夏休みも終わり、さあ仕事・勉強と行きたいところですが、なんとなく「やる気」が出ない方も多いのではないでしょうか?
そこでこの分野の第一人者である先生方の諸説をリサーチしてみました。
1.信州大学大木幸介元教授(医学博士、分子生理学、生化学)
人間のやる気は、感情や状況にかなり左右されやすい。これは脳の中にある、 直径2ミリほどのやる気の発生装置”側座核”の働きと関係ある。側座核は全部の脳 へ神経を配線しており、各脳に対してやる気を出せと指令を出す。この脳の配線を 分析すると、やる気を活性化する方法が見えてくる。要は側座核の働きを促進す ることで、具体的には
①目的を持つ
②好きになる
③好奇心を持つ
④欲を持つ
といったことが有効になる。また 物事をやり遂げた達成感は脳にとって快感であるため、やる気の源になる。
2.国立精神・神経医療研究センター大野裕顧問(認知行動療法)
やる気が落ちると、気分がうつになり、さらには体の免疫機能も低下する。や る気を取り戻すためには「目に見える成果を発見するなり、自分なりに達成可能な 目標を設定していくことがカギ」
動物実験でも、成果が目に見えないと、その動物はやる気をなくしてしまう。 末期患者を介護する医療スタッフの間で目立ち始めた燃え尽き症候群なども、成 果が目に見えないため、やる気が出なくなってしまう症状である。場合によって は物事を前向きに考えるポジティブシンキングも効果がある。
3.大阪電気通信大学石桁正士名誉教授(教育工学)
社会人2000人のデータをコンピュータで解析した結果、やる気をなくした原因 として
①ミスの連続発生
②自信喪失
③新しい仕事への不安
等が明らかになった。
*やる気をだすよりも持続させる方がずっと難しい。志がなければ、やる気も 持続しない。志、すなわち人生の大きな目標あってこその「やる気」であ る。
さて 諸説を通読されて あなたは「やる気」が出ましたか?
この稿は 表題の研究分野における権威 日本認知科学研究所理事 石井遼介先生の著作、講演等からそのごく一部を抜粋要約させていただきました。
心理的安全性研究の世界的な第一人者であるハーバード大学のエドモンドソン教授は心理的安全性について「チームにおいて 他のメンバーが自分が発言することを恥じたり 拒絶したり 罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり チームは対人関係のリスクをとっても安全な場所であるとの信念がメンバー間に共有された状態」としています。かみ砕いて言うと「地位や経験に関わらず 誰もが率直な意見・素朴な疑問を言うことができる組織・チーム」です。
心理的安全性が注目されてきている理由としては 現代が変化の激しい激動の時代だという時代背景が重要です。昔のように 上司や先輩やベテランが「確実な正解」を知っているわけではない というのが今の時代の大きな特徴といえるでしょう。すなわち今の時代は ベテランでも初めて直面するケースや どうしてよいかすぐにはわからないこと そして以前とは大きく変わったことはいくらでもあるでしょう。デジタル化もそうですし 消費者の嗜好・意識も昔とは勝手が違います。
ベテランの経験だけでは解決できない問題について メンバー全員の力を引き出しいろいろな視点や意見・アイデアをチームの中で共創していくことがとても重要になってきています。
石井先生が代表を務めるZENTechと慶応大学の合同研究チームで これまで3万人以上の調査を行った結果 日本の職場の心理的安全性についての4つのフォーカス・ポイントを見出しました。
「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4因子です。簡単に言うと 「話しやすさ」は「この場で何を言っても大丈夫」 「助け合い」は「困った時はお互い様」でやるということ。「挑戦」は「とりあえずやってみよう」と思えること。「新奇歓迎」は「異能どんとこい」 つまりちょっと変わった才能や個性を歓迎するということです。
私にとって新しい概念ですが 今後のコンサルタント活動に生かしていきたいと思います。皆さんの職場や所属する組織・チームの心理的安全性はいかがでしょうか?
