愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

「シャク」という方言

2001年04月02日 | 衣食住
愛媛県南予地方では、うるち米のことを「シャク」と呼ぶ。この方言の分布について調べてみたが、不思議な分布をしており、少々驚かされた。徳川宗賢編『日本の方言地図』(中公新書)にその分布図が載せられているのだが、「シャク」は愛媛県および九州南半から沖縄にかけての地域の方言なのだ。私は沖縄・南九州・愛媛とつながる方言の分布域については、これまで類例を知らなかった。「シャク」の方言を私が実際に確認している事例としては、愛媛県では八幡浜市、南宇和郡一本松町、大分県では北海部郡佐賀関町があり、実際には愛媛県南予地方から大分県、南九州、沖縄にわたる分布と限定できそうである。
『日本の方言地図』に「シャクの類は南方系のことばであるようだがその由来は不明である」と述べられているように、由来・語源についてはよくわからない。ただ、「南方系」ということが気にかかる。私は愛媛県の中でも宇和海に面した南予地方は南方的要素の強い民俗が存在するのではないかという仮説を抱いている。例えば闘牛(牛のツキアイ)などがそうであるが、瀬戸内海沿岸地域とは異なる文化領域が南予にはあると考えているのである。そのため、「シャク」の方言の分布には強い興味を惹かれてしまう。うるち米という生産・生業に関する方言であるため、これは沖縄・南九州との稲作文化の関連も視野に入れて解明すべき問題ではないだろうか。
ただし、由来・語源を追求していきたいと思うものの、未だ手がかりはつかめていない。

2001年04月02日
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