CC-18で(公)日本生産性本部のキャリア・コンサルタント養成講座で採用されている宮城まり子先生の「キャリア・カウンセリング」から引用させて頂きましたが、今回(社)日本カウンセラー協会刊行の「キャリア・コンサルタントその理論と実務」に接する機会がありました。それぞれに特徴があり、参考にして頂けたらと・・・本稿を設けました。
キャリア・コンサルティングプロセスの実際(8つの基本プロセス)
(1)相談場面の設定
①物理的環境の整備
②ラポール(心理的親和関係)の形成
③キャリア形成およびキャリア・コンサルティングに係わる理解の促進(共同作業)
④相談の目標・範囲等の明確化
(2)自己理解
①面接を通じての自己理解支援
②観察を通じての自己理解支援
③アセスメントを利用しての自己理解支援
④キャリアシート(職務経歴書)の作成にとる自己理解の支援
(3)仕事理解
①情報の提供
②職業の理解
③産業の理解
④事業所の理解
⑤労働市場その他の関連情報の理解
⑥職業情報
⑦職業分類
⑧職業能力(開発)情報
⑨職業情報の活用
(4)啓発的経験
①インターシップ
②体験的経験(農作業等)
③職業訓練校への入学
④ボランティア・アルバイト等
(5)意思決定
①キャリアプランの作成指導
②具体的な目標設定への支援
③クランボルツの意思決定モデルとプロセス(CC-18参照)
④キャリア目標と行動計画の留意点
・目標は具体的であること、観察できること、期限を設ける
達成可能、明文化、明確
(6)方策の実行
①相談者に対する動機づけ
②方策の実行のマネジメント
③求職活動のための面接技法
(7)新たな仕事への適応
(8)相談過程の総括
①相談の終了
②相談過程の評価
我が国は、かつての高度成長期には、終身雇用が保障され、労働力人口の構成比も正三角形で年功処遇制度が安定的に機能し、特例を除き男性は職場、
女性は結婚して家庭の主婦と社会的役割分担も固定化され、新卒者の就職もほぼ 100%の状態が維持されていました。このような時代にはたとえ
自律的にキャリア開発をおこなわなくとも、更にはキャリアという概念自体を意識しなくとも、多くの人々は平穏無事に人生を過ごせたのではないでしょうか。
ところが近年、我が国においては、働く人、生活する人、学ぶ人それぞれのステージを取り巻く環境や状況が大きく変わってしまいました。背景には、
長引く景気の低迷とそれによる雇用不安、雇用形態の多様化・雇用の流動化、労働観の多様化、世界でも例をみないほどのスピードで進む少子高齢化、
経済のグローバル化、産業構造のソフト化・サービス化、女性労働者の増加等があります。それにともない、人々がキャリア理解、キャリア開発、
キャリア形成に正面から向き合わざるを得ない事態に直面することが増え、これを側面から支援するキャリアカウンセリングはますますその社会的存在意義を
増していると思います。
*ステップ4 目標の設定
目標設定の基本的ポイントをあげてみますと以下の通りとなります
(1)達成目標・達成基準を明確にする
(2)短期(半年~1年)からスタートし中期、長期目標にアップしていく
(3)次の5条件を満たすものであること
①現実的
②理解可能
③予測可能
④行動計画が立てられる
⑤合意が得られる
*ステップ6 行動計画
目標達成のための行動計画策定には次の4要素が含まれていることが必須です。
①何を
②いつまでに
③どれくらい
④どのように
*ステップ7 フォローアップ・カウンセリングの評価、関係の終了
目標達成に向けた行動計画の進捗状況をフォローし、問題点があれば相談にのり、新たな
情報が必要であれば提供するなど、当面の問題解決のサポートを行います。状況によっては
目標や達成基準、達成計画そのものの部分的又は全面的見直し・修正も必要です。
設定した目標が順調に達成された場合には、カウンセリングの終了に向けた話し合いを行い
クライエントが合意すれば終了します。その後は電話やメールなどを活用して、フォローし、
必要に応じてカウンセラーは適切な対応を行うことが望まれます。
