
些末なる思い出話しに惨めさが大波となりわれを飲み込む
アオバトという鳩の仲間がいる。姿は文字どおり街中で見る鳩である。
雄は翼の肩口からワインレッドが美しく雌にはそれがない。
アオバトは森林で暮らすが夏から秋、海へやってきて海水を飲む。
岩礁に止まって塩分を補給し、森へと帰ってゆく。
海は危険が伴う。大波に飲み込まれて命を落とすこともあるし、
その習性を知っているハヤブサに襲われることもある。
海へやってくることはアオバトにとって命がけである。

岩礁帯にアオバトがやってきた。手前が雄で奥が雌。夫婦だろう。
いつも一緒に生きているんだなぁと眺めていた。

すると波が岩礁にあたり、逸早く雌が空へと飛び立っていった。
雄は全身に飛沫を浴びる。波を察知するのが遅かったのか。
お前だけ自由に森へ帰れと言ったのか。

どんな世界だって男には守るべきものがある。
男は黙って耐えるほかはないのだ。