愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

絶滅種 愛媛・カワウソの歴史メモ

2012年08月31日 | 自然と文化
平成24年8月28日、環境省がニホンカワウソを絶滅種に指定した。平成8年から12年頃に自分もカワウソについては人文系の立場でいろいろ調べたことがあった。個人的にカワウソが好きだったのである(今でも)。そのときのノートの中から昭和30年代、40年代の愛媛におけるカワウソメモを抜粋して、ここに情報を掲載しておく。出典が曖昧なのはご容赦ください。主に新聞記事からの抜粋です。これらは愛媛カワウソ史のごく一部。カワウソの動物民俗誌については9月に宮本春樹先生の講演(宇和島文学歴史講座 愛媛新聞社事業部主催)があり、宮本先生が最新号の『西南四国』でも文章にまとめている。興味のある方はそちらが詳しく、参照していただきたい。


昭和38年10月6日、カワウソを国の天然記念物に指定するために調査団が八幡浜市大島、地大島を訪れた。調査団は文部省文化財保護委員会専門委員の鏑木外岐雄東京大学名誉教授、文部省記念物課の品田穣調査官、八木繁一県文化財専門委員、清水栄盛道後動物園長らで構成されていた。調査団は地大島の竜王池一帯を調べ、竜王神社の床下から小石に付着した多量のカワウソの糞を発見。ここに生息していることを確認した。また、神社の近くのヨシの茂みにカワウソの遊び場と見られる空き地もみつかった。清水園長は、ここに3年前は6匹いたと思われると言い、糞の状況から2、3匹に減っているということだった。この調査団は、7日、8日には西海町、9日には城辺町にて海岸一帯の調査を行った。(朝日新聞)

昭和38年10月15日、カワウソ生息の現地調査が行われた八幡浜市地大島では、住民の間でカワウソの天然記念物指定に反対する意見が多かった。ちょうど護岸工事を行う計画、またカワウソの生息地とされる竜王池も埋め立てて果樹園にする計画などがあり、地大島がカワウソの保護地域とされると生活に影響する恐れがあるからという理由。(愛媛新聞より)

昭和38年12月1日、県教育委員会は地大島のカワウソ特別保護区指定をあきらめる。地大島では果樹園の開発計画が具体化し、護岸工事、竜王池の埋め立ても予定されている。これが国指定の天然記念物になって特別保護区となると、工事が進めにくくなる、ということで反対の意見が多かった。八幡浜市、八幡浜市教委、県教委で島民と話し合い、「カワウソも大事だがそれによって人の生活が犠牲になるのでは意味がない」との県教委の判断。そのかわりに三崎町大佐田地区など数カ所を特別保護区とするよう、検討を始めた。(愛媛新聞)

ちなみに、カワウソの特別保護区は、昭和37年12月15日に、(1)八幡浜市地大島と三瓶町巴里島周辺域と周木、須崎地区、(2)西海町の鹿島の一部と対岸の汐碆、白浜を含む地域、鼻面岬周辺、樽見鼻周辺、(3)城辺町の大浜、黒崎の周辺が候補に県教委が決定した。これは県文化財専門委員の八木繁一氏の調査結果を参考にして決めたものである。(愛媛新聞)

昭和39年3月、国の天然記念物に指定された。

昭和39年5月16日、愛媛県の県獣にニホンカワウソが公募で決まった。明治時代に毛皮で乱獲。昭和3年に捕獲が禁止されたが、その頃には絶滅の危機に。本来は河川に棲んでいたが、河川開発が進み、海岸に棲むようになった。ちなみに、公募ではハクビシンも対象になっていた。応募数は199。カワウソが94票、コマドリが56、ヤマドリ22、ホシガラス22、ハクビシン5であった。(朝日新聞および愛媛新聞昭和39年5月17日付)

昭和40年9月1日に、八幡浜市大島の三王島(大島と地大島を結ぶ中間地点にある小さな島)の海水浴場でカワウソが生け捕りにされた。地元の農業佐々木幸雄さんが発見。地元消防団員らが一帯に網を張って捕獲。生け簀に入れて八幡浜市漁協大島支部で保護した。

昭和45年2月7日、八幡浜市川上町上泊でカワウソが浜に干してある網の中にもぐって生け捕りにされた。昭和45年頃には捕獲は珍しくなっており、自分のメモでは八幡浜での最後の生け捕り事例である。このカワウソは南宇和郡御荘町にできたカワウソ村(このカワウソ村の存在に関しては私は多くを書かない。)に運ばれ、保護された。(朝日新聞より)

昭和47年8月9日、吉田町(現宇和島市)の惣代の通称楯の海岸でカワウソの糞と足跡らしきものが見つかり、清水栄盛東雲短大教授(元道後動物園長)ら八人が現地調査をした。近くの岩に縄張りの目印がみつかり、生息の可能性があることがわかった。(毎日新聞)

昭和48年5月10日、城辺町深浦でニホンカワウソが見つかり捕獲したが、5時間後に死亡した。もうこの時期には新聞記事に「生きていた幻の動物」という見出しが出るようになっている。(朝日新聞)

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