出所:宮城まり子 キャリアカウンセリング
*ステップ3 アセスメント
1.アセスメントの意味
一般的に「評価」「査定」「事前評価」等の訳がありますが
キャリアカウンセリングにおいてはクライエントの「正しい自己理解」のためのツールを
指します。
2.アセスメントの4つの目的
①予測 ②判別 ③モニタリング(特定の職業、職務を選択する準備、成熟度の程度)
④評価
3.アセスメントの種類
(1)アセスメントツールの利用
①フォーマル・アセスメント
信頼性・妥当性の高い診断テストを用いて診断します
※信頼性: 測定されているものが正確で安定したものかどうかを示す指標
※妥当性: 測定しようとしている内容が漏れなく測定できているかどうかを示す指標
②インフォーマル・アセスメント
カウンセリング場面で実施しクライエント理解のヒントを得ます。
(2)ワークシートの活用
ワークシートに記入することによって自己分析・自己理解に役立てます。
(3)カウンセリングを通して
カウンセリングのなかでカウンセラーがクライエントに対して質問を通して引き出す方法
です。
4.フォーマルアセスメント
(1)知能検査
ビネー式知能検査、ウェクスラー式知能検査が代表的です。
(2)学力検査
学力を偏差値に換算して全国水準と比較出来ます。
(3)性格検査
①MBTI(Myers Briggs Type Indicator)
1962年にアメリカでユングの「性格類型論」にもとづいてマイヤースとブリ
ッグスによって作られたもので、個人の性格を「心の機能と態度」の側面からみます
それらは「感覚か・直感か」「思考か・感情か」「外交か・内向か」「判断的態度か・
知覚的態度か」の4指標で表され性格を16タイプに分けます。
②その他
・YG(矢田部・ギルフォード)性格検査
・MMPI(ミネソタ多面性性格検査)
・ユングの内向テスト
・内田・クレペリン精神作業検査
(4)適性検査・興味関心検査
①適職診断検査(CPS:Career Planninng Survey)
ホランドの理論にもとづきアメリカで開発されたもので興味検査(150項目)と
能力自己評価検査(15項目)から構成されています。
②一般職業適性検査(GATB:General Aptitude Test Battery)(厚労省編)
9種類の適性能力を測定するために16種類の下位検査を行いその組み合わせで診断
します。
③職業興味検査(VPI:Vocational Preference Inventory)
ホランド理論にもとづき日本の雇用問題研究会が作成した検査です。
「興味領域尺度」と「傾向尺度」から構成されています。クライエントに160種類の
職業を示し、それらに対する興味・関心があるかないかを答え、その上で6種類の職業
興味領域に対する興味・関心の強さをはかり、心理傾向の5領域のどこに属するかを診
するものです。
5.インフォーマル・アセスメント
フォーマルアセスメントのようには体系化、規格化されたものではなく、カウンセラーが
作成することも可能です。
①チェックリスト法
ある特徴(性格、行動特性、スキル、価値観など)をリストにして、クライエントに選
択してもらいます。カウンセラーはなぜクライエントがそれを選択したかを尋ねることに
よって、自己理解を促すものです。
②カードソート(カード分類)法
例えば、クライエントの「価値観」をカードソ―トによりアセスメントする場合には、
さまざまな価値(収入、自由、時間、挑戦、創造性など)が1枚1枚に書かれたカードを
示し、クライエントが自分の価値観に合致したカードを選択し、重要度にしたがって優先
順序をつけ自分が何に価値を置いているのかを理解する方法です。
③選択の強制
キャリアカウンセリングをグループで行う場合などに使われます。カウンセラーが参加
者全員に(給料がいい方を選ぶか、やりがいがある方を選ぶか)等の質問をして、必ずど
ちらかを選択してもらいます。そしてその解答別にグループ分けをして、なぜその選択を
