5/20(土)
カタタチサト新作公演「ぬぐいぬち」
高松常盤町商店街内 いろは市場跡地
お手伝いに行った。
閉まってから随分経った商業施設。
久しぶりに中に入った。
いつもの商店街の通りから
ドアを開けた一歩先は
いつもと違う世界、気配。
そこはまさに廃墟、廃ビルのよう。
だけどそこが舞台になる
というのだからびっくり。
むき出しのコンクリートの壁や天井。
垂れ下がる配線や何か。
どこまでが放置されたままで
どこからが手を加えられた所なのか
分からないくらい。
今回はお手伝いということで
パンフレット渡しなどしていたので
始まって少ししてから見させてもらった。
お客さんは客席へ向かう時
卵の殻が並べられた金属版の上を
通って行ったはずだ。
時折バリッと踏む音が聞こえていた。
公演が始まり、
その殻を踏み尽くすような
バリバリという音がずっと続いていた。
途中から目にした光景はまるで異世界。
それも体ごと放り込まれたような心地。
暗がりの中、かろうじて見える姿。
柱の向こうに見えなくなっても
その影の動きに目を凝らす。
動く人の体が人でなく
何か別の生き物のようで。
それも 今まで見たことのないような。
四つ足の生き物が音もたてず這うような
静かな気配に息を飲む。
指先が緩やかにうねる優美さに目を見張る。
見たこともない未知の生き物と
出会ったような驚きと、ある種の気味悪さ。
かすかな鼓動、
背中のわずかな起伏が脈打つ心臓のようで
はっとした。
いつか鏡に映った自分の胸の真ん中が
脈打ち動くのが見えたこと。
生きてることの実感を
目と触った指先で感じたこと。
あれと似ている。
体が小刻みに震える様は
いつか見たチョウのサナギみたい。
脱皮したり、指で触れた時
あんなふうに震えて動いた。
あれと似ている。
なぜか目の前の生き物に親しみがわいた。
まるで違うように見えるのに
友達になりたいと思うような感覚。
手を伸ばして触りたい、
言葉を交わしたい気持ち。
どんどん大きく響く音。
あれはダクトか?それを
バン!と叩いた音が 幾重にも こだまして
その音に囲まれるような感覚。
遠くに聞こえるというより
その中に居る感覚。
目にも不思議な丸い球。
芯のない手鞠のような、繭のような。
細く白い絡まる線は 固そうに見えて
ぐにゃりと柔らかくつぶれて、
体が中に吸い込まれそう。
体にまとった白く透ける布は
動くたびにチョウの羽のように
ふわりと揺れてゆっくり落ちる
見たこともない天女の羽衣は
きっとこんな感じだろう。
ああ、いいなぁと
見つめてるうちに終演。
これは何と形容したらいいのか
全部を言葉にできないけれど、
そこに身を置いてみることで
感じられるものがある。
個人的には 廃墟好きなので
それもまた堪能できて幸せだった。
ひんやりとした空間
外の世界と温度が違う場所で、
色々な感覚を刺激されるひとときだった。
満席で、来られたお客さん全員に
入ってもらえなかったのがとても残念だった。