表題は「ミルトン・エリクソン心理療法」のサブタイトルです。
ミルトン・エリクソンはカール・ロジャーズとともに、私のカウンセリングにおける心の師ともいえる存在です。これまでも邦訳で出版された書籍はほとんど読んできましたが、本人自身の著作は極めて少なく、そのほとんどがお弟子さんによる、治療実績の紹介とその神がかり的な手法への礼賛といったものが多かったように思います。
言ってみれば奇跡の神話集といった趣のものが多かったのですが、本書は3名の共同執筆者のうちの2名が実の娘さんゆえにか(あるいはにもかかわらずか)、冷静・論理的に治療実績を分析しており、極めて実用性の高いものとなっています。
構成は「ミルトン・エリクソンの略歴」「癒しと健康の土台」「臨床上のストラテジー」の3部からなっています。略歴でその背景を、土台でその哲学的基盤を、そしてストラテージ(戦略)でそのセラピーの具体的手法を知ることが出来ます。
特に核としてあげられた6つのストラテージ「注意のそらし」「分割」「前進」「暗示」「新たな方向づけ」「利用」はミルトン奇跡の本質が見事に分析されており、私のセラピー・カウンセリングにおいて生涯の座右の書となりそうです。