したのかなどをグループ別に話し合い、この過程で自己理解を深めることができます。
,
6.コンピュータによるアセスメントと情報の収集
コンピュータを利用したキャリアガイダンスをCACG(Computer Assisted Career
Guidance)といい、その基本的な要素は「評価」「探索」「情報提供」です。
代表的なシステムには、アメリカの「DISCOVER」「SIGI-PLUS」、イギ
リスの「PROSPECT]、カナダの「CHOICES」があります。
出所:宮城まり子 キャリアカウンセリング
*キャリアカウンセリングの一般的なプロセス
①信頼関係(ラポール)の構築
②キャリア情報の収集
③アセスメントー自己分析、正しい自己理解
④目標設定
⑤課題の特定
⑥目標達成に向けた行動計画
⑦フォローアップ、カウンセリングの評価、関係の終了
*ステップ1 信頼関係(ラポール)の構築
カウンセラーは全プロセスを通してクライエントとの信頼関係の維持・促進に努めなけ
ればなりませんが、特に最初の時点が重要です。この信頼関係の構築のためには、
カウンセラーがクライエントに対し、温かくゆったりとした姿勢で向き合い、話しやすい
雰囲気づくりに重点を置き、来談者の話をまず集中して傾聴します。この際に重要なこと
は、来談者中心療法のカウンセラーに求められる3つの態度条件(無条件の肯定的関心ー
受容、共感的理解、自己一致)を誠実にに実行することです。
ここでの重要なポイントを付け加えますと、クライエントを「なおそう」とするよりも「理
解する」姿勢態度が何よりも大切です。絶えずクライエントの視点に一緒に立ち、問題に対す
るクライエントの「内的準拠枠」(自分自身が、抱えている問題を捉え・認知しているのか)
を理解しようとすることからカウンセリングは始まるのです。
*ステップ2 キャリア情報の収集
キャリア情報についてクライエントから収集するものはおおよそ次のような情報です。
①学歴 ②職歴 ③スキル、資格等 ④将来のキャリアに対する興味、関心ある分野、職業
職務内容、キャリア目標とその優先順位、その根底にある価値観等 ⑤家族状況 ⑥キャリア
選択上で強みとなるもの(経済的余裕、時間的余裕、豊富な人脈、サポート体制等) ⑦キャ
リア選択上で障害となるもの
これらの情報はあらかじめクライエントにキャリア記録用紙に記入してもらうようにすれば
効率的です。カウンセリング自体の阻害とならないようにカウンセリング中は簡単なメモに止
め、細かく記入する場合には終了後が望ましいと思います。このような情報をクライエントか
ら収集する過程で、カウンセラーはクライエントの「キャリアニーズ」や「キャリア上の問
題」を特定していきます。
出所:宮城まり子 キャリアカウンセリング
代表的なカウンセリング理論の概略をみてきましたので、これらの理論を実際のキャリア
カウンセリングの場でどう適用していくのか?またその限界について考えていきたいと思い
ます。当シリーズで取り上げた以外にも多くの理論が存在するわけですがキャリアカウンセ
リングに最も関係ある有効な理論や技法を3つあげるとしたら①特性因子論的カウンセリ
ング②来談者中心的カウンセリング③行動的カウンセリングでしょう。
1.特性因子論的カウンセリング
カウンセラーはまず、さまざまな心理検査等を用いてアセスメントを行い、クライエン
トの諸特性を正確に分析し診断結果と職業・職務のもつ要件とのマッチングを視野におき
ながら、キャリア問題に関するカウンセリングを行います。伝統的な、キャリア選択を簡
便に、またシステマチックに行うこのカウンセリングの実際的有効性は現在も高く評価さ
れて、一般的に幅広く活用されています。
しかしこの特性因子論にもとづくキャリアカウンセリングは①指示的である②カウンセ
ラー中心であり、カウンセラーの技術に重点がおかれており、カウンセラーの権威や責任
が大きくなりがちである③クライエントの心理的・情緒的側面が軽視されがちである。等
