正月の2日間久々に箱根駅伝の筋書き無きドラマを堪能しましたが 駅伝にまつわる
若かりし日のことを思い出しました。
入社2年目の23歳から5年間サブの業務として事業部主催のレクレーションの企画
運営と陸上部のマネジャーを命じられました。レクレーションを活発にすることと事業部
対抗駅伝大会の成績を向上させるのが担当役員の希望でした。特に駅伝は毎年1つ
づつその順位をあげていくことが望ましいとの注釈が加えられていました。
この業務はサブの業務でメイン業務はこの5年間に収益管理から労務管理に変わり
ました。 メイン業務にはそれぞれ上司、先輩がおり、その指示により動きましたが、
サブ業務は実質的に完全に任されて私1人で担当するので私の意識としてはこちらが
メインで、気合いが入りました。
そしていかにして私らしくこの業務を遂行するか考えました。私は「産業心理学
(現在は産業組織心理学)ゼミ」を履修し、担当教授からは、「社会人として業務遂行
に当たってはゼネラリストを目指すも合わせて産業心理学のスペシャリストとしての
視点から常に個性的な分析を試みなさい」とのご教示を頂き実践してきました。
そこで駅伝大会で事業部Eチームの順位を上げるにはどうするべきかを分析し あわせて
施策を立案しました。Eチームは全50数チーム中常に10位以内に入るという実力がありますが
3位以内入賞の実績はありません。前年の順位は7位です。そこで次回の目標は6位とし
毎年一つづ順位を上げて、6年後に優勝を狙うこととしました。
さてそのための要件としては
1.現在の6名の部員を増員し層を厚くする
→駅伝は5区制で補欠1名を加えてぎりぎりの陣容であり体調不良で2名がリタイヤーし
高齢の監督が走らざるをえなかったことがありました
2.部員のレベルを向上させる
以上が必要なことはすぐに分かりました。
さてそのための施策としては
1.の増員対策
(1)隠れた人材を発掘するため事業部主催レクレーション「職場対抗駅伝大会」を活性化させる
→前年までは総務部主催で事業所対抗の1カ月前の冬場にこれも事業所対抗と同じく
5km×5区間で競われ前年の参加チームはわずか6チームと極めて不評。しかも陸上部員が
参加するため個人賞は陸上部が独占し、応援もまばらで最も盛り上がりに欠ける行事でした。
⇒陸上部主催とし、監督は運営委員長、部員は出場せず運営委員として表にでて、総務部は
裏方の雑用を担当。時期は陽気の良い秋に実施、3km×5区間と負荷を軽減、課長チーム対
女子チームの対抗戦や、ベストドレッサー賞、仮装賞、ファミリー賞、優秀応援賞、その他の特
別賞を多々用意し参加賞も奮発。事前に組合、職制会等で参加をよびかけました。その結果36
チーム180人と課長チーム10女子チーム20人の総計210名と前年の7倍の参加者を数え
応援も走路の沿道を埋め尽くすなど次年度以降も事業部最大のイベントとして定着しました。
(2)職場対抗駅伝大会の上位10名に陸上部入部を勧める
→1名を除き全員が辞退
(毎日昼休み、休憩時間を削っての鬼監督のもとでの猛練習が知られていた)
→練習等の拘束の緩やかな、陸上同好会「E愛走会」を創設、総務部を中心に10~20代
の女性を勧誘 (カラフルなユニホームを社費で支給)し8名の入会に成功、男性の入部辞退者
9名も全員入会しました。
→陸上部は昼休みに近くの公園を使って柔軟体操、ジョギング、5km走等の練習を毎日行って
いました。そこで愛走会は柔軟体操、軽いジョギングまでは全員で、それ以降は自由参加と
しました。ある時期になると男性会員の大部分と、女性2名が最後まで陸上部に参加する
ようになり、女性2名を陸上部マネジャーに任命し、男性3名も自主的に入部しました。
2.部員のレベル向上
(1)モチベーション向上策
①入賞体験
従来は年に1回の事業所対抗戦とそれに先立つ職場対抗しか活躍の場がなく、
そのために1年間厳しいトレーニングを積むモチベーションを維持することは大変です。
まして職場対抗は出場を禁止したのですからこのままでは酷いことになります。そこで
成功体験を積ませるために、マイナーでオープン参加が可能な競技会を探してみました。
まず最初にトライしたのがある大手の音楽鑑賞会が主催した「第1回マラソン大会」です。
距離は5kmで厳密にはマラソンでもハーフマラソンでもないのですが、小手調べとしては
うってつけです。結果としては8名が出場しなんと1~8位を全員が独占し、この大会は
1回限りで廃止となりました。主催者には申し訳ないことをしましたが、陸上競技関係者
が全く参加しない大会とはいえ賞状とトロフィーを授与されて部員のモチベーションが
上がったことは言うまでもありません。これに味をしめて村営や、地域限定で1流アス
リートが見向きもしない大会を丹念に探し、入賞実績を重ねました。
②栄誉をたたえる
社内の「8ミリ映画同好会(当時はビデオがまだ普及していませんでした。)」に呼びかけ
フィルム代は会社もちで「記録映画<陸上部栄光への道>」の制作を依頼しました。
練習風景、競技会への参加風景を手弁当で撮影してくれました。
これを編集完了次第昼休みに社内会議室で上映会を開きました。ちなみにナレーションは
交換台の女性に依頼し、BGMは私が担当しました。
また①の入賞実績も社内の掲示板と昼休みの社内放送で広報しました。
選手・監督は大感激です。
(2)科学的トレーニングの確立
ある程度モチベーションもあがり、記録更新を選手たちが自ら切実に求める状況に
なり、人員的にも余裕ができた段階で、トレーニングメニューをレベルアップしました。
もともと監督は陸上競技公式審判員の資格を持つなど、指導者として極めて高い
能力の持ち主でした。私も大学の運動部のコーチに就任するにあたり運動生理学は
ある程度学びましたが、今回監督には最新の外部研修を受けて貰いました。
筋力、柔軟性、スピード、持久力、休養等のバランスの取れたトレーニングメニューを、
年間・月間・週間単位で作成し、事業所対抗の日にピークがくるように、栄養管理、
メンタルトレーニングも含めて現時点でベストと思えるものを作成しました。
*結果はどうであったかといいますと、7位でバトンを受け継いで、翌年6位、同5位、4位
3位、2位で6年目は私は本社に異動になりチャレンジできませんでした。(ちなみに結果
は6位)見事にミッション100%完遂です。これは私から見ても出来すぎでした。この件を
晩年他事業部において駅伝監督を務める後輩の部長に話したところその場では信じて
貰えませんでした。どうも年寄りの誇張した自慢話と受け取ったようですが、後日「古い
記録を調べたらおおせの通りでした。脱帽です!」とのTELを貰いました。