酔漢のくだまき

半落語的エッセイ未満。
難しい事は抜き。
単に「くだまき」なのでございます。

酔漢の中の蕎麦

2013-02-21 08:20:31 | もっとくだまきな話
There was a road along a small river in the city of Edo.
A Mujina lives there.


憶えておられますでしょうか?
中学3年の英語の教科書「New Prince」の最後に掲載されていた「Ykumo koizumi」作「KAIDAN」の中「MUJINA」の冒頭です。
このストーリー「ムジナ」が登場いたしますが、一般に言われるところの「のっぺらぼう」の事です。
そば屋に扮した「ムジナ」が出てまいります。

休み。
独り暮らしは5年でした。
藤沢市のアパートにおりまして、午前中は洗濯の時間でした。
家事は苦になりません。
料理は案外得意分野ですし、アイロンがけとか掃除とか。
日ごろ使う事のない頭と身体を動かすことは、楽しみでもありました。
ある日、親父から電話があって・・・・。
「おう!久しぶりだな」
「親父、いきなり・・・何?」
「お前今から東京まで来ないか?」
「親父来てたのか!行くよ暇だし」
と神田で待ち合わせをいたしました。
「そばでも食うか?」
まてよ、この台詞。聞いたことがあるぞ!
思い出しましたのが、原田芳雄さんの台詞。
「ツィゴネルワイゼン」の中のワンシーンです。
「お前、藪・・知ってるか?」
「そりゃ、落語やってたわけだしね。『神田藪そば』知らなかったらもぐりでしょ」
「行くか!」
酔漢、二つ返事。
「ざるそばと天ぷら」(所謂天ざる)を注文致します。
中から声が聞こえます。
注文の品を、厨房へ伝える際のあの独特の歌のような響き。
この音がありませんと、ここに来た楽しみが半減されます。

蕎麦は、更科とも違う、一・二番粉ブレンドの独特な歯ごたえ。
そして、この蕎麦の歯ごたえを引き立てるそばつゆの風味。
おそらく、長野や山形へ行けば、他の味も楽しめる。
こうは思うものの、やはり「神田 藪そば」の味は、この店だけのものです。

冒頭の写真は、「まつざき」君から拝借させて頂きました。
2011年の様子のものだそうです。
この重厚な建物も風情がございます。

「落語 そば清」(そばせい)。
この落語。酔漢の好きな噺です。
落ちのシュールなところは秀逸。
さて、この落語。ネタを掛ける噺家さんが最近少ない。
残念です。
果たして、演じておって難しい。
そばと大食い選手権を一緒にしたような噺ですから、そばを腹いっぱい食べていくことを表現しなくてはなりません。
「志ん朝師匠」のもいいですし、当然「志ん生師匠」のは絶品。ですが、この噺を一番表現できたのは「金原亭馬生師匠」のもの。
ここにご紹介いたしましょう。
約28分あまりの落語です。
お時間、ございますれば一席おつきあいの程を!



もちろん、あの有名な「時そば」は、皆様ご存知かと思います。

親父がなくなる丁度1年前。
山形へドライブへ行きました。
大石田へ。
あるそば屋が目的でした。

「そば清」(そばきよ)。
落語の題名と漢字では同じです。
ここの「板そば」は山形独特のもの。
「板そばは堅い」そうしたイメージがありますが、ここはそうでもありません。
親父はここが気に入っておりました。
ドライブの様子は過去「くだまき」にしております。
「きよと読むおそば屋さん」(2009年5月24日 投稿)

「うの君」は、最近「そば打ち」が趣味となっているようです。
彼の手さばきは本物です。

彼のFBより拝借いたしました。
「更科に挑戦。柚子風味」「うの君」の投稿にございました。
彼お手製の蕎麦。
お味を見てみたい。
こう思うのは、僕だけじゃないよね!

ブロ友さん「おんせんたまごさん」は、東北各地を歩いてのそば屋めぐり。
素晴らしい、記事となっております。
「おんせんたまごの温泉日記 おそば屋さん」

「神田藪そばの火災」
酔漢にしても思い出のあるお店でした。
「老舗」という看板に偽りはございません。

古い東京を見る事が出来た。
そんな場所でした。
そして、あの味も。
早期の再開を望まんばかり。

江戸店や初蕎麦がきに袴客 一茶

ご指摘を頂戴いたしました。
17時40分。校正いたしました。
酔漢 拝


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6 コメント

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こんばんは (見張り員)
2013-02-21 20:49:22
昔まだ小学生のころですが父親の会社が神田にありまして(出版社です、大手ではない)、そこを見に行ったついでと言っては何ですが父が「お蕎麦を食べよう。有名なところがあるから」と言って連れてってくれたのが「神田藪そば」でした。
初めてのソバ屋さんで雰囲気もちょっと違って面白かった。ちょうどその日、フランキー堺さんが来店していました。