の問題点や批判が存在しています。
2.来談者中心的カウンセリング
クライエントの話を積極的に傾聴しながらクライエントをありのままに受容、共感的に
理解しながら信頼関係を築き、クライエントの成長力に深い信頼をよせながら非指示的
カウンセリングをを行い、問題解決の支援を行うことをそのねらいとします。クライエン
トを人間的に尊重しその主体性を大切にするある意味で理想的なカウンセリングで、すべ
ての技法に共通するベースに存在するものとして、その存在感には現在でも大なるものが
あ理ます。
しかしながら一方で、クライエント理解のための客観的な情報、判断材料の収集とその
実際的活用を欠くという弱点をもつために、キャリアカウンセリングの具体的問題解決が
十分機能しがたい面もあり、おのずから限界も存在します。
3.行動主義的カウンセリング
学習理論(人の行動はそのこうどうを学習したことから形成されており、環境要因や
遭遇した出来ごとに刺激を受け、行動がおこり、強化され、この一連のプロセスが繰り返
されるものである)をその基盤としており、情報の収集、目標の策定、具体的行動計画、
効果測定などを行う点に関しては、非常に行動科学的、客観的・論理的であり、大変分か
りやすく 具体的で、短期間にカウンセリングの効果をあげることができる大きなメリッ
トをもっています。
一方カウンセラーは指示的、主導的であり、有効な情報提供をしながら、助言・指示を
あたえ、あるときは積極的にカウンセラーがリードしていくカウンセリングです。
*折衷的カウンセリング
以上主な3つのカウンセリング理論を、キャリアカウンセリングに適用する場合の特性
を、簡単に述べましたが、もっとも効果的な運用としては
①まずカウンセリングの原点となる基本姿勢を来談者中心的カウンセリングにおき
②クライエントとその抱える問題内容、状況に応じて、その他のさまざまな技法を柔軟に
活用し、幅広い情報収集と診断、助言・指導、情報提供をおこなう
といった折衷的なカウンセリングがキャリアカウンセリングには求められるのです。
出所: 宮城まり子 キャリアカウンセリング
表題はキャリアカウンセリングの理論とは言い難いのですが、標準的なカウンセリングと
して普及しており、キャリアカウンセリングにおいても多くの場合そのベースとされている
ためここで一稿を設けました。
*カール・ロジャーズ(1902~1987)
米国イリノイ州オークパークにてプロテスタントの宗教的に厳格な家庭に生れました。
ウィスコシン大学に進学し、父の農園を継ぐために、農学を専攻しますが、YMCA活動
を通じてキリスト教に興味が移り、牧師を目指すために、史学に専攻を変えます。大学卒
業後、ユニオン神学校に入学しますが、牧師を目指す道に疑問を感じ、コロンビア大学で
臨床心理学を学び、在学中ニューヨーク児童相談所の研修員になります。
卒業後、ロチェスター児童虐待防止協会で12年間臨床に携わります。その中で従来の
カウンセリング理論に疑問を感じ、自らの理論的枠組みを形成し始めます。オハイオ州立
大学、シカゴ大学、ウィスコンシン大学で教授職を得て、教育と研究に従事し、非指示的
カウンセリングを提唱します。これがのちに来談者中心療法と称されるようになり、さら
パーソン・センタード・アプローチへと発展して行くのです。
1982年にアメリカ心理学会による調査「20世紀にもっとも影響の大きかった心理
療法家」では第1位に選ばれました。学生時代に1度、その後も2度来日しています。
※「パーソン・センタード・アプローチ:Person Centered Approach( PCA ) 」
それぞれの個人および他人とのかかわりなどに関し、その成長・発展(治療も含む)
への可能性を信じ、これをベース(基本的な哲学・信念)にしてすすめるさまざまな
自立的・援助的活動の総称。
*ロジャーズの来談者中心療法(来談者中心的カウンセリング)
ロジャーズは心理療法とカウンセリングを同じ意味に用いています。ロジャーズは、従