MP人間科学研究所代表で心理学博士である榎本博明先生の著述からの引用です。
先生は270余冊に及ぶ著書と精力的な講演で我が国の実践心理学の第一人者とされています。
*自己実現に不可欠な条件とは(精神分析学者ホルネイ)
「良い人間関係をつくる能力」
「創造的な仕事をする能力」
「自分で責任を引き受ける能力」
*自己実現をへの道を歩んでいる人の持つ特徴(榎本先生)
「コンプレックスに支配されない」
「世俗的な争いごとに巻き込まれない」
「ものごとに冷静に対処できる」
「ものごとに集中できる」
「ささいなことにも喜びを感じる」
「利己的にならない」
「周囲に流されない」
「自分を責めない」
「他人を責めない」
"とくに出世とか 活躍とかに無縁でも 日々の仕事に誠実に向き合っている人は 自分らしい人生をまっとうしていこうとしているという意味で 自己実現への道を 歩んでいると言える"
以上なかなか腑に落ちる考察だと思いました。
このところ親しくして頂いた方々の訃報が続き 自らの加齢とも向き合わざるをえない心境となりました。これを機に発達心理学関連書でエイジングについて見直してみましました。
エイジングとは私の年齢ではストレートに「老齢化」ということになります。
絶頂期である青年期を過ぎると加齢によって身体機能と知的能力が低下していく
のは避けられません。そのことは認識した上でポジティブな研究成果を大いに
反芻して 肯定的な意識を自らに植え付けようと思います。
*シャイエとその共同研究者たちによれば、知覚の速さや数の能力は低下するが
言語を使う能力は25歳から88歳まではそれほど低下しない。
*キャテルの調査によれば流動性知能は成人に達した頃から衰えはじめるのに対
して 結晶性の知能はその後も経験の蓄積に伴って増大し、老年期にいたっても
低下しにくい知能であることが示された。
流動性知能は、環境との関わりの中で、新しい出来事に適応するために使わ
れる知的能力であり、空間知覚や数の能力などを含む。結晶性知能は、経験を
通じて獲得・蓄積させてきた知的能力で、知識とか言語能力を含む。
*エリク・エリクソン(ミルトン・エリクソンとは別人)は老年期に発達する
多面性や多様性を包括的に統合することのできる円熟した心の働きを英知
(wisdom)と呼んだ。
*サクセスフル・エイジング(幸福な老い)についてまとめたロウとカーンは
それを「心身ともに健康で、社会的貢献をしつづけることが望ましい老後の
姿である」としている。
前稿と順序が逆になりましたが 顧問先の企業おける従業員教育で使用したレジメをご紹介します。
1.マインドフルネスとは
あるがままの状態への気付き(認知)
II
出来事の判断や評価をしない
II
あるがままの受容=目的を手放すこと
⇓
客観的に自分と世界を知る(メタ認知)
ネガティブ感情と認知の歪みの悪循環を断ち切る
*日本マインドフルネス学会の定義
「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」
*マインドフルネスの語源
インドのパーリー語の「サティ」を英訳した言葉
Mindfulness:注意深さ、留意すること、気付き
2.マインドフルネスの効果
①自分や世界を客観的に観察する能力を高める
②ありのままの自分を受容する能力を高める
③感情に翻弄されない心を養う
④集中力や持続力、判断力を向上させる
⑤心の安定、リラクゼーション効果
⑥共感力、幸福感、充足感を得る
☆但し、効果を求めて瞑想しないことが重要
「効果は後からついてくる」という姿勢が大切である
3.あるがままに観る(=気づき)のトレーニングプロセス
①身体に気づく ②呼吸に気づく
③情動に気づく ④感情に気づく
⑤思考に気づく ⑥生活に気づく
顧問先企業における本年最終レクチャーのレジメです。
幸福学研究者前野隆司教授(慶応義塾大学)の提唱する
「幸せの4因子」(幸せの四つ葉のクローバー)
1.「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
・自分の得意なことを伸ばす楽しみ
・オタク・達人を目指せ!→みんなが多様な夢を実現する社会へ
2.「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
・たくさんの友人よりも多様な友人を
・人を幸せにする(喜ばせる、親切にする)と自分も幸せになる
→私を大切に思ってくれる人たちがいることや親切に感謝する
3.「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
・楽観性(きっとうまくいく)
・気持ちの切り替え(失敗や不安を引きずらない)
→今度はきっとうまくいく
・自己受容(自分なりに頑張ってきた)
4.「ありのままに!」因子(独立と自分らしさの因子)
・あなたらしく(他者と比較しない)
・自分をはっきり持っている(マイペース、和して同ぜず:2との関連)
*宮城まり子(法政大学キャリアデザイン学部)教授による
「幸福感をもたらす要因」とは
1.心身の健康
2.生活の安定(経済的安定)
3.良好な人間関係(職場、家庭、社会、地域)
4.キャリア充実感(働きがい・生きがい)
5.楽しみのある人生
6.肯定的な自己概念(ありのままの自己受容)
顧問先での講話をご紹介します。
職場のコミュニケーションについて
職場におけるコミュニケーションの構造を思いっきり要約すると
朝の「おはようございます」に始まり、終業時の「お先に失礼します」「お疲れ様」で終わります。
その間に相手のことを十分に配慮しながら自分の考え・意志をしっかりと伝える 送り手としての<アサーション>があり、それをしっかりと受け止める 受け手としての<傾聴>があるわけです。
御社はこのところ 多くの新しいパートナーを受け入れています。この機会にコミュニケーションの原点を皆で見つめ直してみたらいかがでしょうか?
