白菜の葉をめくり中心部をよく観察して見ると、すでに蕾のような
ものが出来ていた。
5株ともそれぞれが春に向けて花を咲かせる準備を始めていた
わけだ。
これで、今年の白菜は5株の全てが結球しないままに終わった
ことがはっきりした。
これが、土も痩せている上にろくに堆肥も与えられていない畝で
育った白菜たちの精一杯の成長だったのだろう。
白菜の蕾も食べることができるそうだが、「長男」は潔く5株の
白菜を処分した。
野菜にしろ何にしろ、人の口に入るまでりっぱに育ててあげるのが、
いやしくも「農」を志す者の責任だ。(我ながら気恥かしくなるくらい
肩に力が入っている)
そう思うと、自分自身に対し無性に腹が立って来た。
無念さを噛み締めながら、この失敗を二度と繰り返さないように
しようと心に誓った「長男」であった。
白菜を処分した畝を耕しながら、さっそく次の作物のために鶏ふん
堆肥と石灰を混ぜておいた。
(終わり)
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