来の助言や指示が中心であった伝統的なカウンセリングを指示的方法として批判し、これ
に対する非指示的方法として、技法よりもカウンセラーの人間観と態度を重視する「来談
者中心療法」を提唱しました。
この来談者中心療法は、カウンセラーが治すというよりも、クライエントが自らもつ潜
在的な力で治癒していく過程をカウンセラーが、カウンセリングを通して側面から援助し
ていくものであるといえます。
ロジャーズは問題行動の原因は自己概念と経験のずれから生じる「自己不一致」である
としています。そこで来談者中心的カウンセリングは、カウンセラーの無条件の肯定的関
心(配慮、受容)、共感的理解、自己一致・純粋性の3つの基本的態度に基づき、クライ
エントのありのままを、温かく受容し、傾聴しながら、クライエントの問題を整理し、
クライエントの自己洞察、気づきを促し、自己不一致の状態から自己一致に導くことを
主要な目標としています。
*サニー・ハンセン
ノルウエーからの移民の家系に生まれ、アメリカ西部の小さな町で育ちました。州立ミ
ネソタ大学教育学部を卒業後、同大学院で教育指導にて修士号を、カウンセリング・ガイ
ダンスにて博士号を取得し、現在は同大学の名誉教授として執筆に専念しています。専門
はカウンセリング心理学です。
彼女はまた、女性のリーダーとして学会活動でも積極的に活躍し、全米職業指導協会
(NVGA)、アメリカカウンセリング学会(ACA)の会長を務めました。世界15カ国
以上に招かれて講演やワークショップを行っています。1988年に日本進路指導学会、
1990年には日本心理学会の招きで来日しています。
出所:渡辺三枝子 キャリアの心理学
*ハンセンの理論
ハンセンは19997年、その著書「統合的人生設計:Integrative Life Planninng」
において、キャリア概念のなかに家庭における役割から社会における役割まで、人生にお
ける概念「ライフキャリア」を提唱しました。キャリア開発とその計画においては、自分
の個人的な人生上の満足だけに焦点を当てるのではなく、意味ある人生のため、「自分に
も社会にも共に役立つ意義ある仕事」を行う視点に立ってキャリアの選択を行うべきだと
し、人生の4つの要素のバランスを重視しました。
※人生の4つの要素(4L)
①Labor : 仕事
②Learning : 学習
③Leisure : 余暇
④Love : 愛
ハンセンはつぎのような6つの課題を提唱しています。
※キャリ・アプランの重要な課題
①グローバルな社会的視点からキャリア選択を行う
②全体的要素が有意義に組み合わされた「人生のパッチワーク」を創造する
③男女の共同、共生を目指す
④多様性を活かす
⑤仕事に精神的意味(社会貢献、人生の目的、自己の存在感等)を見出す
⑥個人の転機と組織の変革に上手に対処する
出所:宮城まり子 キャリアカウンセリング
*ナンシー・シュロスバーグ(1929~ )
1961年にコロンビア大学のスーパー博士のもとで教育博士号を取得し、メリーラン
ド大学で長年にわたりカウンセラー教育に携わってきました。現在は名誉教授でありコン
サルタント・グループの代表を務めています。1999年に全米キャリア開発協会(NC
DA)会長を務めるなど、アメリカを代表する理論家、実践家で来日実績もあります。
*シュロスバーグの理論
多くのキャリア理論は、人生を時間軸上の連続として捉えています。 しかしシュロス
バーグは人生をさまざまな転機(トランジション)の連続として捉えるところに大きな
特色があります。人生に大きな変化をもたらすような転機に注目して、これらひとつひと
つの転機をのりこえるためのノウハウを体系化したものがこの理論です。
シュロスバーグは転機に対処するための3段階として①転機を見定める。②リソース
(資源)を点検する。③受け止め、対処する 以上3つのステップを挙げています。
(1)転機を見定める(識別・プロセス)
1.転機の識別(転機のタイプ)
・人生に大きな変化をもたらす転機は大きく次の2つに分けられます
