杜甫の「曲江」を、中国語を懸命に習得中の友人が同窓会ブログで紹介した。
小生には漢詩など猫に小判であるが、それでも古希の語源が出てくるためであるから少しは関心を抱いた。
それで、まずは、「曲江」とは一体何だろうか?
何処にあるのだろうか?について検索してみた。
Wikiでは「曲江池をテーマにした杜甫の漢詩。古稀の出典として有名。」だけ書いてあり、これ以上は分からなかった。
正月前に、図書館で沢山の本を借りてきた。その中に玄宗や楊貴妃にまつわる物語で「長安物語」伴野朗著、徳間書店発行があった。これの冒頭に、次のような記述があった。
「長安の春は、曲江から始まる。
曲江は、曲江池と芙蓉園を指す。
芙蓉園には、秦代から庭園があり、
宜春苑(ぎしゅんえん)と呼ばれていた。
(宜春とは、立春のことである)」
そして、この本には長安の地図も載っていた。「曲江」が何処にあったようやく解ったのである。
曲江は、長安の城壁の南東の角に位置するのである。
地図上に「曲江」「青龍寺」「大雁塔・大慈恩寺」「興慶宮」などにマークを付けてみた、位置関係を確認頂きたい。
弘法大師が留学し密教を習得した「青龍寺」や「大雁塔」から僅か数ブロック南に行けば曲江だったのである。惜しいことをした。
参考;
曲 江 杜 甫
朝 囘 日 日 典 春 衣
毎 日 江 頭 盡 醉 歸
酒 債 尋 常 行 處 有
人 生 七 十 古 來 稀
穿 花 蛺 蝶 深 深 見
點 水 蜻 蜓 款 款 飛
傳 語 風 光 共 流 轉
暫 時 相 賞 莫 相 違
(訓読)朝(てう)より回(かへ)りて日日(ひび)春衣(しゆんい)を典 (てん)し、
毎日 江頭(かうとう)に酔(ゑ)ひを尽くして帰る。
酒債は尋常、行(ゆ)く処(ところ)に有り。
人生七十 古来稀なり。
花を穿(うが)つ蛺蝶(けふてふ)は深深(しんしん)として見え、
水に点ずる蜻蜓(せいてい)は款款(くわんくわん)として飛ぶ。
伝語(でんご)す 風光、共に流転(るてん)して、
暫時(ざんじ) 相(あひ)賞して 相(あひ)違(たが)ふこと莫(な か)れ、と。
※ 読みの注
朝(てう)……チョウ。 回(かへ)りて……カエリテ。
江頭(かうとう)……コウトウ。 酔(ゑ)ひ……エイ。
蛺蝶(けふてふ)……キョウチョウ。 款款(くわんくわん)……カンカン。
相(あひ)……アイ。
(通釈)朝廷から戻ってくると、毎日のように春着を質に入れ、
いつも、曲江のほとりで泥酔して帰るのである。
酒代(さかだい)の借金は普通のことで、行く先々にある。
この人生、七十まで長生きすることは滅多にないのだから、
今のうちにせいぜい楽しんでおきたいのだ。
花の間を縫って飛びながら蜜を吸うアゲハチョウは、奥のほうに見え、
水面に軽く尾を叩いているトンボは、ゆるやかに飛んでいる。
私は自然に対して言づてしたい、
「そなたも私とともに流れて行くのだから、ほんの暫くの間でもいいか ら、お互いに愛(め)で合って、そむくことのないようにしようでは ないか」と。