表題は石原慎太郎著「天才」の<長い後書き>からの引用です。去る2日に逝去された著者へのオマージュをこめてこの書を再読しました。
初読の時点では 反田中の急先鋒だった石原氏が、なぜ礼賛の書となる、田中角栄になり代わっての衝撃の霊言ともいうべき本書を上梓したのか、大いに興味の湧くところででした。
私の父は同じ新潟の出身でもあり、革新政党の支持者でありながら、角栄さんだけは別格で崇拝の対象者でした。また東北出身のかっての上司は、関東以南と以北のそれまでの絶対的な格差に革命的なメスを入れた<列島改造論>の実行により、見事にこれを解消した英雄として絶賛していました。いわく <関東以北ならびに日本海沿岸の県民は角栄さんには足を向けて寝てはいけない>というのが口癖でした。
私自身の印象は<コンピュータ付ブルドーザー>とも、小卒から総理に上り詰めた<今様太閤>とも称せられた人物に対して<大事はなしたけれども、金権まみれの政治家>としてのものでした。しかし、本書により徒手空拳から土建会社を興し、その財をもって政界に進出したことをを知りました。そして真の独立国家を目指したその姿勢がアメリカの逆鱗にふれ、貶められた可能性のあることを理解しました。そして、読後は父や上司の思いにかなりに共鳴できるようになったのです。
なお本書は極めて政治的な内容であり、石原氏の文学を求めて購入される方にはお勧めできません。