①イベント(予期したり、予期しなかった物事が起きる)
就職、転職、失業、引越、結婚、出産、離婚、病気、親族の死など
②ノンイベント(予期したり、期待したことが起きない)
希望した会社に就職できない、昇進できない、結婚できない、子どもができな
い等
・転機がもたらす変化は次の4つです
①役割の変化
②人間関係の変化
③日常生活の変化
④自己概念の変化
2.転機のプロセス
・現在転機のどの位置にいるかを見極めることが重要です
①転機の始まり(喪失や否認)
②転機の最中(空虚と混乱)
③転機の終わり(嘆き、受容)
「転機を見定める」段階では、以上のような視点に基づいて、現在直面している転機につ
いて客観的に把握します。
(2)リソースの点検(4S点検)
・転機に直面した際にこれを乗り切るために利用できる内的資源を「リソース」と
呼びます。この段階ではこうしたリソースをどの程度利用可能かを点検します。
①状況(Situation)
原因は何か
予期可能なことであったか
一次的なことなのか
過去に経験したものか
前向きに捉えているか
②自己(Self)
個人的特徴(性、年齢、健康状態、社会的地位等)
心理的資源(性格、価値観、信念・信条、行動様式等)
③支援(Support)
身近の関係者(家族、親族、友人、上司、同僚等)
専門家、専門機関
④戦略(Strategies)
状況を変える対応
認知・意味を変える対応
ストレスを解消する対応
(3)受け止め対処する
この最終段階では、前段階で明らかとなったリソースを強化し、活用するための具
体的な行動計画を策定し実行します。
シュロスバーグは転機をうまく乗り越えるためのの重要ポイントとして次の3点を付け加
えています。
①豊かな選択肢:転機をのりこえるための多様なな方法を知っている
②豊かな知識:自分自身を良く理解している
③主体性:転機を乗り切るための各種リソースを主体的に活用することができる
*エドガー・シャイン(1928~ )
米国の心理学者。組織開発(オーガニゼーションディベロップメント:OD)キャリア
開発、組織文化の分野で、支援や補助を提供するさまざまな専門職の発展にも大きな貢献
をした。現在マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン校経済学部名誉教授。
著名な著書に「キャリア・サバイバル」「組織文化とリーダーシップ」がある。
出典:ウィキペディア
エピソード:ユダヤ系ハンガリー人の父(母はドイツ人)の影響があって、初めは物理学
に興味を持ち、野球フアンでもあったそうです。
*シャインの理論
(1)キャリアの定義
「人の一生を通じての仕事、生涯を通じての人間の生き方、その表現の仕方」
(2)キャリアアンカー(キャリアの錨)
1.その概念
キャリアを選択する際に最も大切な(どうしても犠牲にしたくない)価値観や
欲求のことで、周囲が変化しても自己の内面で不動な(これだけは譲れない)もの
のことを言う。
2.3つの問い(構成要素)
①何が出来るのか?(can):才能・能力
②何をやりたいか?(will):動機・欲求
③何をなすべきか?(must):価値・態度
3.8つのカテゴリー(タイプ)
①専門(特定) 専門職・職人気質
②経営管理 集団を統率・管理
③安定(安全) 長期的な安定志向
④起業家的創造性 クリエーター
⑤自律・自立 独立志向、企業内ではマイペース
⑥社会への貢献 世のため、人のため志向
⑦全体性と調和 ワークライフバランス志向
⑧チャレンジ 常に挑戦し続ける
(3)キャリア・サバイバル
キャリア・アンカーが個人ニーズの明確化であるのに対して1995年の著作
「キャリア・サバイバル」では組織ニーズの分析の必要性を強調している。
すなわち個人のキャリアが順調に開発され発展するためには、個人ニーズと組織
ニーズが互いにマッチしていることが重要であり、そのためにはだれもが自分の
職務と果たしている役割を定期的にチェックすべきであると述べている。