il met ainsi une réserve, d'abord une femme, puis 2, puit 3. Jusqu'à 9. Parvenu au terme du voyage, il en obtient une 10e qu'il emmène. En revenant sur ses pas. Il lui joint successivement. la 9, la 8, etc. (289頁)


Fox族とされる人々(画)、ネットから採取

Benjamin (10人兄弟の末弟) に課された義務は「失われた魔法の矢」探し出し戻ること。探査に10日、帰還に10日の期限が認められた。一日探して近くの村に宿を借りる、宿先では主人に見込まれ「娘の婿に」を申し入れられる。Benjaminの答えは必ず「かたじけないお申し出、しかるにそれがし今は流浪の身、魔法の矢を探し出さねばならぬ、探し見つけた暁の帰り道には必ずや立ち寄ろう」これを10夜繰り返し、ついに魔法の矢を見つけ出し、帰り路は行きの逆で10掛けて10の嫁を引き連れて村に凱旋した。
引用神話では「10」が繰り返し出現する。10人兄弟、探索に10日帰還に10日、10人の娘、10人の夫婦。いずれの10も達成した後、世界を変える行動に出る。末子が成人して9が10の兄弟になって、10日を掛けて矢を探し10日で戻る。その間に10人の花嫁を連れて戻る。人々は10を見極め、その次に求める数は11、12に進まない。もう一つの10を目標にする。10と10との邂逅ではかならず闘争に陥る。引用神話では兄弟間の闘争、(皆は嫁をもらって家族になったはずだが)内輪もめで10の家族が崩壊する。
なぜ末子は他9人の恨みを買ったのか?


Fox族の居住地。5大湖の近く、今のシカゴ近辺だろうか(図はブリタニカ百科事典、ネット採取)

10の娘を10の兄弟にただ振り分ける作業では10 対10が成立しない。娘たちは出自家族がバラバラなので10人揃えても10の単位(特異点)を形成できない。このところをレヴィストロースは « paraître l’un après l’autre, et être présentes en même temps » 順々に現れるだけでなく、同時期に共にいなければーが10人組を形成しない。そこで末子が嫁に迎え彼女らを « totalisation » 10の単位に統合して後、兄弟で分ける。バラけている10を10人一組に集合化しなければ10兄弟と対抗できない « Elles ont d’abord été totalisées par un des frères, qui procède plus tard à leur détotalisassions » 。長兄には最も年上の老嬢(demoiselle trop âgéeドゥモアゼルトロパジェ) を与え、次兄にはその次と嫁を振り分け, 自身にはもっとも若く見目の良い娘(belle fille charmanteベルフィーユシャルマント)を残した。この采配は10単位の通則=序列の原則=、これが10と10の邂逅そのものだが、結局は兄達に嫉妬を引き起こす。長兄に率いられた9兄弟は末子を殺した。
これで ; 9という数字は不完全で、10を希求する。末子がようやく成人し兄弟10人が揃い « plénitude » 充満の特異を迎え、10人嫁が揃い新たな世界が発生した。にもかかわらず序列則(序列数字=後述)の理が災いして世界が崩壊した。10は永遠を保証せず破滅する。そして新たな10が生まれる。これを「数合わせ」Balance Egaleによる周期性とレヴィストロースが指摘する。
次回は本章の主題(周期性)を語るに欠かせない「数進法」に入ります。
食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 上 の了 (3月15日)
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