旦那の親戚が今、山形の山奥?で手打ちそば屋をしているようです。行ったことはありません。その親戚と私はあまりうまくいってないからです・・(-_-;)

神田藪そばの話を先月だったか、娘たちにしていた矢先・・焼けてしまいましたね。父も多分、今頃がっかりしてることだと思います。
返信する
そば最高! (うの)
2013-02-22 12:02:49
まだまだ「偽蕎麦打ち」の私です。

残念ながら「神田藪そば」は未体験でしたが、是非とも行ってみたいお店でした。流石酔漢殿、うらやましい限りです。今回のニュースは驚きでした。心底、早期の再開を願うばかりです。

山形には仕事で3年いました。山形は蕎麦好き、酒好きにとっては天国のようなところです。仙台にも美味しいそばを出すお店が少しずつ増えてきましたが、まだまだ山形の足元にも及ばない感じですね。久しぶりに山形にそばを食べに行きたくなりました。
返信する
ひょいとひょいとひょひょいと (ある友人)
2013-02-22 19:44:55
ちょいちょい・・・元落研のあんこうさん、いや酔漢さん。落語で言えば「枕」が雑ですぜ(笑)
確か柳家小三治師匠は枕だけで高座をおりたという話もありますよね。私もそれを見習ってしばし枕の話で引っ張らせていただきましょう。何せ私は蕎麦より饂飩が好き。神田のやぶそばの濃くてしょっぱいつゆにちょいとだけそばをつけて食うなんて、江戸っ子のような粋さはどうも敷居が高い。ん?何故やぶそばのつゆの味を知っているかって?・・・細かいことは気にしない気にしない。

小泉八雲の「貉」という話は、江戸赤坂の紀国坂に「貉」がいて、そいつが若くて綺麗な女に化けて通りかかった商人を騙し、最後は「のっぺらぼう」になって驚かせる。急いで逃げた商人は道の先で屋台の蕎麦屋に出会って一息つくが、あわてていた理由を蕎麦屋に問われ口ごもっていると、出会ったのはこんなものだったか?と蕎麦売りが再び「のっぺらぼう」に変わるというオチの話ですね。酔漢さんは『このストーリー「ムジナ」が登場しますが、一般で言われるところの「のっぺらぼう」の事です』と書いておりますが、それだと「貉はすなわちのっぺらぼうである」という誤解を与えてしまいます。あくまでも貉とのっぺらぼうは別のもの。この話の面白さのひとつは貉という妖怪じみたもの(今はアナグマだとかタヌキだとか言われていますが、近世以前の人たちは貉という人を化かすものが存在すると信じていた)が、更に有名な妖怪であるのっぺらぼうに化けて商人を驚かせるという、化け物が化け物に化ける二重性の可笑しさにあります。ちょっと落語的ですね。単なる怖さだけじゃなく、そういう可笑しさを混じらせるところが江戸の風情でもあります。
と、まあ、枕に対するダメだし蘊蓄でした。

そうそう。神田にはやぶそば同様に池波正太郎氏が足を運んだ老舗蕎麦屋のまつやがありますね。なかなかそこも風情がありますよ。嵐山光三郎氏はやぶそばよりまつやの方が好みだとか。あそこの蕎麦は・・・。

おっと、繰り返しますが私は饂飩が好き・・・という事にしておいてください。やぶそばの話だけに、うっかりやぶをつついて、やぶへびになるところでした。
お後が宜しいようで。・・・このオチじゃあ酔漢さんにダメだしされますね(苦笑)
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見張り員さんへ (酔漢です)
2013-02-28 18:02:14
お久しぶりです。コメント遅れました。
何か、おなじ様なロケーションですね。
お父様とご一緒でしたか。
親父の世代だとやはりここになるのでしょうか。
神田の「東一」
僕は、ここに少しだけお世話になりました。
あれ?
酔漢さんが八百屋?
実はそうなんです!
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うの君へ (酔漢です)
2013-02-28 18:04:34
写真はそれはそれは見事ですよぉ!
美味しそうなお蕎麦です。
僕的には「柚子入り更科」大いに気になります!

この「くだまき」本編でご紹介しておりますが「おんせんたまご」さんの蕎麦屋の記事は見事です。
一度ご参照ください。
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ある友人君へ (酔漢です)
2013-02-28 18:09:33
「貉」そうですね。おっしゃる通りです。
記憶を検証しないまま「くだまき」にしました(白状)

さてさて、「まつや」。
ここもいいです。神田本店もさることながら、吉祥寺店も違って(少し違う)風味、風情があって、お勧め。
冷たいお蕎麦より、「たぬき」元祖が楽しめますよね!!
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