鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

家紋散し図太刀鍔 Tsuba

2015-08-04 | 鍔の歴史
家紋散し図太刀鍔


家紋散し図太刀鍔

 糸巻太刀拵に装着されている鍔。古典である平安時代の毛抜太刀やその後の毛抜形太刀、あるいは兵庫鎖太刀に装着されていた鍔を祖形とし、中世末期あたりからであろうか、装飾性が加わり、殊に金と黒の構成美に優れた造り込みとなった。趣味の長い方はもちろんご存知と思われるが、太刀鍔は本体を挟み込むように大切羽が備わっており、さらに小さな切羽をこれに加えて用いている。つまり写真は、本体に大切羽が重ねられ組み込まれている状態である。地面は真黒な赤銅魚子地で家紋を高彫に表わし、四方に猪目を構成して総体を天地左右に広がる葵木瓜形としている。この耳が金色絵で頗る鮮やか。しかも大切羽の耳も金色絵で二重の耳になっている。極めて簡潔な構造だが、二枚が重ねられている点においても立体感が強く示されて複雑に見えてくる。装飾性において良く考えられていると思う。