表題は慶応義塾大学商学部 八代充史(あつし)教授のセミナーからの引用です。
さらに「労働意思」とは
①従業員のやる気を高めること
②従業員の帰属意識を高めること
③人間関係、労使関係への配慮
④従業員の心のケアへの配慮
その他の特記事項としては
・労働時間・安全衛生
労働力の保全。労働力というサービスは、定期的にメンテナンスをしなければ
摩耗してしまう
・人事考課
昇進・昇格、昇給など経営資源の配分と、人材育成という、矛盾した2つの
目的がある
・福利厚生・職場の人間関係・労使関係
労働力の合理的活用という点では説明ができないが、労働意思を通じた労働生産性
向上のためには必要である。人間関係や労使関係が正常でなければ、仮に人的投資
で労働能力を高めても労働生産性は向上しない
・近年従業員の「キャリア権」が注目されている
社内公募、社内ドラフト等はこれに配慮した制度であるが 従業員にとって究極の
キャリア権の行使は転職である
・日本の企業において人事考課結果のフィードバックは徹底されておらず、公開前提の
企業は少数派である
・コンピテンシー(成功者の行動特性を記述により可視化したもの)
他の従業員への活用が効果的といわれている。ただ、はたして成功者に自らの成功
体験を可視化させるモチベーションが存在するか否かが疑問
・多面評価制度は理念は良いが、運用面で難がある
・賃金制度において配置・異動面や育成動機付けに効果的な「職能給」かコスト抑制
効果の高い「職務給」かという一長一短の制度をめぐる長期の論争がある。この
問題を解決するため管理職と非管理職とで賃金制度を分割するという第3のシステム
が浮上してきた
(株)Woman’s代表取締役 宮崎結花さんのセミナーからです。
宮崎さんは「人口減少、労働力の不足、メンタルヘルス不調による長期休業者の増加等と
今まで対策を施しても解決できない問題が、今の日本には山積しています。
女性の活躍推進は、これらすべての問題を解決すると考えます。
女性の活躍は、男性の抱える長時間労働、介護による退職、未婚者の増加等の問題を
解決する力になります。」
と主張され、その為には(輝く社会の実現には)次の4つの支援が必要だとしています。
①キャリア形成
②採用拡大
③育児や介護との両立推進
④意識改革
それぞれについて、自らも二児の母であり、ワーキングウーマンでもある立場からならではの
きめの細かい提案と、一部具体的な実施実績が語られ大変有意義でした。
4月の求人倍率(求職者1人に対する求人数)が1.48倍と実にバブル期を超えた43年ぶりの
高水準となりました。今はまさに障害者(身体・精神)長期生活保護受給者等の就労困難問題を
解決し、国民総活躍時代を具現化する好機です。
そのような観点から、キャリア開発のポインとを産業カウンセラー協会講師 鈴木忠雄 先生の
2日間亘る密度の濃いセミナーから何点か拾ってみました。
*企業で働く人が必ず持たなければならないとされる能力
①課題設定能力:企業や部門の方針を理解し、目標を自分で設定できる能力
②職務遂行能力:目標を達成するための能力
③対人能力:他の人と協力して目標を達成するための能力
④問題解決能力:目標達成の過程でおこる問題を解決するための能力
*求職者支援訓練(2011年10月1日から開始)
旧来の時限立法であった「基金訓練」が廃止されその代わりの恒久的制度として
制定された
・その主旨と目的は
雇用保険を受給出来ない特定求職者に対して、国が整備する新しい雇用の
セーフティネット
・対象者
就職を希望し、雇用保険の被保険者や受給資格者でない者
・その内容
所定の職業訓練(基礎コース、実践コース)を行い、一定の給付要件に該当
する者に対して、職業訓練受講手当(月10万円)と通所手当(交通費)が
支払われる
*ワークライフバランスの意味(内閣府「仕事と生活の調和憲章」2008年)
①就労による経済的自立が可能な社会
②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
③多様な働き方・生き方が選択できる社会
*我が国の大学におけるキャリア教育の問題点
現代の大衆化された大学においても、一部の例外を除き従来のエリート
養成型の教育が行われている。これからは各大学の個性や特色をだした
「幅広い職業人養成」を目指した教育すなわち、学生が学校から職場へ
移行するための教育(卒業時の「就職力」「就業力」、生涯にわたる
「持続的就業力」)に注力すべきである。具体的には、学生が企業や
社会で活躍するために必要な技術や能力の習得である。
*大学生のキャリア形成支援をめぐる今後の方向性
日本学術会議「大学教育の分野別質保障のあり方について」(2010年)
①大学教育における職業的意義に関する支援
②大学から企業への円滑な移行のための支援
③就職できない若者への支援
④若者の学び直し、リカレント教育の支援
*2010年段階で、週60時間以上の長時間労働者が全体の約10%を占めている。
とくに30代男性で週60時間以上の労働者が153万人と当該世代男性全体の
18.7%をしめていることは、ワーク・ライフ・バランスやメンタルヘルスを
含めた心身の健康保持に悪影響を及ぼしているだけでなく、自発的な職業
能力開発にとって、大きな制約要因となっている
*働く女性にとって、妊娠・出産を契機に離職する女性の割合が、改善傾向
にあるとはいうものの依然として高く、子育てと仕事の両立が難しい状況
が続いている。
*ニート状態を脱するための支援プロセス
厚生労働省「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する
調査研究(2007年)
①個々の状態への見立て
②本人の状況に合わせた小さなステップを登る支援
③規則正しい生活と仕事をするための基礎体力の確保
④コミュニケーションの苦手意識への対応
⑤就労体験を通じた社会への手応えの付与
⑥訓練終了後や就職後のアフターケアの重要性
*ジョブ・カード制度の背景・趣旨
現在の人口減少下においても持続的な経済成長を可能とするためには、
労働生産性の向上が重要であり、そのためには、一人ひとりが能力を
開発する機会を持ち、能力を発揮できる社会に向けた本格的な取り組みを
実施することが必要である
若年者の中には正社員になりたくてもなれず、非正規労働者にとどまら
ざるを得なかった結果、職業能力形成の機会にも恵まれないという悪循環
に陥っている人が多数存在しており、さらに子育て終了後の女性や母子家庭
の母等に突いても、離職期間が長いこと等により、正社員になりたくても
なれず、非正規労働者にとどまらざるを得ない状況にある人が存在する
このような「職業能力を向上させようとしても、脳力形成の機会に恵まれ
ない人」への支援策として「職業能力形成システム」(ジョブ・カード
制度)が構築された。(2008年)
その後ジョブカードの活用対象となる職業訓練を拡大するとともに、従来
の職業訓練機会に恵まれなかった人のみならず、幅広く求職者、在職者および
学生全般に対してジョブ・カードの活用を促進していくことを目指すようになった
*ジョブ・カード制度の普及に期待されることは
①公共職業訓練の他に企業が主体となって実施する職業訓練機会が拡大する
こと、それを通じて企業の求める能力要件が明らかになること
②訓練終了後の評価を通じて職業能力評価基準が普及すること
③ジョブ・カードという統一様式の策定により、キャリア・コンサルティング
の水準向上、求職者等の意欲の向上、職業能力等の整理が促進されること
*ジョブ・カード制度の概要
広く求職者等を対象に
①きめ細かなキャリア・コンサルティング
②実践的な職業訓練
③訓練終了後の職業能力評価や職務経歴書等のジョブ・カードへの取りまとめを
通じ 安定的な雇用への移行等を促進