本稿ではナッジの実例を取り上げます
男子トイレ便器へのマーカー
オランダのアムステルダムにある空港に設置された男子トイレの小便器に、小さなハエの絵を絵を描いた取り組みがあります。便器の中に目印があれば無意識に狙ってしまう心理を応用したナッジで、床の汚れが減り清掃費用が1億円以上も削減されたそうです。
手をしっかり洗いたくなる
米国の集中治療室で働く医療スタッフのうち、しっかりと手を洗っている人はわずか10%でした。残り90%が15秒ほど軽く洗うだけで、監視カメラを設置しても数字は低いまま。そこでしっかりとした手洗いの実施率をリアルタイムで表示する電光掲示板を取り付けたところ、実施率が90%まで増加しました。
光熱費を自然に抑えたくなる
家族構成がよく似た世帯との比較データを送るだけで、平均より高い光熱費を払っている世帯が、使用料の削減に取り組むことが実験で明らかになっています。削減のお願いよりも、他の人より損をしているという情報の方が削減行動を後押しすることが実証されたのです。
放置自転車対策
ある雑居ビルで放置自転車が増えている場所で「ここに自転車を放置しないでください」と注意書きをしても効果なし。そこである知恵者の提案で「ここは自転車捨て場です。ご自由にお持ちください」という張り紙をしたところ、放置自転車は皆無となりました。ブラックなユーモアが利いた見事なナッジですね!
同じデータを使っても表現の仕方で効果が異なる
例えばワクチンを「いまだ50%近くの人が接種しておりません・・・」と警告すると「皆も受けていないのか!」ということでさらに接種率が低下する。一方「すでに過半数の方々が接種を済まされました・・・」と推奨すると取り残されたくないので「早く受けなくては!」と接種率が上昇する。これは検診や、納税などのあまり楽しくない諸手続きで実証されています。ナッジなアピールを工夫しましょう。
ナッジを活用したその他の効果的なアピール例
「いつも綺麗にお使いいただき、有難うございます」
公共トイレなどでよく見かけますが、それまでの「トイレを汚さないでください」という表示よりもトイレの美化に効果が出ているそうです。高圧的な感じがなく、反発を招きにくいよい表現だと思います。
「お陰様で当地区のゴミ分別精度は年々向上しており、これもひとえに皆様のご協力の賜物と深く感謝の意を表します。」
この表示で実際にゴミ分別精度が向上した自治体があるそうです。
DJポリスが放った「12番目の選手」
2013年のワールドカップ日本代表戦が行われた際、JR渋谷駅前にサッカーファンが殺到したことによって、スクランブル交差点が非常に混雑し危険な事態となりました。混雑解消のため、警視庁から出動した男性隊員(DJポリス)が「皆さんは12番目の選手。日本代表のような整然としたチームワークでゆっくり進んでください」と人々の自主性に訴えかけるソフトでユーモアに満ちたスピーチを行いました。その結果けが人や、大きなトラブルが発生することを未然に防ぐことができたのです。
いかがですか 何か皆様の周辺でも応用できそうな事例やヒントは見つかったでしょうか?