昨年11月に昭和女子大で開催された「女性のグローバルキャリアを考える講演会」のビデオを見る機会がありました。その中で特に印象に残ったのがユナイテド航空初の女性旅客機機長となり30年以上もその職にあるデブラ・マッカウさんの言葉です。
「機長としての職務を全うするためにはコミュニケーションが非常に大切です。特に部下・後輩の言葉に誠意をもって耳を傾けること(傾聴)が大切です。それを心掛けたことで今があると思います。」(世界主要航空会社100社のパイロット約15万人のうち、女性パイロットは約8000人、ユナイテド航空では世界最多の940名、機長も300名が在籍する。日本ではまだパイロット20数名で、機長数名とわずか)
文教大学元教授で現在産業カウンセラー協会の講師 渡邊忠先生も「コミュニケーションの基本は お互いの傾聴姿勢(すなわち思いやりの心)である」との持論をお持ちです。
ということで今回は コミュニケーションにおける挨拶、傾聴、アサーションについて再認識をして頂けたらと思います。
全豪オープンに優勝し世界ランキング1位となった大坂なおみさんの活躍は
テレビで応援した私の脳裏に今も鮮明に残っています。
決勝の攻防を振り返ると、タイブレークの接戦を制して第1セットを取り、第2セットも
5ゲームを先取して0-40のマッチポイントを握り王手をかけたが、まさかの4ゲームを連取
されての逆転でこのセットを落とした。コートを離れトイレで号泣して気持ちをリセットして
最終セットに臨んだが第1ゲームを(連続5ゲームを)取られるそして悲痛な表情で観客席の
サーチャコーチを見つめる。
テレビのニュース番組でコメンテーターを務めていた脳科学者の中野信子先生がこの場面を
捉えて解説していました。「コーチが何かゼスチャーで合図を送り、大坂選手は口角を上げて
作り笑顔をしてそれに答えたのです。そして悪い流れを断ち切った反撃が始まり、見事に優勝を
勝ち取りました。これは笑顔の力も大いに効いていたと思います」
精神科医の大野裕先生によれば、こころの内面の動きと表情や姿勢など外見との関係については
専門的に「インサイドアウト」と「アウトサイドイン」といわれる関係があるそうです。楽しい
気持ちになるから笑うし、悲しい気持ちになるから泣く(インサイドアウト)。一方、アウトサイドイン
というのはその逆で、笑顔になれば楽しい気持ちになるし、背筋を伸ばしてしっかりした姿勢をとれば
気持ちにも張りが出るという関係です。笑顔は免疫機能を強化し、身体的な健康にも良い影響を与える
(癌にもなりにくい)という研究結果も報告されています。興味深いのは米大リーグ入団したときに撮った
写真が笑顔だった選手はそうでなかった選手に比べて選手寿命が長かったという研究結果もあるとのことです。
客観的事実とは異なる無責任な情報を「流言(デマ)」と言います。インターネットの発達によって
正しい情報だけでなく、デマの伝達範囲も広がり、スピードも飛躍的にアップしていることを実感します。
デマに振り回されないためにも、デマの特徴・性質を研究した、アメリカの心理学者G・W・オルポート
の古典的名著「デマの心理学(1947年)」を紐解いてみたいと思います。
オルポートはその著作の中でデマ(流言)を以下の3つの要素で定義しています。
1.話の内容が客観的事実であるかどうかの確認・検証が行われていない。
2.もっともらしい“非公式・個人的な情報伝達手段”を介して流布していく。
3.権威者や有名人からの情報であるとの触れ込みで、大勢の人々に事実であると信じられていく命題である。
情報が多くの人々を経由して伝達されていく過程においても、伝えられる内容が大きく変化していくことは
「伝言ゲーム」を経験したことのある方なら、うなずけると思います。オルポートは情報変容のプロセスで、
以下の3つの法則が作用していると考えました。
1.平均化(leveling):初期に含まれていた多数の要素が、伝達途中で次第に簡略化・要約され平易になっていく。
2.強調化(sharpninng):平均化・簡略化された内容のなかでインパクトのある内容だけが協調されたり、
他の情報が付加(話を盛る)されて内容が歪む。
3.同化あるいは合理化、統合化(assimilation):伝達者の関心や期待、価値観に沿った内容になるように(無意識に)
解釈し、再構成する。
以上参考になりましたでしょうか?