TPP重大局面 決議の拡大解釈許すな (2014/2/21):日本農業新聞記事
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環太平洋連携協定(TPP)交渉が大詰めを迎えている。22日から始まる閣僚会合は、国益を懸けた交渉となる。重要農産品の死守はもとより、国民の命と暮らしを守れるかどうかの瀬戸際である。JAグループは20日、緊急全国要請集会を開き、国会決議の実現を念押しした。政府・与党が国民との約束を守れるのか。議会制民主主義、政党政治の信も問われている。決議の拡大解釈などで政治決着することは断じて許されない。
要請集会で与党議員は、衆参農水委員会決議や自民党の決議、選挙公約を念頭に「国益を守る」「約束を守る」と繰り返した。ただ一般論と断りながら、日米2国間交渉の難しさにも言及し、国会決議を基本にしながら、国益を守る観点から納得いく決着点を探ることに含みを持たせるなど、厳しい攻防が続いていることもうかがわせた。
事実、交渉が重要局面を迎え、甘利明TPP担当相が譲歩をほのめかす発言をするなど生産現場には不安と動揺が広がっている。甘利担当相は関税区分の細目(タリフライン)で586品ある重要5品目について「一つ残らず微動だにしないということでは交渉にならない」と述べており看過できない。
甘利発言は国会決議に抵触することはもとより、日本側のこうした柔軟姿勢が、ただでさえ強硬な米側をさらに勢いづかせ、日本の大幅譲歩につながりかねない。閣僚会合は大筋合意を目指しているだけに、交渉戦術としても拙劣と言わざるを得ない。既に日本側は事前協議の段階から自動車などの交渉カードで譲歩を重ねており、最大限の警戒が必要だ。
国会決議の拡大解釈で、政治的に「大筋合意」を演出する危険性は拭えない。重要5品目などはあくまでも決議通り「除外」「再協議」が筋で、10年を超す段階的な撤廃も認められない。関税引き下げも論外である。加工品・調製品は北海道農業などの柱の一つであり、食品産業への影響も甚大だ。また、輸入実績がないからと関税を撤廃すれば、即座に輸入を招くだろう。これらの重要品目がなぜ過去の通商交渉で関税撤廃の対象にならなかったか、歴史的事実に目を向けるべきである。一度譲歩すれば、アリの一穴となって際限のない輸入攻勢にさらされるのは必至である。
政府は、国権の最高意思決定機関である国会決議の重みを背負って交渉に当たるべきだ。姑息(こそく)な解釈で政治的決着を図ることは許されない。そのためにも国会はもとより、利害関係者、国民に速やかに草案を公表し、国民的議論に供しなくてはならない。国会決議に背くことが明白なら、決議にある通り速やかに交渉から脱退すべきだ。集会で石破茂自民党幹事長は「遊びや冗談で脱退も辞さない、と書いたわけではない」と述べた。国益を懸けると言うなら、政府はその覚悟で交渉に臨むべきだ。
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環太平洋連携協定(TPP)交渉が大詰めを迎えている。22日から始まる閣僚会合は、国益を懸けた交渉となる。重要農産品の死守はもとより、国民の命と暮らしを守れるかどうかの瀬戸際である。JAグループは20日、緊急全国要請集会を開き、国会決議の実現を念押しした。政府・与党が国民との約束を守れるのか。議会制民主主義、政党政治の信も問われている。決議の拡大解釈などで政治決着することは断じて許されない。
要請集会で与党議員は、衆参農水委員会決議や自民党の決議、選挙公約を念頭に「国益を守る」「約束を守る」と繰り返した。ただ一般論と断りながら、日米2国間交渉の難しさにも言及し、国会決議を基本にしながら、国益を守る観点から納得いく決着点を探ることに含みを持たせるなど、厳しい攻防が続いていることもうかがわせた。
事実、交渉が重要局面を迎え、甘利明TPP担当相が譲歩をほのめかす発言をするなど生産現場には不安と動揺が広がっている。甘利担当相は関税区分の細目(タリフライン)で586品ある重要5品目について「一つ残らず微動だにしないということでは交渉にならない」と述べており看過できない。
甘利発言は国会決議に抵触することはもとより、日本側のこうした柔軟姿勢が、ただでさえ強硬な米側をさらに勢いづかせ、日本の大幅譲歩につながりかねない。閣僚会合は大筋合意を目指しているだけに、交渉戦術としても拙劣と言わざるを得ない。既に日本側は事前協議の段階から自動車などの交渉カードで譲歩を重ねており、最大限の警戒が必要だ。
国会決議の拡大解釈で、政治的に「大筋合意」を演出する危険性は拭えない。重要5品目などはあくまでも決議通り「除外」「再協議」が筋で、10年を超す段階的な撤廃も認められない。関税引き下げも論外である。加工品・調製品は北海道農業などの柱の一つであり、食品産業への影響も甚大だ。また、輸入実績がないからと関税を撤廃すれば、即座に輸入を招くだろう。これらの重要品目がなぜ過去の通商交渉で関税撤廃の対象にならなかったか、歴史的事実に目を向けるべきである。一度譲歩すれば、アリの一穴となって際限のない輸入攻勢にさらされるのは必至である。
政府は、国権の最高意思決定機関である国会決議の重みを背負って交渉に当たるべきだ。姑息(こそく)な解釈で政治的決着を図ることは許されない。そのためにも国会はもとより、利害関係者、国民に速やかに草案を公表し、国民的議論に供しなくてはならない。国会決議に背くことが明白なら、決議にある通り速やかに交渉から脱退すべきだ。集会で石破茂自民党幹事長は「遊びや冗談で脱退も辞さない、と書いたわけではない」と述べた。国益を懸けると言うなら、政府はその覚悟で交渉に臨むべきだ。