作・演出 三谷幸喜
出演 柿澤勇人 佐藤二郎 広瀬アリス 八木亜希子 横田栄司 はいだしょうこ 迫田孝也
演奏 荻野清子
世田谷パブリックシアター 2019年9月6日マチネ
なんで「愛」なのか
なんで「哀しみ」なのか
タイトルを聞いて一番最初に思った疑問です。
冷静沈着、恋愛感情は推理の邪魔にしかならないという考えの持ち主、シャーロック・ホームズにとって、愛とか哀しみとかいう情緒的な言葉は一番遠い言葉だと思うからです。
いや、人間らしい感情がないわけではない。
温情溢れる解決をすることもしばしばあるホームズですが、表だってそういう感情を表さない性格だから、タイトルに堂々と愛とか哀しみとかついているのが、なんだかそぐわない気がしたんです。
でも、そこがみそなんですね。
いくつか謎が出てきて、一番最後に相棒となるワトソンの秘密というか謎をホームズが容赦なく暴いてしてしまうんですね。
自分に近しい人に対する友情のために解決しようとして、図らずもその人の肉親、愛する人の秘密を暴いてしまうことになる…それが「愛」と「哀しみ」につながるのなのかな、と思いました。
ワトソンにしてみれば、やめてくれ!と言いたくもなると思うのですが…
幕開きの音楽が、あのグラナダTV版、ジェレミー・ブレットのドラマのテーマ曲で、もうそれだけで嬉しくなってしまう(涙)
シドニー・パジェットの挿し絵も!
登場人物は全部で5人
まずは、広瀬アリスさん演じるヴァイオレット嬢
原作において、ヴァイオレットという名の女性は4回登場すると最初に説明されます。
そんなあったっけ?2つまでは思い出せるなあ… 「ぶなの木屋敷」と「美しき自転車乗り」
このヴァイオレット嬢が話す話もこの2つを連想させます。
さらに謎の言葉、踊る靴紐(爆)
「踊る人形」と「まだらの紐」がくっついてる… そして、何か謎解きがあるかと思いきや、何もないという(爆)
広瀬さん演じるヴァイオレット嬢はとてもはきはき、きびきび、現代っぽいお嬢さんでした。
次にホームズの兄、マイクロフト
演じるのは横田栄司さん
登場の仕方が傑作です。
原作で兄が登場するのはそう多くはない。むしろ少ないですよね。
「ギリシャ語通訳」とか「ブルースパーティントン設計書」とかくらい?
このお芝居では、黒幕的存在がより強調されていたと思います。
ハドソン婦人は、はいだ しょうこさん
ホームズが借りているベーカー街221の家主さんです。
ハドソンさんの住所が221で下宿しているホームズの住所が221bとなるのですね。
とても可愛いハドソン婦人でした。
ワトソン婦人は八木亜希子さん
原作ではワトソンは「四つの署名」のヒロイン、メアリー・モースタン嬢と結婚するのですが、このお芝居では、その前に1度結婚していた、という設定になっていました。
明るく華やかな雰囲気のあるワトソン婦人でした。
なんと、夫のワトソンとのデュエットがあったりして、楽しかったです。
そして、ホームズの相棒であるワトソンは佐藤二郎さん
アニメ版のワトソンにそっくり。
若いホームズとはかなり年上という設定となっていて、ホームズに振り回されつつあたふたする姿がほほえましく、人のよさがにじみ出ていてとてもよかったです。
ホームズ役は柿澤勇人さん
カンバーバッチ風のホームズだったと思います。
生き生きとして、周りを巻きこみ、台風みたいな存在(爆)
ホームズがホームズとして存在する以前の若かりしころ、こんな感じだったのかも…と思わせる…
原作を取り入れたところ、オリジナルのところが上手く合わさっていて、とても楽しむことができました。