透けるような白い肌に浮き上がる青い静脈。
ハプスブルク家の人々は、自らを神に選ばれた特別な存在として高貴な青い血を誇った・・・
中野京子著 名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 を読みました。
650年の長きにわたり繁栄したハプスブルク家。
徳川幕府256年、ロシア ロマノフ王朝300年を考えても、その凄さがわかります。
この本は、ハプスブルク家関係の肖像画、絵画からハプスブルク家を語っています。
面白くて一気に読んでしまいました。
スペインハプスブルク家の方が比重が大きくなっているのは、著者も言っているように、「耳の人」(=音楽の人)であるドイツ人に対して、「眼の人」(=絵画の人)であるのがスペイン人だからということのようです。
確かにスペインの絵画はドラマチックです。
「狂女フアナ」といい、「ラス・メニーナス」といい。
オーストリア・ハプスブルク系統には名画と呼べるものが少なく、あのマリア・テレジアでさえ価値ある肖像画を残していないとのこと。
そんななかで、ヴィンターハルターのエリザベート皇后の肖像画が取り上げられていました。
それにしても、近親婚の凄まじいこと。
親戚同士で婚姻に婚姻を重ねているので、繋がりがごちゃごちゃ過ぎる。
特にスペイン・ハプスブルク家。
いかに神聖な「青い血」を守るためとは言え、ちょっと酷すぎるなぁという感じ。
おぞましいとさえ思えてしまう。
スペイン・ハプスブルク家最後のカルロス2世は呪われた子とまで言われて、、、
父親であるフェリペ4世は、「慰み者」の道化のような姿の息子を人前に出す時はヴェールをかけたそうな。
当然後継ぎを作れる体ではなく、スペイン・ハプスブルク家は終焉を迎えます。
カルロス2世だけの責任ではないと思う。
彼をこのような体にしてしまった凝縮し過ぎた青い血のせいなのだ、そう思います。
ちょっとショックだったのが、オペラ「ドン・カルロ」のモデルとなったフェリペ2世の息子ドン・カルロスはかなり持て余し者だったらしいこと。
悲劇的な最後はオペラと一緒のようだけど、父親に愛する人をとられ悲劇を迎える王子の実態はそんな出来の悪い息子だったとは、、、
でも、それももしかして近親婚の犠牲なのかもしれないと思ったりします。
一方、オーストリア・ハプスブルク家は多産の家系。
あの有名な家訓「戦争は他の国にまかせておけば良い。幸運なオーストリアよ、汝は結婚すべし!」により、あちこちの王家と婚姻を結び、戦うことなく領土を広げていくのです。
マリア・テレジアは16人の子供を産み(6人は早世)、娘たちを政治のカードとして扱いました。
末娘がマリー・アントワネットです。
そして、ハプスブルク帝国最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ
順番からいくと、父親のカール大公が皇帝となるはずだったが、こんな愚か者を皇帝にしたらハプスブルク家は滅亡する、と妻ゾフィーが反対し、息子を皇帝にしたのです。
いや〜母は強し、というか、恐るべしゾフィー
無能な夫にさっさと見切りをつけ、優秀な息子を皇帝の座につける
シシィが逃げ出したくなる気もわかるというものです。
そんなこんな、ハプスブルク家にまつわる様々な人間関係が、生き生きした語り口で展開されていて、一気に読んでしまいました。
図らずも、今年は日本、オーストリア国交樹立150周年記念の年だそうです。
宝塚では「I AM FROM AUSTRIA — 故郷は甘き調べ— 」が上演され、秋からは「 ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史 」が10月から開催されます。
ベラスケスの絵も来るみたいなので楽しみ〜
ハプスブルク600年の歴史に思いを馳せる秋になりそうです。