和歌の浦図二所 春明法眼
歌枕として遍く知られる和歌の浦。
万葉歌人山部赤人の「若の浦に潮満ちくれば潟をなみ 葦辺をさして鶴鳴きわたる」を琳派の美観で表現したもの。
裏板の描写もとても緻密。平象嵌と毛彫が活きている。
和歌の浦図二所 春明法眼
歌枕として遍く知られる和歌の浦。
万葉歌人山部赤人の「若の浦に潮満ちくれば潟をなみ 葦辺をさして鶴鳴きわたる」を琳派の美観で表現したもの。
裏板の描写もとても緻密。平象嵌と毛彫が活きている。
野々宮図鐔 山崎派
光源氏に別れを告げる六条御息所。『賢木』から取材している。象徴的な人気のない質素な鳥居と源氏の車のみを描いて留守模様。『源氏物語』でも装剣小道具に好まれて採られている場面。
光源氏「暁の別れはいつも露けきを こは世に知らぬ秋の空かな」
六条御息所「おほかたの秋の別れも 悲しきに 鳴く音な添へそ野辺の松虫」
赤銅魚子地に綺麗な高彫色絵表現。
住吉図鐔 西垣勘平
松、鳥居、波、三つの要素で住吉大社。この松は雌雄一体となった相生の松。古くから知られており、住之江は歌枕とされている。住吉では定家の次の歌が有名。これを意匠化したのが肥後の西垣。肥後西垣派らしい簡潔な鉄地毛彫地透。
藤原定家
「あいおいのひさしき色も常磐にて 君が世まもる住吉の松」
秋草図小柄笄(目貫と三所物) 信壽
金無垢魚子地高彫に置金だろう。贅沢な造り込み。夏から秋にかけての華やかな植物を題に得ている。素材の持つ風合いも加わっていかにも夏の熱気が感じられる。裏面にも薄手ながら高彫が施されている。
群馬図小柄 古川常珍
片切彫を得意とした常珍による、激しい動きが表現された馬の図。表はもちろん裏面まで、同じ調子の片切彫で表現されている。
これも表裏関係ないほどに精巧に描写されている。
牡丹に獅子図小柄
濃密な金無垢地高彫表現の牡丹獅子の背景には銀地に片切彫で牡丹図。同じ彫口で裏面にまで牡丹を彫り表わしている。表の金を活かすような巧みな構成。
盆踊り図小柄 浜野矩随
夏の夜の一場面。裏面には回り灯籠(回り提灯・走馬灯)。季節感が良く示されている。朧銀時に毛彫と赤銅の平象嵌。表の喧騒とは異なる、静けさが感じられる描写とされている。
豆撒き図小柄 仲上元次
節分行事として知られる豆撒き。鬼が御福の面をつけて豆を食おうとしている。退治される側の鬼が、福豆を食おうとしているのだ。巧みな彫口で滑稽な場面を活写している。裏面はしめ飾りを、これも片切彫。
二雅図小柄 堀江興成
梅に椿の採り合わせで二雅。正確できれいな彫口からなる。裏面は簡潔な片切彫で御簾。『源氏物語』の一場面を思わせるような構図。
水辺風景図小柄 加賀金工
多彩な色金をもちいて平象嵌と毛彫で彫り表わすを得意としたのが加賀金工。先に紹介した小柄よりも、より濃密な平象嵌と言えよう。裏面は片切彫による水辺の風景。これも充分に表の図柄として通用する。
月に臥龍松図小柄 加賀金工
加賀金工による平象嵌の表現は特段に優れている。繊細な線描写と平面の組み合わせは、拡大鏡を使っての鑑賞にも耐え得る。加賀金工の高彫表現は比較すると少ないが、優れた作品もある。さてこの小柄は裏面に平象嵌を用いている。ここまで描くと裏面とは思えない。充分に小柄の表の図柄である。
蓬莱図小柄 上杉有恒
鳥の図を得意とした金工。表には亀の棲む島を描いて、裏に鶴。即ち蓬莱島。表は魚子地高彫仕立てで、裏にも精密な片切彫。裏の鶴は、これだけでも一つの作品になるほどの出来と言えよう。裏板の装飾にとどまらない。
立鶴図小柄 安達幽斎
片切彫平象嵌の技法が得意な金工。特に激しい動きのある人物図に優れた技術を示している。その技法を鶴の生態に会した作。裏面下方に描かれているのは何だろう。
長坂坡図小柄 熊谷義之
劉備を逃すため、追跡してくる曹操を趙雲が長坂坡で迎え撃つ、といった場面か。主題の表の図を背後に連続させているのだが・・・こんな表現もありか。敢えて裏を左右においてみた。