武蔵野図鐔 三題
『続古今和歌集』に、源通方の「武蔵野は月の入るべき峯もなし 尾花が末にかかる白雲」がある。これを本歌とりに、江戸時代につくられたのが「武蔵野は月の入るべき山もなし 草より出でて草にこそ入れ」
すすき野に沈む月を描いた作品が間々みられ、この図が大いに好まれたことが判る。古くからの東国の印象を、江戸時代においてもこのように表現していたのは面白い。
起伏のないススキ原といった景色を想定しているようだ。朧銀地に銀の平象嵌で三日月を描き、ススキは片切彫。図の下端に月を描いている。
亀眼の鐔は鉄地高彫、満月を同様に下方に描いている。
友直の鐔はススキのみの描写のようだが、鐔の外形が満月。耳に金覆輪を施して月の印象を高めている。