朴ワンソの「裸木」22<o:p></o:p>
P71~P72<o:p></o:p>
「必ずよ」<o:p></o:p>
「僕も頼むことがあるから、必ず聞いてもらわなければならないしね」<o:p></o:p>
彼は私の物まねをして、〈必ず〉をひときわ強調しようと口をちょっと突き出した。<o:p></o:p>
「何なの?」<o:p></o:p>
「今晩パーティーに一緒に行ってくれるよね?」<o:p></o:p>
「あら、またあんな粗末なパーティーのこと。誰があんなところへ行くのよ」<o:p></o:p>
「僕は行きたい。是非ミス李と一緒に」<o:p></o:p>
「私は行きたくないと言っているの」<o:p></o:p>
「いいよ。じゃ僕もオクヒド先生のお宅はわからないから。それでもいいかい?」<o:p></o:p>
「なんて卑怯で冷たい…いいわ。一緒に行ってあげるわ」<o:p></o:p>
私はちょっと腹が立ったけれど、彼のせがむ胸の内には全く憎むことができない何かがあり、パーティーに対する好奇心もないことはなかった。<o:p></o:p>
彼は丸く巻いた電線の束をぐるぐる回しながら、<o:p></o:p>
「結局オクヒド先生の欠勤が僕を助けたわけだね?」<o:p></o:p>
「オクヒド先生はどうしたのかな。やはりここを辞められるんじゃないかな?」<o:p></o:p>
「まあ、仕事の量がここの半分程度の職場も滅多にないのに。何かちょっと具合がよくないのかね。それはそうとミス李、今晩何か着るものを持っている?」<o:p></o:p>
彼の頭はパーティーのことでいっぱいだった。<o:p></o:p>
「どうして? このままではミスター黄の体面が傷つけられるんじゃないかと心配しているの?」<o:p></o:p>
私はみすぼらしい紺色のスーツの裾をさがしながら、ちょっとすねたふりをした。<o:p></o:p>
「いーいえ、僕はそのままのミス李がいいよ」<o:p></o:p>
彼の声がかすれるように静まって、目に不思議な光がこもったので、突然彼が大人のように見えた。<o:p></o:p>
いつもと同じように笑い飛ばすはずだったけれど、「ピイ」と言って私はわざと慌てて口をぴくぴくさせて、彼の次の言葉尻を奪い取ることが出来なかった。<o:p></o:p>
閉店時間が他の日よりも1時間ぐらい繰り上げられて、みんなは夜のパーティーの話でくすくす笑ってそわそわしていた。<o:p></o:p>
2階の休憩室には清掃の小母さん達がもうすでにビロードのチマ(スカート)と絹のチョゴリ(上衣)に着替えてだらっと座って、顔に最後の手入れをしながら、あんたのものは〈カネボウ〉とたたき、私のものは〈京都〉とたたき、この最高の余所行きの服の優劣を比べようと、目を血走らせていた。<o:p></o:p>
私は片隅で髪をとかすふりをしていて、ぼんやりと泰秀を待った。<o:p></o:p>
地下室へ行く階段を最初にビロードのチマ(スカート)の群れが尻を振りながら下りていき、わからないほどさっぱりとした服装の労務者雑役夫達が、そしてセールスガール達の絢爛たる服装がぎっしりと階段を埋めた。<o:p></o:p>
私は次第に気恥ずかしくなり、後では逃げ出してしまいたくなるほど、パーティーに行くのがむかついた。<o:p></o:p>
「長く待ったかい?」<o:p></o:p>
ほどなく現れた泰秀が赤いタイを結んだ首の周りを苦しそうに触りながら照れた。彼の照れはまるで若芽のようにみずみずしく、うっかり潰してしまう勇気が出なかった。<o:p></o:p>
「本当に行かなければならないの?」<o:p></o:p>
逃げ口上を一言言って、彼が突き出した手を素直に握って、階下〈スナックバー〉に入った時は、もうすでに広くないホールは足の踏み場もない混雑ぶりだった。<o:p></o:p>
音楽とめちゃくちゃに混じり合った口喧嘩のような騒音で、耳がぼうっとするだけで人々の所に行こうとしても何も見えなかった。<o:p></o:p>
私達はお互いに手を握ったまま、しばらく押しのけられるまま押されていようとしていると、自然にその口喧嘩の周りまで押されていた。<o:p></o:p>
音楽は小さいポータブルの電蓄から流れ出ていて、音楽を圧倒する口喧嘩は聞き取れないはずの近くで、コーラの箱、ポップコーンの袋などを囲む周りから、負けず嫌いのいざこざが起きていた。<o:p></o:p>
「ちょっと礼儀正しく焼いてください。韓国人の体面を考えても…」<o:p></o:p>
こんな調子の愛国者はどこでも一人か二人は必ずいる。<o:p></o:p>
「ちぇ、体面が何かわからない、ねじれた体面、体面が腹を一杯にしてくれるのかね」
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