本稿は 我が国におけるこの分野の第一人者である 青森大学客員教授 竹林正樹先生のお話を中心にまとめました。
1.ナッジとは?
人を動かすのはとても難しいものです。特に 物事を強制的にやらされることを嫌う傾向があります。そこで自発的に人を動かす方法の研究が 世界で進められてききました。その中で特に注目されているものがナッジ(nugge)です。ナッジとは「軽くつつく、そっと押す」といった意味を持つ英語です。
ナッジ理論とは、アメリカのシカゴ大学R・セイラー教授が提唱した行動理論です。ノーベル賞を受賞したこともあり、ナッジは世界で注目され、日本でも国の戦略でナッジの活用が推奨されています。
2.人を動かす4つの段階
・第1段階 正しい情報を提供して納得させて動かす
教育や普及啓発がこれに該当
・第2段階 つい行動したくなるように環境を整える
これがナッジです
・第3段階 ご褒美と罰を与える
インセンティブ
・最終手段 強制力を発動
3.ナッジの4つの構成要素
人はそれがなすべき行動であると理屈ではわかっていても「面倒だなと感じたとき」「目先のメリットを感じなかったとき」「そのように行動してもいいかなと思っても、周囲に行動する人がいなかったとき」「不機嫌なとき」には直感的に行動する気が失せてしまいます。それを克服するのが次の4つのナッジ(EAST)です。
①Easy(簡単) 行動の難易度を下げること。分かりやすい、とっかかりや すいという要素が必要。
・大量の難しい資料→ポイントを抜き出したわかりやすい資料
・アンケートの回答欄を記述式→選択式
②Attractive(魅力的) 魅力的な選択肢を用意すること
・ポイント付与、早期割引、一定数量以上の購入で送料無料等
③Social(社会性) 周囲の人々が取っている行動であると意識させる
・「これだけの人がやっています、あなた以外の人はこちらの選択をし ました」等
・家族構成がよく似た世帯の光熱費のレポートを送付→平均より高い電 気代を払っている世帯が削減に自主的に取り込んだ実例
④Timely(時宜にかなった) 適切なタイミングで行動を促すこと
・生命保険勧誘のグッドタイミングは、社会人1年目・結婚が決まった 時等