鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

唐花文図鐔 応仁 Onin Tsuba

2020-12-10 | 鍔の歴史
唐花文図鐔 応仁


唐花文図鐔 応仁

真鍮という合金はとても製造しにくいそうだ。以前にも説明したが、真鍮は銅と亜鉛の合金である。合金とは二つ以上の金属を溶かして混ぜ合わせることによって造り出すのだが、銅の融点は約1085度、亜鉛の融点は約420度、そして亜鉛の沸点が約907度。銅が溶け出す前に亜鉛が気化してしまうのである。単に溶かして混ぜ合わせるのでは銅と亜鉛の合金はできない。昔の人々が、いかにして真鍮を造り出したのかは、難しいので説明は省くが、我が国では真鍮を造り出せなかったのではないだろうか。それゆえ、大陸から輸入した真鍮素材からなる器物は高く評価されていた。室町時代に中国から輸入していた真鍮製の器物に宣徳の製作年紀があったことから、真鍮製の器物を宣徳と呼び慣わしたという。その名残りがあり、江戸時代の鐔に「以宣徳金」の添銘がある作も遺されている。
 真鍮を用いた装剣小道具は室町時代に始まる。応仁鐔が真鍮を用いた鐔として良く知られている。鉄地を薄手の板鐔に仕立て、文様を陰に透かし、その縁取りとして真鍮の線象嵌を施し、地面には魚子のように真鍮の点象嵌を施す。

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